農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
80 巻, 7 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
 
  • 千葉 克己, 加藤 徹, 富樫 千之, 冠 秀昭
    2012 年 80 巻 7 号 p. 527-530,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東北地方太平洋沖地震の大津波により太平洋沿岸部では約21,500haの農地が塩害を受けるとともに,主要な排水施設が機能不全に陥った。このため,大半の地域で排水施設が復旧するまで除塩が実施できない状況となった。そこで筆者らは宮城県名取市内の塩害を受けた水田において暗渠排水を利用した雨水による縦浸透除塩の有効性を検討した。また排水施設復旧後,灌漑水による縦浸透除塩の効果を検討した。その結果,弾丸暗渠,耕起,灌漑水利用の有効性が認められた。平成24年春まで宮城県の除塩対策の進捗率は45%に達しているが,今後の除塩対象農地は被害が大きいため,より普遍的な除塩技術を構築していくことが必要である。

  • 毛利 栄征
    2012 年 80 巻 7 号 p. 531-534,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    平成23年3月11日に発生した東日本大震災では東北地方から関東地方に,甚大な被害が発生した。津波による海岸施設の破壊とともに,地震の揺れや地盤の液状化と沈下によって,広大な範囲でダム,ため池やライフラインなどの水利施設の損傷が発生し,これまで経験したことのない未曾有の広域多所災害に及んでいる。本報では,基幹的な水利施設の特徴的な被害を紹介し,個別施設の復旧に向けた技術的な課題を示し,将来の広域多所災害防止に向けた減災技術に関する提言を記述している。

  • 桐 博英, 中矢 哲郎, 丹治 肇
    2012 年 80 巻 7 号 p. 535-538,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東日本大震災からの復興のほか,将来の発生が予想されている東海・東南海連動地震津波の対策を講じる上で津波浸水シミュレーションは,重要なツールである。本報では,津波浸水シミュレーション手法について,使用するデータソースを中心に作業手順を概説するとともに,岩手県の山田湾を対象に行った解析結果を紹介した。東北地方太平洋沖地震津波の際の山田湾湾奥部の織笠地区における津波浸水計算では,現地調査結果との比較を行い,津波浸水域をよく再現することを示した。

  • 塩沢 昌
    2012 年 80 巻 7 号 p. 539-542,a1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所事故で大気に放出され降下した放射性セシウム(Cs)によって福島県の農地が汚染された。平成23年度,ごく一部の水田ではあるが,玄米の放射線量が暫定基準値(500Bq/kg)を超える水田および土壌から玄米への移行係数([玄米の線量]/[作土の線量])が従来の最大値とされた0.1を超える水田が生じた。農林水産省と福島県の調査にもかかわらず,この原因は明確にされておらず,謎となっている。農林水産省の調査報告においても用水経由のCs流入の疑いが指摘され,多くの農民と研究者がそう考えているが,著者は,高濃度汚染米水田の調査と栽培実験に基づいて,Csが降下した時に水田を覆っていた有機物に媒介されて玄米への高濃度の移行が生じたことを主張している。

  • 中 達雄, 若杉 晃介, 原口 暢朗, 奥島 修二, 塩野 隆弘, 石田 聡, 吉本 周平, 今泉 眞之
    2012 年 80 巻 7 号 p. 543-546,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出・拡散した主にセシウム(Cs-134,Cs-137)を中心とする放射性物質の除染対策の本格的な実施には,多くの課題の解決が迫られている。農村工学研究所では,平成23年度科学技術戦略推進費「圃場・農業用施設等の放射性物質を低減する技術」の研究の一部を担当した。本報では,これまでに実施した調査研究の中から,農地を対象とした除染対策のための,特に,福島県内の現地水田圃場で実証試験を行った表層土壌の削取り工法による物理的除染技術の開発や除染効果を把握するモニタリング手法の適用について報告する。

  • 細谷 裕士, 森 一司, 中里 裕臣
    2012 年 80 巻 7 号 p. 547-550,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東日本大震災で津波被害を被った海岸平野において,地下水の水質などを経時的に観測するとともに,電気探査を広範囲に実施することにより,利用可能な淡水の深層地下水の賦存状況を把握した。次に,調査ボーリングと揚水試験により,地下水の揚水可能量を調査し,宮城県亘理山元地区では下部帯水層(砂礫層)から1カ所当たり日量430m3,岩手県陸前高田地区では花崗岩類から1カ所当たり日量230m3の地下水が利用可能であることを確認した。調査結果の記録は,今後の地域の再生に役立つとともに,将来起こりうる津波災害の際の復興にも寄与できると考えられる。

  • 元杉 昭男
    2012 年 80 巻 7 号 p. 551-554,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の津波被災地の農村を高台などに移転する集落移転計画が注目を集めている。計画の実現には,住宅地の整備や被災農地の区画整理を早急に実施する必要がある。このためには,土地改良換地などを活用した円滑な土地利用調整が鍵になる。本報では,土地利用調整の基本方針を提案するとともに,計画実現に向けた課題を明らかにし対応策を論じる

  • 荘林 幹太郎
    2012 年 80 巻 7 号 p. 555-559,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    コミュニティの再生に大きな影響を与える可能性があるのが土地利用調整である。そのような観点に立てば,農村コミュニティの再生の基盤となる農村集落の再建と,土地利用調整が一体的かつ親和的に行われる必要がある。両者にトレードオフが予想される場合,トレードオフの関係性を弱める,あるいはトレードオフをWin-Winの関係性に転換することが必要となる。トレードオフに目をつぶり,農業と農村の復興を独立して実施することは回避しなければならない。本報では,潜在的に予想されるトレードオフに着目して,それへの対応方法について具体的に提案する。

  • 福与 徳文, 山本 徳司, 桐 博英
    2012 年 80 巻 7 号 p. 561-565,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    津波減災空間を創出するためには,被災住民の合意形成が不可欠である。合意形成を促すためには,復興後の空間の姿を具体的イメージとして被災住民に提示したり,津波減災に関する科学的知見を示したりして,被災住民の復興計画に対する理解を促進し,被災住民相互のコミュニケーションを活性化していく必要がある。農村工学研究所復興支援プロジェクトチームは,「住民自らが復興計画を作成しようとしている地区において,住民に寄り添って復興計画づくりを支援する」という基本姿勢で,岩手県大船渡市吉浜において農地復興計画の作成を技術的に支援している。本報では,農村工学研究所復興支援プロジェクトチームがどのような技術的支援を行い,それにどのような効果が認められたのかを報告する。

  • 垂井 保典, 若田 展正, 野中 振挙
    2012 年 80 巻 7 号 p. 567-572,a2
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震津波によって,岩手県,宮城県,福島県を中心として多くの地域が津波の被害を受けた。二次被害の防止や被災地復興のためにも,これらの復旧を速やかに進めることがきわめて重要であった。中央防災会議専門調査会や農林水産省と国土交通省が設置した検討委員会では,施設の被害状況,破壊に至るプロセス,復旧する施設が対象とする津波の規模,施設の構造などについて検討が行われ,結果が公表された。本報では,今回の津波を教訓とした海岸保全施設の復旧に当たっての基本的な考え方が示されるまでの検討経緯と宮城県の亘理・山元農地海岸における復旧事例,最大クラスの津波への対応について報告する。

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