農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
83 巻, 12 号
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  • 遠藤 知庸, 神馬 勇雄, 門口 隆太
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1019-1022,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農林水産省では,近年の豪雨や地震によるため池の決壊などを踏まえたため池の防災・減災対策の優先順位付けをするため,平成25年度から全国約11万カ所のため池の一斉点検を実施している。平成26年度までに完了した81,171カ所のため池のうち10,077カ所が詳細調査を要するとの結果であったが,点検で用いた数量化Ⅱ類による地震時における構造的評価について近年のため池の耐震照査結果と比較したところ,ほぼ妥当な水準であった。本報では,これら一斉点検の結果と下流に住宅などのある防災重点ため池を優先したハード対策とソフト対策を進めていくとともに,農村の都市化や担い手の高齢化に伴い利用の低下や管理の脆弱化がみられるため池の広域的な保全・活用など,今後のため池の防災・減災対策を紹介する。

  • 小田 哲也, 森脇 馨, 谷垣 和彦, 野村 純数, 澤田 豊, 河端 俊典
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1023-1026,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    兵庫県には約3万8千カ所のため池が存在し,その数は都道府県別で全国一である。ため池は現在もなお水田農業を支える貴重な農業用水の水源施設である。南海トラフなどの大規模地震への備えが求められていることから,本県では,水害対策(老朽化対策)に加え,ため池の耐震調査など地震対策について取り組んでいる。一方,中長期的にため池を適正に保全・管理していくため,ため池の定期点検制度や「ため池の保全等に関する条例」制定など独自の取組みを実践している。本報では,兵庫県におけるため池耐震調査に関するこれまでの取組み,ならびにため池の保全に関する取組みについて紹介する。

  • 西村 伸一, 柴田 俊文, 珠玖 隆行, 水間 啓慈
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1027-1030,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報は,老朽化したため池を対象に,地震対策のためのリスク評価手法の確立を目的としている。瀬戸内地方には多くのため池が存在するが,その多くが江戸時代以前に築造されており,老朽化が著しい。近い将来,発生が危惧される南海トラフ地震に対して,適切な対策を取る必要があるが,その対策法や優先順位付けなどが重要な課題である。ここでは,この課題に対して,リスク評価に基づく,客観的な意思決定法を提案する。最初にサウンディングを基本とした堤体の内部診断法を示す。さらに,岡山県における,南海地震に対応する今後50年におけるため池の損傷確率を算定し,リスク評価を実施した例を示す。

  • デュッティン アントワン, 矢崎 澄雄, 龍岡 文夫, 毛利 栄征
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1031-1034,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    2011年東日本大震災では,多数のため池堤体が被災し崩壊した例もあった。その主因は,堤体の締固めが悪く初期非排水強度が小さい上に,砂質であったため地震時に非排水繰返し載荷のために強度が著しく低下したためである。わが国ではため池堤体のこのような被害は古くから多数あり,これを予測できる実務的な安定解析法が必要とされている。本報では,非排水繰返し載荷による非排水強度の低下を考慮するNewmark-Damage(D)法を紹介し,ため池堤体やフィルダムなどの盛土・支持地盤系の耐震診断には締固めの影響の考慮が非常に重要であることを示す。

  • 毛利 栄征, デュッティン アントワン, 龍岡 文夫, 矢崎 澄雄
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1035-1038,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,レベル2地震動に対するため池堤体の決壊の可能性を定量的に峻別するための解析手法である簡易Newmark-D法の考え方とそのモデルを紹介する。特に,簡易Newmark-D法は土質試験とFEM動的応答解析を実施しないところに特徴がある。具体的には,既往のため池堤体土の繰返し三軸圧縮試験の結果を整理分析して得られるため池堤体土の標準強度低下モデル(K2015モデル)を提案し,この標準モデルを用いた解析結果の適用性を記述する。また,地震時の堤体の加速度応答については,既往のFEM動的応答解析結果を用いて,堤体と地震波の振動特性から当該ため池の応答倍率を推定するモデルを提案する。これらの標準モデルなどを採用することによって,所定の精度を有する簡略化された耐震診断が可能であることを紹介する。

  • 吉武 美孝, 藤原 正幸, 小林 範之
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1039-1044,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    ため池堤体改修に資する浸透課題に対し,解析方法の提案および既発表論文で提案した手法の使用法について計算例を提示して解説する。はじめに,Casagrandeの基本放物線を用いて,水平ドレーンの必要最短長の求め方を提示するとともに計算例を示す。次に,山間部や丘陵部のため池(谷池)に多い堤体基礎地盤が傾斜している堤体に対して,Dupuitの理論による解を用いた浸潤線の計算式を示し,ゾーン型堤体に対する計算例を示す。最後に,透水性地盤上の堤体の漏水対策として用いられる人工ブランケットの設計に対して,Bennett解を用いた長方形および三角形形状の最適設計例を示すとともに,三角形ブランケットの有効性を示す。

  • 市川 健, 千葉 克己, 郷古 雅春, 上島 照幸
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1047-1050,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業用ため池は明治以前に築造されたものが多いため,豪雨や地震などによって毎年多大な被害を受けている。本研究では,宮城県北部連続地震(平成15年)と東日本大震災(平成23年)により2度堤体に縦断亀裂が発生した宮城県東松島市内のAため池と被害がなかったBため池で地盤調査と液状化判定を行った。その結果,Aため池は基礎地盤に粒径のそろった緩い砂層が広く分布しており,この層が液状化したために堤体に縦断亀裂が発生した可能性があり,再度災害の防止には液状化対策が必要と考えられた。また,ため池の耐震化を検討するためには,液状化の可能性がある緩い砂層を把握するため,ボーリングやスウェーデン式サウンディング試験に加え,表面波探査を行うことが有効と考えられた。

  • 日置 秀彦, 中西 滋樹, 末本 航
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1051-1055,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    東日本大震災からの農地・農業用施設等の復旧復興に当たり,農業土木分野については,全国知事会からの依頼に基づき,農林水産省農村振興局が派遣元の都道府県から派遣先の岩手県,宮城県,福島県への派遣の調整を実施するとともに,福島県の依頼に基づき,地方農政局等の国の職員を福島県内の8市町に派遣し,直接支援を実施している。そこで,東日本大震災から4年を経過した平成26年度までの派遣実績を取りまとめるとともに,アンケート調査により人的支援に関する評価や課題について分析し,今後,同様の災害が生じた際に効果的・効率的な派遣を通じた支援を実施するための派遣スキーム構築への提言を取りまとめた。

  • 堤 寛治, 川﨑 学, 岡本 進, 田中 孝典
    2015 年 83 巻 12 号 p. 1057-1060,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    国営西濃用水第二期農業水利事業は,当初事業計画どおりの事業工期6年,総事業費50億円をもって完了した。本事業の計画策定に際しては,対象を緊急性の高い施設の改修に絞ることにより,また,実施に際しては,施設管理者等との事前調整を徹底するなどして,手戻り業務をなくすとともに,官民連携新技術研究開発事業等による新技術,新工法を積極的に採用してコスト縮減,工期短縮を図ったことなど,さまざまな対策を講じることにより,短期間での事業完了と早期の効果発現を達成することができた。本報では,その計画策定から工事実施までの取組みについて紹介する。この事例が今後の他地区における計画策定および事業実施の参考になることを期待するものである。

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