農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
80 巻, 10 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 三輪 弌
    2012 年 80 巻 10 号 p. 791-794,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    堰周辺堆砂によるゲート操作機能障害は,頭首工管理において大きな問題の一つである。この堆砂は,可動堰敷高を,現況河床より低い将来計画河床高に合わせたことによって発生する。改修工事の進展によって解消される問題であるが,工事の遅れから,多くの頭首工で長年悩まされている。河川構造令の解説に提言されている「暫定的上げ越し構造」を,対策として採用している事例について,その効果を評価した。新潟県関川頭首工のように,設計段階から暫定河床計画高に合わせて上げ越し構造物を設置し,ゲート高も低くすることができれば,管理上の問題は生じない。既設頭首工においても,仮設の上げ越し構造物設置は,障害軽減対策として検討すべき事項であることが分かった。

  • 安田 憲司
    2012 年 80 巻 10 号 p. 795-798,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    農業農村開発分野におけるGISの活用は,国内外を問わず,土地利用,営農計画,事業計画,水管理などの分野を中心に,その取組みが進められつつあるが,GISシステム構築後の活用,更新については,さらに検討を進める必要がある。特に,海外においては,事業を開始する上で,水,土地,人に関する情報が国内と比べて,格段に乏しく,時間的,技術的な制約を踏まえた,効率的な基礎情報の収集,整理が必要となっている。本報においては,海外技術協力プロジェクトにおけるGIS構築に必要な情報収集,システムの構築,体制整備などに関する手法およびGIS構築後の現地における農家,住民,関係機関による参加型合意形成に関する活用事例を紹介し,今後の農村開発型技術協力プロジェクトにおける合意形成手法として,GISシステムの活用推進に資するものである。

  • 前田 滋哉, 河地 利彦, 長野 峻介
    2012 年 80 巻 10 号 p. 799-802,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    環境に配慮した持続可能な農村社会の形成には,合理的で具体的な行動基準の作成を支援する手法が必要である。本報では,数理計画法を用いた水環境保全のための意思決定支援モデルについて,研究範囲,モデル化の考え方,最適化計算結果,および今後の課題をまとめる。河川へ排出される負荷の汚濁源に対する最適配分問題,水環境保全を考慮した転作地の最適決定問題について,著書らの研究の現状を示し,今後必要な研究・調査の内容について考察する。

  • 吾郷 秀雄, 中桐 貴生
    2012 年 80 巻 10 号 p. 803-807,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    ボリビア,高知県,ホンジュラスにおいて実施された3つの農村振興事業の成果について比較考察した。事業成果の持続性を獲得するためには,ソーシャル・キャピタルの醸成が不可欠であり,とくに「良いリーダーと堅固な組織の存在」,「地区への愛着と誇り」,「住民の意識改革と振興意欲」の3要素がソーシャル・キャピタル醸成の度合いに大きく関わっていると結論づけた。また,筆者らの経験を通じて,今後の農村振興事業において成果の持続性をより確実に得るためには,ガイドラインや技術マニュアルの作成に加えて,現場で臨機応変に対応できる人材の育成も重要であると述べた。

  • 鈴木 哲也, 森井 俊広, 原 斉, 羽田 卓也
    2012 年 80 巻 10 号 p. 809-812,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    近年,農業水利施設の長寿命化の必要性が認知されることに伴い,鋼矢板水路など鋼材を使用した水利施設における腐食問題が急務な技術的課題となっている。本報では,新潟県農地部と新潟大学により取り組んでいる「環境にやさしい田園整備新技術アドバイザー会議」鋼矢板補修補強WGで開発を進めている鋼矢板リサイクル工法の概要を報告する。筆者らは既設矢板の腐食特性に着目し,水中下で健全な矢板部位を継ぎ合わせることによるリサイクル工法を開発している。耐荷試験および試験施工による検討の結果,開発手法の有効性が実証的に確認された。

  • 成岡 道男, 河野 尚由, 大須賀 公郎, 廣瀬 千佳子, 藤本 直也
    2012 年 80 巻 10 号 p. 813-818,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では,ガーナ中部地域のアシャンテ州クマシ市近郊での調査結果をもとに,天水低地稲作および灌漑稲作の基盤整備,栽培,ポストハーベストの現状を紹介した。そして,天水低地稲作から灌漑稲作への転換を進める農民を増やすための課題および必要な対策について検討した。その結果,無秩序な水利用,新墾工や耕起に伴う労働増加,稲わらなど有用資源の未利用,収穫後の品質劣化,移転された技術の劣化などの課題が見受けられた。これらの対策として,流域単位の水資源管理,機械化営農の推進,有用資源を使った堆肥製造,ポストハーベストの改善,継続的な技術サポートなどを提案した。

  • 勝山 達郎, 人見 忠良
    2012 年 80 巻 10 号 p. 819-822,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    全米一の生産力を誇る農業が展開するカリフォルニア州の水資源は,1970年代までに水利ネットワークが連邦と州政府により整備されてきたが,州南部大都市の慢性的な水不足や関心が高まる生態系への対応など,困難な問題を抱えている。このような中,水不足の解決手段として水を譲渡する制度が1982年に創設され,農業から都市や環境分野までが参加した「水市場」が拡大している。さらに,異常な干ばつ時には州政府自らが「水銀行」を設立して水取引を行うとともに,生物保護の水の確保のために水市場が活用される一方,地域の環境や経済に負の影響を与えることから水譲渡量の制限などが行われており,その実態を紹介する。

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