農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
79 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
 
  • 北川 巌
    2011 年 79 巻 4 号 p. 251-254,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    北海道中央部の水田地帯に存在する客土材となる土壌資源について検討した。客土材の土壌化学性については,水稲生産における品質への影響の観点から可給態ケイ酸と遊離酸化鉄,障害性の観点から亜鉛やニッケル,イオウの含有量で区分した分布図を作成して資源分布を明らかにした。また,利活用方策として水稲および転作作物の生育を考慮した各成分の指針値および利用上の留意点を示し,汎用田に対する客土材の利用指針を設定した。これら指標値は,全国の水稲や一般的な畑作物に共通する内容であり,わが国における汎用化水田への客土に適用できる基本的な知見である。

  • 中里 良一
    2011 年 79 巻 4 号 p. 255-258,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    静岡県菊川市上倉沢地区は,約400年前から開田が始まり,昭和40年頃には約10ha, 2,000枚以上の棚田で構成されていた。しかし,他地区と同様に,農業をめぐる情勢や農家の高齢化などにより耕作放棄が進み,平成10年頃には,50a, 100枚程度の棚田を残すのみとなっていた。本報では,地元の茶生産農家有志が,①NPO法人化,②「棚田オーナー事業」の導入,③「棚田市場」の開設,④学生サークル「静岡大学棚田研究会」の設立などに取り組み,棚田の現状維持だけではなく,耕作放棄地解消による棚田の復活や,棚田や耕作放棄地対策そのものを材料にして地域活性化に取り組んでいる事例を紹介する。

  • 粟生田 忠雄, 稲葉 一成
    2011 年 79 巻 4 号 p. 259-262,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    農業農村の「水土」改善には,農協・生協・大学などが連携して人を動かすソフト事業が欠かせない。こうした中,新潟県阿賀野市笹神地区では,NPO法人食農ネットささかみを中心に,市民参加型の田んぼの生きもの調査,土壌の物理性と生きものの相互関係調査,就農支援を目的とした援農(ささかみ本気塾)などに取り組んできた。NPO法人食農ネットささかみは,JA笹神,パルシステム生協,新潟総合生協,新潟大学から個人が参加し,知恵を出し合う産学連携の組織である。本報では,笹神地区で取り組まれている産学連携による上記のユニークな事業を紹介する。

  • 長井 薫, 渡邊 雅彦, 井原 昭彦, 増本 隆夫, 吉田 武郎
    2011 年 79 巻 4 号 p. 263-266,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    基本的な気象水文データが極端に少ないカンボジア国において,灌漑計画を立案するための新たな考え方,「流域灌漑方策」を提案する。まず,ケップ州の河川流域を対象に流域灌漑方策の必要性を示した。JICA「流域灌漑管理及び開発能力改善プロジェクト」を進めているプルサット川流域を対象に,温暖化影響評価で用いる手順で擬似的に発生させた気象水文データを入力値として農村工学研究所が開発している分布型水循環モデルを活用して分析を行ったところ,同河川の日流量時系列データや実蒸発散量などが得られた。これらにより,観測データの代替となる基礎データの整備と提供が可能となることを示した。

  • 正田 大輔, 川本 治
    2011 年 79 巻 4 号 p. 267-270,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    担い手の減少に伴う耕作放棄地の増加や,異常気象による豪雪融水などの増加により,中山間地域・傾斜農地では災害発生頻度の上昇が懸念される。今後も,上述地域を保全していくためには,災害現地における地盤情報と,その解析結果を蓄積していくことが重要である。本報では,山形県鶴岡市七五三掛地区Bブロックで発生した地すべり災害を対象として,すべり面試料の強度特性について各種せん断試験ならびに逆算法を用いた検討を実施した。その結果,ピーク強度や完全軟化強度を用いた場合の安全率は大きな値となり,地すべり移動を生じている斜面現況に整合しない。一方で,残留強度を用いた安全率は1.0以下となり,斜面が不安定化している現状に整合した結果を与えた。

  • 宇野沢 正美, 吉原 修, 田中 肇
    2011 年 79 巻 4 号 p. 271-274,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    畑作主体の農業を展開する北海道帯広市南部を流下する排水路の改修に当たり,十勝総合振興局では魚類等の生息に配慮した工法を採用して工事を行った。それらの工法は,改修前の自然環境により近づけるための河床部への現地採取砂利再投入,魚類の遡上を助けるための全面魚道落差工の設置,そして魚類等の生息環境の創出・多様化を図るための水制工,魚窪工,淀み工,ワンド等各施設の設置などである。施工を担当した筆者らは,本排水路において施工前から施工後6年間にわたり魚類等の生息調査を行い,採用した工法の効果検証を行うとともに,これらの結果に基づき,今後の排水路整備に当たっての留意事項をまとめたので報告する。

  • 御前 孝仁
    2011 年 79 巻 4 号 p. 275-278,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    灌漑システムや農道の整備,施工技術移転や水利組合組織強化などの農業農村開発分野への援助は,わが国のみならずアメリカやドイツなどの先進国,世界銀行や国連食糧農業機関などの国際機関が世界各地であまねく展開しているところである。本報告は海外農業農村開発情報分析のテーマの一つとして農業農村開発分野での援助を展開しているわが国以外の先進国や国際機関(主要ドナーと呼ぶ)に焦点をあて,最近発行された経済開発協力機構・開発援助委員会 (OECD・DAC) の農業援助報告書をもとに全体の概要を,いくつかの開発途上国で実際に支援業務に当たっているJICA専門家などを通して行ったアンケート調査を基に実体的な側面を分析したものである。

  • 成岡 道男
    2011 年 79 巻 4 号 p. 279-283,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    本報では,ウズベキスタン国シルダリア州で行ったアンケート調査の結果と関係者からの聞き取り情報をもとに,裏庭などを使った家庭菜園規模のデフカンと呼ばれる営農が農業労働者のセーフティネットとして機能している現状を紹介し,その課題について考察した。その結果,デフカンが農業労働者のセーフティネットとして機能し続けるには,農業労働者の所得減少への対策,塩害や水代の有料化などの営農環境の悪化への対策,地球温暖化への備えなどが課題であることが判明した。これらの課題に対して,デフカンの収益向上策,塩害対策や節水灌漑などの負担軽減のための技術供与,支援体制の拡充が求められる。

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