既往の蒸発散能で蒸発散量を推定し,それを山地流域の流出解析に用いると,流出量の適合度は良好でない.この原因は,既往の蒸発散能が山地流域の蒸発散量と同様な季節変動を示さないことによる.したがって,本研究は山地流域の蒸発散量と同様な季節変動を示す蒸発散能の推定式の開発と,その式を用いた場合の蒸発散量の推定方法を示した.また,林況の違いが蒸発散量に及ぼす影響についての検討を行なった.本研究で提案した蒸発散能の推定式は(12)式と(13)式であるが,愛知県と宮崎県の山地流域では,(13)式より(12)式の成果が良好で,また,(12)式の成果は計器蒸発量,ハモン式及びペンマン式より良好であった.愛知県の山地流域では,荒廃林の年蒸発散量は壮齢林の37%減であった.また,宮崎県の山地流域では,幼齢林の年蒸発散量は壮齢林の29%減であった.
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