農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
83 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
 
  • 鳥井 健太郎
    2015 年 83 巻 3 号 p. 175-178,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業農村整備事業における「環境との調和への配慮」については,これまで全国各地の事業実施地区において様々な取組が行われているところである。この度,土地改良法に「環境との調和への配慮」が事業実施の原則として位置づけられてから10年以上が経過したことを踏まえ,関係法令やこれまで農林水産省が発出してきた各種の通知等を改めて確認するとともに,現在,農林水産省においては食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会技術小委員会において検討されている「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の技術指針」の改定内容の概要を紹介し,今後の目指すべき方向を考察した。

  • 福田 信二, 棚倉 大智, 平松 和昭, 原田 昌佳
    2015 年 83 巻 3 号 p. 179-182,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,平面2次元水理モデルと生息場適性モデルを統合した生態水理モデルを援用し,流水環境の多様化に効果があるバーブ工および置石を考慮した自然再生シナリオの効果を定量的に評価した。シナリオ分析の結果から,水利機能を重視したコンクリート3面張りの水路において,比較的容易に施工可能な自然再生技術を適用することによって多様な生息環境を創出し,水路が本来有する生態学的機能を回復できる可能性が示唆された。今後の課題として,種々の物理環境を有する農業水路において,生息場の質と空間的多様性の評価事例を集積し,相互に比較・検討することにより,農業水路の整備設計における定量的な基準を策定することなどが挙げられる。

  • 向井 章恵, 堀野 治彦, 樽屋 啓之, 中桐 貴生
    2015 年 83 巻 3 号 p. 183-186,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    中小河川では「多自然川づくりポイントブックⅢ」が発行され,多自然川づくりへの展開が図られている。中小河川と排水路は,断面が狭くて深く,流路が拘束されているという類似した特性を持つ。そこで,排水路における生物生息場の創出について,その要件をポイントブックの技術的知見を援用して検討した結果,中小河川は護岸を立てて河床幅を拡幅することで,川らしさを作る土砂移動を生じさせられるが,排水路は護岸がすでに直立しているため水路幅を拡幅できず,川らしさをつくる以上の激しい土砂移動が生じて水路床の侵食が進む。そこで,水路床の侵食を防ぎながら適度な土砂移動を促す水制について,排水路のセグメントに応じて形状を変えた上で,その効果を実験的に明らかにした。

  • 西田 一也, 大平 充, 千賀 裕太郎
    2015 年 83 巻 3 号 p. 187-190,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業農村整備では生態系配慮対策の一つとして,湿地・池の造成が行われてきたが,既往研究では造成湿地・池の魚類の利用実態の解明にとどまっており,周辺水域の魚類個体群への効果は明らかではない。そこで本研究では,水田地帯に造成した湿地が接続する小河川の魚類個体群に与える効果の把握を試みた。湿地造成後,小河川ではホトケドジョウが採捕されるようになったことから,湿地を繁殖・成育の場とした後,小河川へ移出することで,密度増加や個体群形成の効果があったと考えられた。また冬に小河川での採捕個体数に占める湿地から移出した標識個体の割合が高くなったことから,湿地から冬にも移出し続けることで,小河川の個体群の維持に寄与した可能性が示唆された。

  • 柿野 亘, 永吉 武志
    2015 年 83 巻 3 号 p. 191-194,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    イシガイ類成貝の流下生態および生息に配慮した河川,農業水路工事時の配慮対策に資する知見の蓄積をめざし,実験水路においてヨコハマシジラガイを流下させたときの応答と移動限界流速を把握した。その結果,流速15.5~32.0 cm/s範囲内では,①供試個体に特段変化が見られない,②下流へ滑りながら流下,あるいは③複数回回転しながら流下,④このような流下の直前の振動している状態,が確認された。また,供試個体の移動限界流速については,25.37(±1.18)cm/sであり,殻の大きさの大小や重さに対して,移動限界流速はほぼ一定であった。同様の実験や野外での調査報告結果との比較から,種によって流下応答や殻の大きさや重さと移動限界流速との関係は異なることが考察され,整備済みの河川や農業水路の本類の生息状況に関する知見を得ることなどの課題が挙げられた。

  • 北村 浩二
    2015 年 83 巻 3 号 p. 195-198,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    東南アジアで最も大きな国際河川であるメコン河における環境配慮の技術的な活動としては,メコン河委員会(MRC)による環境プログラムがある。これは,1985年からメコン河流域の水質調査を継続的に実施し,そのデータに基づいて,「水質に与える人的影響」,「水生生物の保護」,「農業への利用への影響」について評価するものである。メコン河流域全体としては,これまで環境への大きな負の影響は出ていないが,最下流のメコンデルタでは人口増加などの影響で水質の悪化が見られる。今後の流域開発の進展によって,水質など環境への負の影響が大きくなることが懸念されることから,MRCの環境プログラムのさらなる強化が期待される。

  • 草 大輔, 山本 忠男
    2015 年 83 巻 3 号 p. 199-202,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,農業的成功の歴史を有するコロンビア日系人の農業展開の実態を把握し,その特徴を検証した。日系人農家の耕地面積は当初は拡大傾向であったが,作物価格の変動などの影響により,全国的傾向と同様に近年は減少していた。パルミラ市など日系人農家が耕作地として展開した市は,1959年当時,灌漑率がブガ市などの周辺市に比べて高く,サトウキビ生産量も高い傾向が見られた。日系人農家が多いカウカ盆地では個人で井戸水を活用する割合が高く,これには日系人か否かの違いは見当たらなかった。日系人コミュニティは移住当初こそ入植地において共同生活を送っていたものの,農地拡大以降,水源の共同利用などのような習慣にはとらわれず,現地で一般的な井戸の個別所有を進めていたことが分かった。

  • 播磨 宗治, 相場 千秋, 千原 瑞穂, 柿田 和弥
    2015 年 83 巻 3 号 p. 203-208,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    平成5年に着工した国営両総農業水利事業も,今年度をもって完了する。本報は,20年余りにわたって進められてきた事業内容の中から,特徴的な整備事例と完了に際して取り組んだ事例を紹介する。前者としては,①創意工夫によるコスト縮減事例として,開水路内の管の浅埋設工法,②他機関との連携例として,調整池建設予定地の重要保護植物の生息地回避と県営圃場整備による用地創出および掘削残土の有効活用,(独)農研機構のFOEAS導入による集落営農の進展,後者としては,③国営土地改良事業初のPCB汚染物の処分,④完了後に向けた調査と予防保全について,報告している。④は,当地が地盤沈下継続地域でありかつ完了3年前に東日本大震災の影響を受けたという特性を踏まえたもので,事業完了前の施設機能確認と併せ,管内調査結果からは,弁室など構造物回りの基礎設計に工夫を加えることの重要性などに言及している。

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