農業が主産業であるカンボジアは,自然災害によるリスクに直面している.効果的な適応策は重要であるが,そのためには,農家の認識と科学的分析を組合せた脆弱性評価が必要である.本研究は,バッタンバンにおいて自然災害被害への農家の認識をインタビュー調査し,さらに40年間の降水量のデータ,水田被害面積,洪水と干ばつに関する時系列分析を行った.その結果,長期かつ頻繁な干ばつが農家にとって最も深刻であることがわかった.豪雨と高温は,想定以上に洪水と干ばつを悪化させ,生産性を低下させた.農家は水不足が深刻化し,農業生産性と計画に悪影響を与えると考えているが,時系列分析では洪水や干ばつの長期的な傾向に大きな変化は見られなかった.これは,記憶の限界や最近の災害の影響,教育や災害情報へのアクセス不足による災害への認識不足,災害への適応能力の低さなど,いくつかの要因が考えられる.農家の認識,時系列データともにバイアスの影響を受けやすく,インタビュー調査は慎重に行う必要がある.今後は,自然災害による農業への影響を包括的に評価するために,科学的根拠に基づく手法と長期的な時系列データを取り入れた分析が必要である.