農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
83 巻, 11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 遠藤 和子
    2015 年 83 巻 11 号 p. 901-904,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    次世代の担い手である子どもたちに,農業用水やため池などの機能,および歴史的な価値を学んでもらうことを通して,当該施設に対する理解を深めてもらう活動に注目し,その取組みの内容と効果を整理した。まず,活動実績のある7つの土地改良区を対象とするヒアリング調査から,学び方のタイプと学びの内容を整理した。次に,活動の効果を整理したところ,子どもたちは農業用水やため池に対して理解を深めゴミを捨ててはいけないと意識するようになるなど,よい影響がもたらされていることがわかった。また,伝えるという行為が,施設の再評価と積極的活用につながっており,大人にも啓発効果など,むしろ大きな効果をもたらすことがわかった。

  • 友正 達美, 辛島 光彦
    2015 年 83 巻 11 号 p. 905-908,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    2013年5月にFAOの世界農業遺産に認定された「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」の一部を構成する連携ため池について,そこに見られる「水土の知」とその継承の活動を紹介する。連携ため池は明治・大正期に多く築造され,①集水溝,水路トンネルによる集水域・受益地の変更,②河川取水と組み合わせた高度な水利システム,③柔軟で節水的な水管理,を特徴とする。その後の施設改修でもその特徴が受け継がれており,さらに次世代への継承が期待されている。

  • 坂田 寧代, 落合 基継, 吉川 夏樹
    2015 年 83 巻 11 号 p. 909-912,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業者の減少,高齢化などに伴い,農地・農業水利施設の維持管理が困難化する状況は,農村において漸次的に進行しているが,地震などの災害後にはこれが急激に進む。本報では,2004年新潟県中越地震の被災集落を事例として,農地・農業水利施設の維持管理の困難化を防ぎ水土の知を次の世代と共有するために進められている営農組合の取組みを紹介する。この組合は旧山古志村(長岡市山古志地区)の隣接3集落の農地を対象として稲作の作業を受託し,農業機械を共同利用して中堅若手世代がオペレータとして作業するものである。営農組合は基幹3作業から委託者の自宅前への米の運搬までを代行し,委託者は水管理と除草を行う。

  • 木村 匡臣, 飯田 俊彰, 岡島 賢治, 山岡 和純, 杉浦 未希子
    2015 年 83 巻 11 号 p. 913-916,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    先人たちにより切り拓かれ継承されてきた水土の知を後世に広く伝承するためには,大学で専門的に学ぶ学生たちが地域の子どもたちへこれを伝える場を設けることが,効率を高める点からも重要であると考えられる。東京大学水利環境工学研究室では,所属する学生,特に大学4年生が主体となって,小学校での環境教育の出前授業,小学生の親子を対象としたワークショップの開催,農村地域住民に対する研究活動の紹介などの取組みを実施している。本報では,これらの概要について紹介し,その成果や現状の課題について考察を行う。また,本研究室の大学生が小学生に対する出前授業を経験したことによる効果を,現在従事する業務や研究へ果たした役割や意識の変化を調べることによって明らかにする。

  • 西原 是良, 加藤 基樹
    2015 年 83 巻 11 号 p. 917-920,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報は早稲田大学に開講された「農山村体験実習」13年間の活動報告を中心に,農学部がない大学における農業学習・農村体験の方法と意義を考察する。農学部がない大学では農業や農村の仕組みを体系的に知ることは難しい。早稲田大学では,都市出身の学生を提携する農村に派遣する講義を構想した。農業農村整備に関する知識の習得には,雑誌などのブームに乗った興味関心を頼りにするのではなく,計画性のある体験プログラムと,大学の活動を受け入れる地元との信頼構築が不可欠である。こうした取組みを長期にわたり続けることは,受入れ地域の内発的発展を刺激する効果もある。早稲田大学の活動は,新しい農村の方向性や,農業用水や農道の維持管理への協力方法を模索する一助になっている。

  • 宗岡 寿美, 高山 裕司, 山崎 由理, 木村 賢人, 辻 修
    2015 年 83 巻 11 号 p. 921-924,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    帯広畜産大学と帯広農業高等学校における「高大連携事業」を通じて,農業高校を支援した農業農村工学教育の取組みと効果・成果をまとめた。10余年間にわたり高校2年生に実施してきた「体験学習」などが契機の1つとなり,大学への受験者・合格者の獲得につながるなど地域における人材育成に効果をもたらした。また,農業高校独自の学習体系である「プロジェクト学習」に大学側が積極的に参画し,年間を通じた計画的な学習体系の構築を目指して活動した。その結果,参加した高校生は学習意欲が高まり,進路を意識する姿勢が身についた。5年間継続したプロジェクト学習の活動成果として,各種助成事業の採択はもとより諸団体から高い評価を受けた。

  • 藤本 直也, 神田 綾香, 柴崎 真理子
    2015 年 83 巻 11 号 p. 925-928,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    インターネット上で公開された農業土木分野の古典的技術書は,字体,文体,句読点,書式などが現代のそれとは大きく異なっているため,原文のままでは理解しにくい。学術的内容や技術発達の歴史を知る上でも古典の価値は高いので,次代に引き継ぐためにも速やかに現代語化する必要があると思われる。そのため古典の一つである上野英三郎先生の「土地改良論」(1902年発行)の現代語化を試み,その過程で明らかになった問題点を整理した。その結果,機械的な置換えで済む箇所もあるが,多くは専門知識を有する者が丁寧に書き直す必要のあることが分かった。著作権の切れる古典は今後も増えるので,時代に合った翻訳は組織的に行う必要がある。

  • 高橋 順二, 下斗米 彩
    2015 年 83 巻 11 号 p. 931-935,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    大潟村は八郎潟干拓事業によるモデル農村として誕生し,2014年に50周年を迎えた。これまでさまざまなプロセスを経つつも,稲作主体の大規模農業を展開し,担い手の確保や所得水準の高い農業経営の実現などを通じて1つの自治体が農業を核として発展しうることを示した。一方,わが国の農業構造は大きく変化し,折しも食料自給率目標や食料自給力指標,農業所得の増大などの施策推進を盛り込んだ新たな食料・農業・農村基本計画が閣議策定された。本報では,大潟村の農業・農業生産基盤とその成果を生産費などの指標を用いて概観するとともに,秋田県内の生産現場の状況や新たな基本計画も踏まえつつ,地域の農業所得の増大など土地利用型農業の振興のための基本的条件について考察する。

  • 木下 幸雄, 及川 正和
    2015 年 83 巻 11 号 p. 937-941,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,農業経営改革の実現に向けて,土地改良事業によって,何が解決され,何が未解決か,課題を析出し,農業経営の現実から農業農村整備の役割を整理した。岩手県の胆沢平野土地改良区を対象地として,水田農業経営の現状把握のためアンケート調査を実施した。その結果をもとに,経営規模,経営目的・意欲,経営者能力,経営管理基盤,法人化・企業化,経営継承計画などの観点から,分析・考察を行った。土地改良事業は,担い手の“生みの親”としての役割を果たしたと評価できる一方で,“育ての親”としての役割が今後期待される。土地改良区としても,組合員のニーズを十分に見極め,可能な範囲でサービスを提供していくことが重要である。

  • 坂田 寧代, 與那覇 龍二
    2015 年 83 巻 11 号 p. 943-946,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    2004年新潟県中越地震では山間部の長期停電が親鯉の大量へい死につながったため,一部の大規模経営層は越冬用水槽などの施設や住宅を平野部に移転させた。こうした大規模経営層の中からは企業的経営体が出現している。一方で,山間部に残った大規模経営層は山間部の養鯉池を中心に生産を続けている。本研究では,山間部にとどまった大規模経営層が山間部に養鯉池を展開する意義とそのために行っている取組みを明らかにすることを目的として,2014年4~12月に小千谷市東山地区を対象として聞取りと現地踏査を行った。その結果,山間部の養鯉池,とりわけ天水池で大型の錦鯉を飼って良いものに育て上げることに価値を見いだし,天水池を山頂部に展開するに当たっては安全性にも配慮していることがわかった。

feedback
Top