国土交通省が整備したXバンドMPレーダ雨量計(XMP)は,豪雨対策を目的として導入され,二重偏波情報を用いたRKDP法により強雨時の降水量推定精度が向上している.一方で,弱雨や降雪時には従来のZR法が用いられるため,これらの条件における観測精度には改善の余地がある.特に降雪を含む冬季観測の精度向上は,XMPの活用範囲の拡大にとって重要である.本論文の先行研究である越田(2025)では,レーダが融解層を観測することが誤差要因であることを特定するとともに,観測誤差の大きさを定量的に整理されている.本研究では,先行研究で指摘された誤差を低減するため,融解層より上空の降水強度を用いて地上降水量を推定する手法を提案し,その有効性を検証した.その結果2015/16の冬季を対象として日降水量の絶対誤差が大きい日について,提案手法を適用した場合の改善効果を確認した.最も誤差が大きい一日について,アメダスで観測された日降水量は18.5mmであったが,現行アルゴリズムを用いたレーダ雨量計による日降水量はXMP石狩局単体では40.8mmで,相対誤差が120%であった.本研究の提案法では,レーダ雨量計による日降水量は35.3mmとなり相対誤差が91%に低減された.また,時間降水量を対象として評価したところ,指標値の変化量を対象6事例で平均すると,相関係数は-0.070でありやや低下するものの総降水量比は-3.102となり,過大傾向が改善された.
西吾妻山中腹に位置する百貫清水の涵養域を把握するため,周辺の河川水や湧水,地下水のECやpH,溶存成分,δ18O,δ2H,87Sr/86Srを測定して検討を行った.ECや溶存成分からは百貫清水の涵養域の推定に関する有用な情報は得られなかった.δ18Oやδ2Hと標高には強い負の相関が認められ,同位体比の逓減率は,δ18Oは–0.19 ‰/100 m,δ2Hは–1.12 ‰/100 mであった.この関係を利用することにより,百貫清水の涵養域の標高を推定できたが,詳細な位置を断定することはできなかった.一方,河川水や湧水の87Sr/86Srは花崗閃緑岩地域と安山岩地域で大きな差が認められ,百貫清水の87Sr/86Srは安山岩地域の水とほぼ一致していることから,百貫清水は安山岩地域で涵養され,安山岩質の岩盤中を流動していると考えられる.以上の結果,百貫清水の涵養域は西大巓中腹の標高約1,540 m付近であることを把握した.また,Sr濃度と87Sr/86Srを二成分混合モデルの式に当てはめることにより,安山岩および花崗閃緑岩地域の水の寄与率を推定することができた.本研究対象地域のように特に異なる地質が分布する地域の水循環研究において,87Sr/86Srは有効活用できると言える.
世界の極端降水現象を対象としたこれまでの研究と,現在見据える研究の方向性を紹介する.特に物理と確率の概念を融合させた大雨の「最悪シナリオ」推定を目標として掲げ,ここから未来を拓く研究チームの展望について述べる.
Ellen Wohl著『Rivers in the Landscape, Second Edition』の紹介を通じて,河川地形学の魅力と,景観の中で河川を捉える視点の重要性について述べる.