確率雨量の推定には,「年最大値法」が常用される.しかし,解析期間が限られ,極端に大きい年最大値が含まれる場合,確率雨量や確率年の正確な推定に支障をきたす可能性がある.近年提案されたメタ統計的手法は,確率雨量の推定において,年最大値データではなく,日雨量データを用いるため,大きい標本サイズによる推定が可能であり,年最大値法と比べて安定性の高い推定が可能である.本研究では,日本全国の地上気象観測所における観測降雨データと,複合ポアソンモデルによる模擬降雨データを対象に,メタ統計的極値分布(MEV分布)および簡略化メタ統計的極値分布(SMEV分布)をそれぞれ適用し,確率雨量の推定精度を評価した.また,複数の日雨量確率分布を採用し,各確率分布の適合度が確率雨量の推定精度に与える影響を精査した.その結果,MEV分布とSEMV分布は,パラメータ推定の用いる標本サイズが異なるため,豪雨などの低頻度事象の標本サイズに差異が生じ,非超過確率が高い範囲の確率雨量の推定精度に影響を与えることが示された.また,標本サイズによる標本のばらつきと,日雨量確率分布の適合度との関係が,確率雨量の推定精度に影響することが判明した.
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