農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
81 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 渡邉 紹裕
    2013 年 81 巻 11 号 p. 867-870,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    農業農村整備など地域における生産や生活環境の整備に,「環境との調和への配慮」が明確に組み込まれて11年が経過した。農業農村整備に関わるさまざまな施策や事業におけるその展開を踏まえて,「環境との調和への配慮」の本来の意味や意義,そして今後のあるべき認識について,概念と諸規定における体系や位置づけ,さらに課題を整理した。とくに,農林水産省を中心に進められる農業農村整備事業を中心に行政における環境の認識と調和への配慮の内容,そして地域環境工学・農業農村工学など学術における環境の認識を考察し,農業農村分野での行政と学術の課題を整理した。

  • 富田 友幸, 北澤 大佑, 田村 孝浩, 木下 貴裕
    2013 年 81 巻 11 号 p. 871-874,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では,農業農村整備事業における環境配慮対策で住民参加の形骸化を防ぐ改善策として,県営事業について調査・計画段階での検討内容が環境配慮対策の成否に大きく影響することから,協力主体への業務委託の前に次の内容を実施し,環境配慮対策を住民とともに検討するための「地ならし」が必要となることを明らかにした。具体的には,①環境情報に関わる既存資料の収集,②環境に関わる地域活動情報の収集,③地域の代表者などとの環境配慮対策の基本方針についての共通認識の構築,さらに必要に応じて,④地域住民が参加した環境調査などの実施などである。こうした「地ならし」を行う上で,関係市町村の協力がきわめて重要となり,事業実施に当たる担当者間での緊密な連携が必要となることを指摘した。

  • 北澤 大佑, 筒井 義冨
    2013 年 81 巻 11 号 p. 875-878,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報は,実証調査結果をもとに,環境配慮対策における住民参加型直営施工の意義を考察した。その結果,第一に地域環境のステークホルダーに対し環境配慮対策への理解を深め,具体的な行動に移すためのインセンティブを創り出すこと,第二に具体的な施設整備の検討,実施を通じて,①対象施設の利用と管理に視点を置きつつ整備の目的と施工が密接に結びつき,②環境配慮対策に取り組む現実的な着地点を見極め,地域独自の動機づけと実践を促し,③これらの取組みを担う技能者や指導的役割を果たす地域の人材の発掘,育成に結びつくことを明らかにした。

  • 木下 貴裕, 河地 芳郎, 北澤 大佑, 山下 裕作
    2013 年 81 巻 11 号 p. 879-882,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    平成13年の土地改良法改正以降,環境配慮への取組みや技術の開発については,さまざまに普及や研究が進み優良事例や既往文献も豊富にある。しかし,県営事業など実際の事業実施地区では,調査期間や費用面などもろもろの問題により,場当たり的な調査や環境配慮となってしまっている地区は少なくないように思われる。そこで本報では,まず事業進行過程による環境調査の位置づけや進め方に着目し,そこで事業実施地区が現実に抱える問題と課題を明らかにした。次に,県営事業といった中小規模事業において限られた時間と予算の中で効率的また効果的に環境調査および環境配慮が実施できるよう,事業進行過程において事業実施地区がもろもろの事情に応じて選択可能な環境調査の進め方をとりまとめた。

  • 横川 仁伸, 野地 正昭
    2013 年 81 巻 11 号 p. 883-886,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    北海道の最北部に位置する豊富町は,酪農業が地域の基幹産業となっている。この酪農地帯がとりまくサロベツ泥炭地は,低地における日本最大の高位泥炭を含む泥炭地として「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定されている。サロベツ泥炭地は農地開発などの多様な人間活動の影響により,地下水位の低下による乾燥化などが進み地表植生にも影響を与えている。地域の農業は,泥炭地特有の現象である地盤沈下の進行,農用地や排水路の機能低下による過湿・湛水被害のほか,牧草収量の減少,牧草の品質低下,農作業効率の低下を招いている。豊富町では,酪農業を継続的に発展させるとともに,農地に隣接する湿原との共生に配慮した農業振興に係る取組みを行っている。本報ではこの取組みの“これまで”と“これから”を紹介する。

  • 渡部 恵司, 森 淳, 小出水 規行, 竹村 武士, 西田 一也
    2013 年 81 巻 11 号 p. 887-891,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    農業水路における生態系配慮の一環で,コンクリート水路に転落したカエル類が脱出できるように「脱出工」を設置する事例がある。この設置の検討に必要となる既往の知見を整理し,課題を論じた。まず,農村に生息するカエル類の移動生態,コンクリート水路への転落実態,水路からの脱出に関わる運動能力および行動特性を整理した。また,既往の脱出工を固定式と着脱式に分類し,それぞれに関する知見を整理した。課題として,性能の情報が示されていない,あるいは情報が不十分な報告が多いことから,今後の試験や報告の参考になるよう,明確にすべき情報や試験における留意点を示した。脱出工設置後の長期的なモニタリングも必要と考えられた。

  • 川合 勝, 北澤 大佑, 稲田 あや, 赤岸 将光
    2013 年 81 巻 11 号 p. 893-896,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報は,岡山南部地区を例に,施工管理段階における環境配慮対策(希少生物の保護移動)の実施の要件と課題を整理した。実施の要件は次の2点である。①工事作業と同時進行により希少生物などの保護移動作業を実施するためには,工事の作業工程と保護移動作業との綿密な調整を図る必要がある。②保護移動作業に係る専門家または専門機関との協力による作業実施体制の構築が求められる。さらに,実施の課題として,工事請負業者が主体となる作業内容について,事業主体と工事請負業者との間で環境配慮対策に関わる取決めを行うなど,工事箇所の現状改変を最小限にとどめるための方策が挙げられる。

  • 坂田 寧代
    2013 年 81 巻 11 号 p. 897-900,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    2004年新潟県中越地震では小千谷市東山地区の養鯉池が崩壊し,下流で被害が発生した。養鯉池の立地を規制する案として,新たに造成される養鯉池,とくに森林からの造成を対象とした抑制策が考えられる。本報では,林地転用規制と森林管理活動支援を目的とした一体的制度案を示した。すなわち,不在村土地所有者のものも含めた林地利用権の集積を誘導した上で,集落協議会が森林管理を行い養鯉池の造成を審査・規制するというものである。利用権集積には,横浜市の市民の森制度を参考にし,集落協議会による審査・規制は総有の考え方を援用した。この制度案は「地域における生存権的土地利用」の実現の一手段として捉えることができる。

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