農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
78 巻, 4 号
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  • 鈴木 哲也, 中 達雄, 樽屋 啓之, 青木 正雄
    2010 年 78 巻 4 号 p. 287-290,a1
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    農業用パイプラインに関する維持管理の重要性が見直されることに伴い全国的な規模で既存施設の補修・補強が進められている。パイプラインの再生技術に関する一般的な論点は,補修・補強を中心とした施工技術に関する議論が多く,補修後の通水試験や補修効果の照査など非破壊検査法については十分に議論されていないのが現状である。本報では,配管内から発生する通水シグナル(弾性波)を受動的に検出し,非破壊による水密性照査法を提案する。開発手法は,漏水や混相流など配管内で発生する水理現象起源の弾性波を検出することによりパイプラインシステムの安全性を評価するものである。モデル試験と実構造物による検証の結果,提案手法は目視調査や補修後の照査が困難な農業用パイプラインへの非破壊・非掘削計測技術として適用できることが明らかになった。

  • 岡田 明, 寺田 守雄, 笹木 弘尚, 山本 政彦
    2010 年 78 巻 4 号 p. 291-294,a1
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    豊川用水は,愛知県東南部の平野および渥美半島全域ならびに静岡県湖西市の地域に,農業用水・水道用水・工業用水を供給するものであり,昭和43年に完成した。豊川用水の通水以降,この地域の農業は全国有数の畑作農業地帯に発展したが,農業技術の進歩と営農形態の急激な変化に伴い,農業用水の需要は増大してきたことから,新たな水源確保を目的とした豊川総合用水事業が行われるとともに,確保された水資源の有効利用,適正配水等施設管理の合理化を図るため,幹線水路および支線水路の改築事業が進められている。本報では,豊川用水の支線水路(パイプライン)をとりまく水路システム新生と改築工事を進めるに当たっての課題について紹介するものである。

  • 前川 勝朗, 後藤 秀樹
    2010 年 78 巻 4 号 p. 295-298,a1
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    福島県会津若松市の門田幹線管路はオープン型パイプラインで脈動現象が生じスタンドの一部で溢水するという課題を有していた。本地区(特に10号スタンド)では施設周辺が宅地化し,10号スタンドを別の場所に新設し,これまでのスタンドは廃止することとなった。本報では,現地での水理諸元をもとに行った水理模型実験と水理基礎実験の結果を示した。2次水槽直下流の敷設管路床が緩勾配な場合には,2次水槽流入部のシール高は確保せずとも,管内が開水路の流れになっても管内流況に特に問題はなく,下流側に位置するスタンドはスムーズな流況であることが水理模型実験によって把握され,現地において顕著な改善が確認された。

  • 関 裕之, 前川 勝朗, 宮崎 俊彦
    2010 年 78 巻 4 号 p. 299-302,a1
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    わが国の農業水利施設の中には,老朽化が進み機能低下をきたしている施設も多い。石綿セメント管路などの機能低下を改善する技術開発は不十分であった。そこで,既設管を掘り返すことなく新管と置き換える工法の開発を行った。本工法は,平成17~19年度に官民連携新技術研究開発事業で共同開発された技術で,安全かつ迅速で経済的な工事が実現でき,廃棄物の発生も最小限に抑制できる。石綿セメント管の更新においても,長期(2年間)の追跡調査からも地下水や圃場等への影響もないことが確認されている。農業用管路だけでなく水道用管路の更新工法としても採用が増えてきている。今後は,本工法が多方面でより多く利用されることを期待したい。

  • 坂野 一平, 武田 久和, 福田 武治, 本間 昭宏
    2010 年 78 巻 4 号 p. 303-306,a2
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    小口径管水路(φ600)における管更生工法(反転工法)の施工に際し,既設管路が鋼管の区間で既設管の状態や線形の影響から局所的な曲がり部に「しわ」が発生した。この「しわ」の発生原因および「しわ」による断面縮小が及ぼす水理条件への影響についての検証を行うとともに,「しわ」の発生原因と抑制対策についての検討を行った。「しわ」が水理条件に与える影響は問題がない範囲であったため,除去等の措置は講じないこととした。また,「しわ」は除去しきれなかった比較的大きな錆こぶに起因するものであると想定されたことから,鋼管部の錆こぶを極力除去することにより,その発生を減少させることが必要であると判断した。後発工事の施工において,鋼管部における錆こぶの大半を除去した上で管更生を行うことで,「しわ」の発生を減少させた。

  • 鈴木 隆善, 佐藤 敏明, 鈴木 崇之, 高崎 正宣
    2010 年 78 巻 4 号 p. 307-310,a2
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    老朽化したパイプラインの保全対策工法として,他分野で実績を有する「管路更生工法」の適用が進んできているが,材料や施工の要求性能規定が十分ではなく,適正な品質が確保できていない状況も見受けられる。このような状況のなか,一般社団法人管路更生工法品質確保協会では,管路更生工法に対して,農業分野特有の要求性能や施工条件を考慮した適切・確実な施工実施と品質の向上と確保に向けた取組みを進めている。本報では,これらの取組みのなかから,管路更生工法の現状と概要,および農業分野の適用に当たって性能規定化への留意点を紹介する。

  • 坂田 賢, 野津 俊光, 徳富 啓二, 刑部 信吾, 三野 徹
    2010 年 78 巻 4 号 p. 311-314,a2
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    地中レーダーは,現場を乱すことなく土壌中の面的な探査が可能な測定機器であり,地層の判別,地中の構造物や空隙の発見等に用いられてきた。本研究では,地中レーダーの新たな利用法として,電磁波の伝播速度が誘電率に依存する特性を用いて,深度が既知の構造物をマーカーとして,土壌中の体積含水率および地下水面の測定を行った。その結果,地下水面を変化に伴って,マーカーのみかけの深度が変化し,別途実験で求めた体積含水率と高い相関が得られた。また,地下水面で強い反射が観測された。すなわち,掘削等を行わずに,地表面を地中レーダーで走査させることで,体積含水率の推定および地下水面の把握が可能になることが示された。

  • 平岩 昌彦
    2010 年 78 巻 4 号 p. 315-319,a2
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    農地細分化や農業所得低迷等により農民の灌漑管理への関心低下が懸念されるスリランカにおいて,参加型灌漑管理(PIM)の成功の要因を探るため,貯水池を水源とする大規模灌漑地区における農民組織の運営状況を調査分析した。その結果,農民組織の資金管理に関する透明性・説明責任の向上,賦課金徴収方法の改善,農民ローン等の営農支援,政府による肥料補助が,灌漑施設の維持管理に対する農民の参加意識を高め,賦課金徴収率を向上させたことが実証された。農民組織における役員の意識の高さとリーダーシップ,役員に徳のある人材を選ぼうとする農民の集団裨益的行動は,PIM成功に不可欠な社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の基本的な要素である。

  • 櫻井 睦, 菅原 修, 太田 裕孝, 紺野 福見, 嵯峨 淳
    2010 年 78 巻 4 号 p. 321-324,a2
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    大崎地域は,宮城県北部に位置し,北上川水系江合川と鳴瀬川流域に展開する「大崎耕土」と称される県内有数の穀倉地帯であり,「ササニシキ」や「ひとめぼれ」等の良質米の生産地で知られている。しかし,恒常的な用水不足や豪雨時の湛水被害により農業経営の近代化や生産性向上に向けての取組みが阻害されてきた。このため,昭和62年度以降「大崎西部地区」,「鳴瀬川地区」,「江合川地区」,「大崎地区」の国営かんがい排水事業4地区に順次着手し,基幹水利施設として2ダム,10頭首工,4揚排水機場のほか77km及ぶ幹線水路網を整備してきた。併せて,県営かんがい排水事業やほ場整備等の関連事業もおおむね順調に進捗しているため,平成21年度末の国営事業完工に当たり,これらの広域的な農業水利事業が果たした役割と事業効果ならびに地域の将来展望等について報告する。

  • 斉藤 幸一, 川﨑 孝信, 玉手 純子, 佐藤 純, 北林 妙子
    2010 年 78 巻 4 号 p. 325-328,a3
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    大崎地域における農業水利施設の整備の歴史は,伊達政宗が岩出山(現大崎市)に移封され利水,治水や新田開発に意を注いだ時代に遡る。当時の水利施設は土木技術も資機材も不十分な中,災害との闘いを繰り返しつつも試行錯誤を重ねた末に築造されており,併せて地域の生態系や景観などを形成しながら地域用水機能を果たしつつ今日まで現存してきたものが多い。このため,本事業では,こうした歴史ある施設を極力活かしつつ新たな施設として再生することも国営事業の使命であるとの認識で事業実施してきた。本報では,ダム,取水施設,用水路等における各種の環境配慮のうち,とくに地元住民や関係機関と一体となって取り組んだ代表的な事例について今日の状況も含めて紹介する。

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