農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
79 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
 
  • 丹治 肇
    2011 年 79 巻 7 号 p. 499-502,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    今後20年の社会資本整備の最大の制約条件は,財政再建,人口減少と東日本大震災からの復興である。ここでは,これら制約が社会資本整備と農業農村整備に与える影響を検討した。財政の公債残高は,GDP比で世界最悪で,解消には増税またはハイパーインフレしかない。「国土の長期展望」の中間とりまとめでは,過疎地域の2050年の人口予測は2005年比で61%減になる。これは地域の自治体の破綻を意味する。東日本大震災はこうした危機的な状況を強めた。1993年以降の農業農村整備事業予算は,公債残高と強い負の相関があり,仮に震災復興によって公債残高の増加が加速されれば,農業農村整備事業は,社会資本整備全般のシステム変革に巻き込まれると思われる。

  • 北川 巌, 齋藤 信也, 高橋 順二
    2011 年 79 巻 7 号 p. 503-508,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    人口減少,過疎化・高齢化の進行,世界人口の増加や地球規模の環境問題,東日本大震災からの地域の復旧・復興など叡智を結集した対応が求められている中で,地域の農業・農村の姿を展望して人,技術,農地・水・農業水利施設などの資源を良好に保全管理,有効活用して農村の再生・活性化を図っていくことが重要な課題となっている。本報では,人,モノ,カネの循環の視点から地域経済の状況を俯瞰し,定住条件の確保の視点から,安定した地域経済,安全・安心の確保,健全なコミュニティ・環境の3つの共通軸を提示した。また,共通軸ごとに農村の再生・活性化のために必要となる技術要素を抽出し,今後の展開方向について論じた。

  • 牧山 正男
    2011 年 79 巻 7 号 p. 509-512,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    定年退職後の第二の人生を農村で過ごすために,都市部から農村部に移住することや,週末田舎暮らしと呼ばれる二地域居住を行うことが,今日も一部で注目されている。農村部の分譲地や貸し別荘,クラインガルテンの利用など,そのための手段は種々あるが,本報では空き家を利用した比較的安価な定住,二地域居住に注目する。特に過疎化が進む一部の市町村においては,これを過疎化対策として位置づけている地区もあることから,本報ではこうした農村移住の促進策やそれに期待される意義と課題についてまとめた上で,空き家を利用した農村移住の過疎地活性化策としての有効性について,群馬県南牧村を対象とした調査結果を用いて考察する。

  • 鈴木 哲也, 猪口 琢真, 河野 英一, 青木 正雄
    2011 年 79 巻 7 号 p. 513-516,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    農村の生活・生産環境は農業水利施設と密接に関連している。近年,既存施設の更新事業や維持管理の重要性が見直されることに伴い,施設機能診断が各地で実施されている。一般的な論点は,力学的観点からの材料損傷などであり,既存施設の維持・保全における水利用や受益者意向の実態に関する検討は十分に行われていないのが現状である。本報では,C/Sマクロセル腐食が進行した農業用配管施設を対象に,現状の水利用と更新事業に関する受益者意向の実態評価を試みた結果を報告する。検討の結果,既存施設の水利用実態と受益者の更新事業に対する意向には密接な関係が示唆され,効果的な維持管理・更新には営農実態を踏まえた施設利用状況の把握が不可欠であることが示唆された。

  • 中矢 哲郎, 森 充広, 渡嘉敷 勝, 浅野 勇, 森 丈久, 奥野 倫太郎
    2011 年 79 巻 7 号 p. 517-520,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    広域にわたり整備されている,農業用水路,水路トンネル,逆サイホン,分水工などの水路施設の,低コストかつ省力的な管理手法の提案を行った。本手法は,特定小電力無線データ伝送システムにより収集した通水時の水理情報をもとに,あらかじめ解析・設定された水路沈下,障害物の堆積,漏水などの施設の劣化や利水上の異常時に発生する水面形モードとを比較し,異常を検知した場合は,利用者に連絡するシステムである。さらに,水理解析により,異常や劣化の発生箇所や規模を特定する。本手法は,通水時の水面形から異常箇所を判定するために,利水の実態に即した施設管理が可能であるため管理労力が軽減でき,免許や通信費が不要な特定小電力無線を用いるため低コストでの運用が可能である。

  • 柳町 祥, 在原 克之
    2011 年 79 巻 7 号 p. 521-525,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    食料自給率向上のため,水田の活用による麦,大豆などの生産力向上が求められ,暗渠排水の重要性は高まっている。疎水材は排水機能の良否や持続性に影響し,地域に応じた資材の研究が行われている。関東地域では疎水材としてもみ殻が広く用いられてきたが,腐朽に起因する排水性の低下などの問題が報告されており,より耐久性の高い資材の疎水材利用が求められている。そこで本報では,千葉県で産出されるサンブスギを原料とする複数の資材について,資材の特性,作業性および施工費用に加え,資材の化学性や吸水渠断面の経年的な変化といった複数の視点から,資材間の長所,短所を相互に比較し,各資材の疎水材への適用性を明らかした。

  • 竹沢 良治, 毛利 正志, 長尾 直樹
    2011 年 79 巻 7 号 p. 527-530,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    平成20年から21年にかけて富山県が実施した5地区約320kmにわたる幹線用排水路の保全計画策定において,劣化や不具合の的確な現地調査に基づく施設機能評価を行った。その中で,防火,流雪,生態系保全などの農業用水の多面的な機能の発揮にも配慮し,現地調査に要する断水時間を極力短縮することや,作業効率の効率化,複数の調査班投入による調査内容の均一化を図ることが求められた。そこで,高精度で測位可能なDGPS技術を活用し,PDAを用いて現地で劣化や不具合の位置および属性情報を正確かつ効率的に入力できる体制,調査データをGISに展開して,地図・属性・写真データを一元的に集約するシステムを構築したので紹介する。

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