日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌
Online ISSN : 2434-1932
Print ISSN : 2188-0077
8 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
特集:第7回学会感染症シンポジウム「かぜを診るーピットフォールを見逃していませんか」
  • 熊井 琢美, 林 達哉, 原渕 保明
    2020 年8 巻2 号 p. 129-131
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    かぜ症候群は上気道に急性炎症をきたす疾患であり,鼻漏や鼻閉などの鼻症状や咽頭痛を呈するため耳鼻咽喉科を受診する機会が多い.かぜ症候群は予後が良好な疾患として広く知られており,医療従事者を含めて軽視されがちな疾患である.しかし,症候学的見地から見ると鼻症状や咽頭痛,頭痛,発熱,全身倦怠感といった症状には重症化する疾患が数多く潜んでいる.また,高齢者や基礎疾患を有する患者では,ウイルス感染によるかぜ症候群から重症感染症に移行する可能性がある.超高齢化社会を迎えた本邦において,外来では健康に見える高齢者でも実際には予備力が低下しており,軽微な感染症によってパフォーマンスステイタスが不可逆的に低下する症例をしばしば経験する.本稿では,高齢者や基礎疾患を有しているハイリスク患者の“かぜ”症状に焦点をあて,ハイリスクの定義およびかぜ症候群と鑑別を要する疾患について概説する.

  • ―非妊娠成人との違いと診療のポイント―
    洲崎 勲夫
    2020 年8 巻2 号 p. 132-137
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    成人の多くが罹患する「かぜ」は,適切な対症療法で自然治癒を期待できるウイルス感染による「かぜ」症候群と推察される.しかしながら,典型的な「かぜ」と思われる症例に対して治療を行うも,改善が乏しい,もしくは当初と異なった症状が遷延するなどの症例を経験することは少なくない.その際には,単純な「かぜ」症候群ではなく鑑別を要する別の疾患の可能性や,「かぜ」症状を契機として他の疾患を発症した可能性を考え,適切な対応をする必要がある.妊婦や授乳婦が「かぜ」症状を呈した際には,妊娠・出産に伴う身体的変化が起こることで,非妊娠成人と比較して重篤化しやすい疾患があることを知っておく必要がある.また,医薬品の服用による児への影響および母体への有益性などについて熟知した上で,罹病や投薬に不安を強く持っている母親に共感および適切な配慮を行い診療に臨むことが必要である.

特集:第7回学会エアロゾルシンポジウム「耳鼻咽喉科領域におけるアレルギー疾患への局所・吸入療法」
  • 橋口 一弘
    2020 年8 巻2 号 p. 138-141
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    アレルギー性鼻炎の治療法には様々なものがあるが,外来診療におけるネブライザー療法の意義について明確ではない.外来診療においてネブライザー療法の施行状況について,東京都耳鼻咽喉科医会会員に対するアンケート調査を施行した.77名の会員から回答があり,71名(92%)の施設でネブライザー療法が施行されていた.次に実地医家の立場から,花粉症患者に対する局所治療薬としての点鼻ステロイド薬処方率および患者の薬剤使用継続率について検討した.筆者の属するクリニックでは,44.1%の花粉症患者に点鼻ステロイド薬が処方されていた.花粉飛散中継続使用していたと考えられるのは30~60%程度であると推定された.アレルギー性鼻炎に対するネブライザー療法およびそれに続く点鼻ステロイド薬治療は,局所療法として有効な治療法であるが使用継続率が低い.治療の実態について報告するとともに,エアロゾル療法の意義について考察した.

解説
特集:第6回学会ランチョンセミナー
  • 「小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版」を読み解く
    宇野 芳史
    2020 年8 巻2 号 p. 142-150
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    薬剤耐性菌による感染症の難治化に対し,薬剤耐性菌対策として抗微生物薬の適正使用が提言されている.耳鼻咽喉科領域の感染症の中でも特に小児急性中耳炎はその起炎菌である肺炎球菌,インフルエンザ菌の薬剤耐性化が進むに従い難治化が問題となっている.今回「小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版」が作成されたが,今回のガイドラインにおいてはこの薬剤耐性の問題に応えるべくClinical Questionにおいて抗菌薬の適正使用を推奨している.また,エビデンス評価および推奨の評価を前回までのガイドラインから変更しより使用しやすい表記に変更されている.抗微生物薬の適正使用においては,提示されている数値目標が一人歩きしている感があるが,今回のガイドラインでも記載してあるように目標とするところはあくまでも抗微生物薬の適正使用であり,そのことを十分に踏まえた上でガイドラインを参照にしつつ小児急性中耳炎の診療を行う必要がある.

症例
  • ―咽頭症状を主訴とした性感染症例―
    谷野 絵美, 余田 敬子
    2020 年8 巻2 号 p. 151-155
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    近年,口腔咽頭の性感染症の増加が懸念されている.自ら性感染症を心配して耳鼻咽喉科を受診する患者が少なくない.梅毒の口腔咽頭病変は特徴的な所見がみられるが,前医で抗菌薬を投与され他覚的所見が消失した状態で受診することもある.淋菌・クラミジア咽頭感染は特徴的所見に欠き鑑別が難しいことが多い.当科で最近の1年間に咽頭梅毒2例,淋菌およびクラミジアの咽頭感染を1例経験した.いずれの症例も当科初診時は明らかな特徴的所見は認めなかったが,咽頭痛や咽頭違和感が遷延して自ら咽頭の性感染症検査を希望して受診し,それぞれ梅毒抗体検査,核酸増幅法検査を行った結果診断された.

    患者が咽頭の性感染症を心配して耳鼻咽喉科を受診した場合,咽頭の他覚的所見がなくとも性感染症検査を行うことが望ましい.また治療後に性感染症の感染リスクが高い性行動を持つ人に対しては,定期的な性感染症の検査の継続が望ましいと考える.

  • 脇坂 理紗, 高原 幹, 岸部 幹, 片田 彰博, 林 達哉, 原渕 保明
    2020 年8 巻2 号 p. 156-160
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の感染による性感染症の一つで,近年感染者数が急増していることから特に注目されている性感染症である.今回,我々は咽頭痛,頸部リンパ節腫大を主訴に受診した扁桃梅毒の1例を経験したので報告する.

    症例は62歳男性.1週間前より持続する咽頭痛と右頸部リンパ節腫大を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診し,右口蓋扁桃に白色の隆起性病変と右頸部リンパ節腫大を認め,精査目的に当科紹介となった.当初悪性疾患を疑い,右扁桃病変より生検を行ったところ著しい形質細胞浸潤と,抗spirochete染色で多数の菌体を認め,梅毒血清反応にてTP抗体,RPR定量の上昇とFTA-ABSの陽性,皮膚科受診により梅毒性皮疹が証明されたことから第2期扁桃梅毒と診断した.近年咽頭梅毒患者は増加しており,咽頭痛で受診する患者の診察において念頭に置かなければならない疾患と考えられた.

  • 室野 重之
    2020 年8 巻2 号 p. 161-164
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(鼻性NK/T細胞リンパ腫)は,主に鼻腔に初発し,顔面正中部に沿って進行するNKあるいはT細胞由来の予後不良なリンパ腫であり,Epstein-Barrウイルス(EBV)関連腫瘍とされている.高度の壊死像と細胞浸潤のためHE染色では確定診断できないことも多い.咽頭に初発し,軽度ではあるもののEBV抗体価の上昇も見られた症例につき報告する.症例は63歳の男性で主訴は咽頭痛であった.上・中咽頭に腫瘍性病変を認め生検したが壊死と肉芽組織であった.種々の検査を進める中,VCA-IgG 640倍,VCA-IgA 10倍,EA-IgG <10倍,EA-IgA <10倍と軽度ではあるがEBV抗体価の上昇を認めた.あらためての生検による確定診断に先立ち,本疾患を鑑別の中でも上位として念頭に置いた.血清中EBV DNA量が320コピー/mLであることもこれを支持する結果であった.鼻性NK/T細胞リンパ腫ではEBV抗体価が上昇する例はさほど多くないとされるが,診断に難渋する例において上昇を認める場合は本疾患が疑われるため,測定が望ましい.

feedback
Top