農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
80 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
 
  • 柏木 淳一, 棚橋 麻衣子, 藤原 洋一, 小田 正人
    2012 年 80 巻 5 号 p. 345-348,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    休閑期間の短縮にともなって,陸稲収量の著しい低下が問題となっているラオス北部焼畑地域において,天水田の導入効果について検討した。天水田区の面積は212.5m2,集水面積は約4,000m2であった。天水田区の収量は,2.46Mg ha-1であり,耕地の大半を占める斜面区の収量の8倍であった。連作により,収量は前年の約65%に低下したが,天水田区と同様の地形条件にあり,均平と畦畔を造築していない脚部区と比べても高い収量を維持していた。天水田区は,斜面からの養水分の受け皿として機能しており,斜面区に比べて土壌養分・土壌水分の点で,脚部区と比べても土壌水分保持の点で陸稲生産に有利であった。また可給態リンを制限要因と仮定した場合,天水田区での連作は4年間可能であり,流域レベルでの生産性の安定化に貢献できることが示された。

  • 星川 和俊, 鈴木 純, 吉村 伸一
    2012 年 80 巻 5 号 p. 349-352,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    松本盆地南西部の畑地域では,春先の強風により飛土・風食が発生し,農地保全や地域環境への影響が懸念されている。強風が吹きやすい上に,大型農機利用のための圃場拡大,冬作物の休閑などの営農変化が,風食問題を深刻にしている。ここでは,最初に飛土・風食実態の調査結果にもとづき,風食発生の時期,頻度,規模などの実態と特徴をまとめる。続いて,対象地の地形・土地利用について,畑地開発前(大正初期),畑地開発後の現代(平成13年)の地形改変と土地利用変化を定性的・定量的に推定した結果に基づき,地形改変や土地利用変化が,飛土・風食に及ぼした影響と,今後の風食軽減のための地形改変や土地利用のあり方について検討する。

  • 山本 尚行, 河村 征, 三原 真智人
    2012 年 80 巻 5 号 p. 353-356,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では畑地における土壌および肥料成分の流出に焦点を当て,保全対策とその留意点を述べるとともに,植生帯を用いた土壌および肥料成分の流出抑制に関して一連の実験より考察を行った。実験を通して,植生帯は土壌および肥料成分の流出抑制効果がある一方,高濃度の窒素・リンを付着・吸着した細粒土壌を流出してしまう限定的な捕捉特性があり,植生帯に限らず,土壌および肥料成分の保全対策では細粒土壌を如何に分離・滞留させるかが課題となった。また,植生帯の機能維持を目的とした土壌保全システムに関する検討より,今後の土壌保全では従来の土壌の捕捉能に加え,肥料成分の捕捉能とその持続性も評価に加えることが重要となると考察した。

  • 赤塚 脩介, 原科 幸爾
    2012 年 80 巻 5 号 p. 357-362,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では,岩手県におけるニホンジカの分布動態を把握し,分布の制限・拡大要因,生息する上での好適環境,および潜在的な生息分布域を明らかにするために,2001年度から2008年度までの岩手県シカ狩猟報告,外部要因である環境要因,および内部要因である個体群圧を用いて,一般化線形混合モデルおよびロジスティック回帰モデルによる解析を行い,1)生息域推定モデル,および2)生息可能域推定モデルを作成した。その結果,岩手県の現時点におけるニホンジカの生息域は短期間で北に拡大していること,積雪と個体群圧がニホンジカの生息環境を決定する上で強く影響していることが明らかとなった。また,潜在的な生息分布域は,奥羽山系を除いた県内のほぼ全域に及ぶことが分かった。

  • 有田 博之
    2012 年 80 巻 5 号 p. 363-367,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東日本大地震に誘発された長野県北部地震(2011年3月12日)によって,新潟県十日町市松代地区の「清水(しみず)の棚田」は崩壊した。棚田(区画数:28,圃場面積:1.8ha)は幅100m,長さ500mの地すべり発生地盤上に拓かれていたため,ほぼ全圃場が被災した。清水の棚田には愛好家が多く,復旧においては景観配慮が求められた。筆者らは県の意向を受けて筆者らが開発した道路抜き工法型等高線区画による復旧計画原案を作成し,地元の地権者,市・県の行政担当者,有識者(景観研究者,環境保護・地域振興NPO代表など)との検討会に臨んだ。このときの議論を踏まえ,景観保護・保全対策における農地形態の選択についての考え方を提案する。

  • 緒方 英彦, 兵頭 正浩, 坂本 康文, 五伝木 一, 芳賀 潤一, 横引 功三
    2012 年 80 巻 5 号 p. 369-372,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    農業地域の農道を含む農地は,その時の農業生産・経営方針に応じて機動的に輪換利用され続けることで,国内の農業生産の基盤となる土地として保全することを考える必要がある。また,災害を原因として水田や畑地が一時的にでも本来の農業生産の場として利用できなくなる場合,耕作放棄地として未利用状態のままとするのではなく,ハウス等施設の土地基盤やほ場内農道として一時的に輪換利用をすることで,限りある土地の利用を図る必要もあると考える。本報では,農業地域における農道を含めた農地の機動的な輪換利用による保全工法を農地輪換利用保全工法と名称を付け,その施工手順などを検討するために実施した試験施工について報告する。

  • 成岡 道男, 早田 茂一, 藤本 直也
    2012 年 80 巻 5 号 p. 373-378,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では,マダガスカル中央高地で行った調査結果をもとに,現地で行われている水田稲作の現状を紹介し,稲作技術の改善への課題について検討した。その結果,現地で実施されている水田整備,栽培技術,ポストハーベスト技術には,研究・技術協力を行う余地が多分にあることが示唆された。それぞれの技術改善への課題として,水田整備には,農地の保全,排水路の整備,小規模ため池の整備,土壌肥沃度の向上が重要であった。栽培技術には,栽培管理の高度化,病害虫・水草の駆除,品種の多様化が重要であった。そして,ポストハーベスト技術には,乾燥技術の改善,精米法の改善が重要であった。

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