農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
81 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
 
  • 松本 雅夫, 白神 裕之, 小野寺 晃宏
    2013 年 81 巻 2 号 p. 89-92,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故以来,地域資源を活用した自立・分散型の再生可能エネルギーの供給体制の強化を図ることが喫緊の課題となっている。特に農業水利施設には落差工,放流施設などに多くの未利用な水力資源が包蔵されており,固定価格買取制度とも相まって,地域資源を最大限活用した小水力発電の導入を図り,地域に便益が還元されることを通じて農村地域の活性化に寄与することが期待されているところである。本報では,農業農村整備事業における小水力発電導入に係る取組みの現状,小水力発電の導入促進に向けた固定価格買取制度,規制・制度改革などについて報告する。

  • 後藤 眞宏, 駒宮 博男, 上坂 博亨, 小林 久, 平野 彰秀, 上田 達己, 浪平 篤, 廣瀬 裕一
    2013 年 81 巻 2 号 p. 93-96,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    ダム,頭首工,落差工,急流工など農業水利施設を利用した小水力発電は,安定した出力が得られる。かんがい排水事業などでは2011年度までに全国26地区で発電所が建設されている。2012年7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始され,農業水利施設を利用した小水力発電の活用が期待されている。本報では,これまでに農業農村整備事業で建設された発電所の特徴を施設利用と経済性の視点で明らかにする。次に,農業水利施設における小水力発電の今後の利活用方法として,ダム運用方法,水利調整方法などについて述べる。そして農業水利施設への小水力発電の導入の意義について,経済的効果および地域社会の再構築効果について述べる。

  • 上田 達己, 後藤 眞宏, 桐 博英, 浪平 篤, 滝口 孝明, 廣瀬 裕一
    2013 年 81 巻 2 号 p. 97-100,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    数kW規模以下のマイクロ水力発電では,多くの場合,売電収入のみで採算をとることが難しい。しかし,系統電力に接続しない独立運転を想定すれば,このような発電にも,遠隔地の発送電システムでの災害・事故に左右されない電力供給が可能であるなどのメリットが考えられる。本報は,末端用水路への設置に適した「開放クロスフロー水車」を独立運転することを想定して,その経済・環境影響評価を行った。結果として,電力利用費の観点から,本水車は系統電力を代替できないがエンジン発電機よりは低コストであること,また,温室効果ガス排出削減の観点からは,本水車が系統電力やエンジン発電機より優れていることが明らかとなった。

  • 大西 健夫, 千家 正照, 平松 研, 西村 眞一
    2013 年 81 巻 2 号 p. 101-104,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    岐阜県と愛知県の農業水利施設を利用した小水力発電の事例を紹介し,今後の展望を考察した。岐阜県による可能性調査からは多くは中山間地域に存在し,小規模ながら既存の水利施設改修や余剰水利用といった取組みがあることがわかった。他方,愛知県には大規模な水利施設が存在し,愛知県による可能性調査からその潜在力が示された。すでに調整池を用いた発電の取組みも始まっており,調整池や小規模ため池群を用いた水力発電にさらなる可能性があることが示唆された。両県の比較から,水利施設の特徴と地域の実情にあわせた発電のあり方を体系的に検討し,災害時における緊急利用など,電力の使用用途も含めた総合指針作成の必要性が示された。

  • 左村 公, 高橋 幸照, 中村 好男, 金元 敏明, 伊藤 隆幸
    2013 年 81 巻 2 号 p. 105-108,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では昨今の社会事情により自然エネルギーが着目される中で,三重県にある水土里ネット立梅用水を対象に,地域活性を目的とした地産地消型の小水力発電プロジェクト(立梅用水型小水力発電プロジェクト)について紹介するものである。この立梅用水型小水力発電プロジェクトでは,地域活性を円滑に図るため地域住民と協働して実施する産官学民の体制をとっている。また,従来型の小水力発電では,土木建築施設を必要としていたが,それらの施設を不要とする新型小水力発電装置(相反転方式)を開発した。現在,小水力発電で発電した電気の利用ニーズを調査しており,6次産業活性化のための利用などが挙げられる。

  • 渡邊 正弘, 柴田 三郎
    2013 年 81 巻 2 号 p. 109-112,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    山形県最上川中流土地改良区は,山形市ほか2市1町の約4,000haを受益地に持ち,昭和44年度に設立されている。昭和47年度より国営最上川中流農業水利事業を着工し,事業の一部である導水路の高低差106mの減圧として水力発電を計画したが,国営事業による発電所の建設は,管理に関する国からの通達が未了であったことなどから断念した。土地改良事業において小水力発電の整備を一体的に実施することが一般的でなかった昭和57年度に,最上川中流土地改良区が全額出資の株式会社を設立し,61年度から発電事業を実施している。本報では,発電施設の状況と,併せて土地改良区の小水力発電の取組みが株式会社設立に至った経緯,現在抱えている課題,および今後の方向性について報告する。

  • 志野 尚司, 田澤 裕之, 柄澤 昭司, 山本 照幸, 永田 浩章
    2013 年 81 巻 2 号 p. 113-116,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    近年,エネルギー政策全般のあり方が見直されるなか,再生可能エネルギーの重要性が再認識され,有効に活用することが社会的要請となっている。平成24年7月1日に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行され,小水力発電導入による費用対効果もより期待できるものとなった。そこで,小水力発電などで発電した電力を自家消費するとともに余剰を電力会社に売電することで,その収入を土地改良施設の使用電力料のほか,発電施設をはじめとする関係土地改良施設の維持管理費の低減に充てることが期待される。この報文では,国営神流川沿岸農業水利事業で整備し,平成24年9月に稼働開始した「神流川沿岸小水力発電所」の取組みについて,事業概要,その導入過程で策定された「『ひびきの』スマートビレッジ構想」やFIT対応などについて述べる。

  • 佐藤 智, 金田 敏和, 石神 暁郎, 周藤 将司, 緒方 英彦
    2013 年 81 巻 2 号 p. 117-120,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    積雪寒冷地において農業水利施設の機能診断を行う際には,凍結融解作用に着目する必要がある。農業水利施設の多くを占める鉄筋コンクリート製開水路では,凍害による側壁の表面変状と内部変状が異なる形態であることが知られている。水路側壁の断面観察の結果,凍害劣化した開水路の側壁内部に発生するひび割れは必ずしも連続したものではなく,多数のひび割れが不規則に発生していることを明らかにした。また,側壁の方角,背面の土地勾配,積雪状況,融雪水の供給状況,ひび割れが発生した目地,側壁の雨水滲出箇所,天端のスケーリング,表面ひび割れの分布などから凍害発生箇所を目視調査のみで推定できることを明らかにした。

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