農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
83 巻, 7 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 前山 啓二
    2015 年 83 巻 7 号 p. 537-540,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    北海道の土地改良区では,アジアやアフリカの国々から「農民参加型用水管理システム」の研修生を受け入れ,土地改良区が培ってきた農業用水・農業水利施設の管理などに関わる体制づくりや人材育成の技術移転に協力している。技術移転の背景や研修内容とともに,平成25年に札幌市で開催されたシンポジウム(「土地改良区の国際協力の意義」)から,研修生の帰国後の活動や研修の成果について報告する。また,研修生の受入れを契機として,ラオスに赴き,直接現地指導に取り組んでいる土地改良区の事例を紹介する。

  • 奥田 幸夫, 後藤 幸輝, 北川 巌
    2015 年 83 巻 7 号 p. 541-544,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    ウズベキスタン共和国シルダリア州では,灌漑農地面積の98%に土壌の塩類集積が見られる。除塩対策としてリーチングが実施されているが,排水路から離れた圃場中央部では排水機能が低いため高い地下水位が持続し,十分に除塩されず土壌の塩分濃度が高いままである。このような排水効果が得られない圃場に対して,日本で一般的な暗渠排水を活用した浸透水・塩分の排除方法を検討した。暗渠には日本で開発された穿孔暗渠機「カットドレーン」を使用した。カットドレーンの施工は,土壌水分状態を考慮する必要があると考えられた。リーチング時には,排水口から過剰な排出があり穿孔部に崩落が見られるなどの改善すべき課題が明らかになった。

  • 蛭田 英明, 家泉 達也, 千葉 伸明, 佐川 喜裕
    2015 年 83 巻 7 号 p. 545-548,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    わが国の技術協力は途上国の発展に大きく貢献し,高い評価を受けてきた。こうした協力には,高度な技術パッケージの輸出にとどまらず,わが国の長い歴史の中で培われた知識や経験,ノウハウの現地への適用といったものも含まれる。本報では,貧困ライン以下で暮らす人々が人口の約6割を占めるザンビア国北東部において,日本で古くから実践されてきた簡易な灌漑技術を同国の農業普及システムを活用して広域普及している取組みについて紹介する。これは,技術の「深化」や「高度化」といったこれまでのアプローチとは異なり,技術の「簡易化」により「適用性」を高めていくという新しい視座を提供するものである。

  • 小林 維円, 菊池 翔太朗, 石坂 邦美
    2015 年 83 巻 7 号 p. 549-552,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    日本のODAの重点地域であり,かつ農業農村開発協力を必要としながらも,治安やインフラの問題から調査が制約されたり,地形データ等が未整備な国において,情報収集に多くの時間・労力を費やすなど,支援が円滑に進められない状況がみられる。そのため,日本人専門家が衛星データや現地の人材等を活用して現地状況を把握し,農業水利施設整備等の計画立案の手法が求められている。そこで,基礎情報が限られているウガンダ国を対象に,農林水産省の補助事業で衛星データと現地人材を用いた計画立案手法を検討した。その結果として作成された検討手法を用いて,JICA調査により実施するプレF/S段階の灌漑計画策定における地形図・土地利用図などを作成した。本報では,これらの活動事例と相手国関係者への技術移転について報告する。

  • 粟生田 忠雄
    2015 年 83 巻 7 号 p. 553-556,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    今日,アフリカ諸国の人口増は著しい。著者は2014年11月ケニアの水田を視察した。灌漑地区の整備拡張のため,ダムや用水路の拡充が取り組まれている。ただし,ケニアでの稲作はほとんどが手作業であり,また機械作業を前提とした基盤整備は未熟である。一方,輸出作物用の大規模な機械化農場も進出している。コメ増産のためには機械化による稲作の効率化が求められる。そのためには,用排水路,暗渠などの圃場整備,品種に適合した栽培手法の確立が課題となる。その際,日本における水利組合形成や基盤整備と農業の機械化,栽培技術の向上などの歴史に学ぶことが肝要であろう。ただし,農地の持続性,農村雇用の安定などを考慮した現地に適合した技術でなければならない。ここでは,ケニアの穀倉地帯の現状と課題について概観し,ケニアの食糧生産のあり方を考える。

  • 進藤 惣治, 山本 公一
    2015 年 83 巻 7 号 p. 557-560,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    水需要が拡大するエジプトで,排水の再利用促進は今後の水資源政策の柱となっている。一方で,エジプトの農村部では,ゴミの投棄のほか,生活排水の流入により排水路の水質汚染が深刻で,再利用の妨げとなっている。筆者らは,水利組合強化のプロジェクトに携わる中で,水利組合員や利害関係者とワークショップを開催し,問題意識を高めつつ,地域住民が参加する形でゴミ処理システムの構築と集落排水施設の設置による水質保全と排水再利用の促進を試みた。水不足と水質汚染に悩む途上国が少なくない中で,本事例は参考になると考えている。

  • 降籏 英樹, 廣瀬 千佳子, 藤本 直也
    2015 年 83 巻 7 号 p. 561-564,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    アジア型水田稲作技術のアフリカ内陸天水低湿地での有効性は徐々に認識されつつあるが,その実現には,用水環境,品種,栽培技術が総合的に実施される必要がある。このため,ガーナ国,エチオピア国に実証圃場を設け,農民とともに有効な水田稲作技術を検証するとともに,その内容をマニュアルとしてまとめた。また,マニュアル発行後,主にガーナ国においてその配布状況および技術の利用状況に関し,現地の関係者を対象に聞取り調査を実施した。本報では,実証圃場での実施内容およびマニュアルの内容を紹介するとともに,作成したマニュアルの配布,利用状況およびその改善点や課題について報告する。

  • 成岡 道男, 宮本 輝仁, 岩田 幸良, 亀山 幸司, 中村 俊治
    2015 年 83 巻 7 号 p. 565-570,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,HYDRUS-1Dを使った上向き補給水量の計算法を,ユリ畑の事例を通して紹介した。ここでは,HYDRUS-1Dを使ってユリ畑の土壌水分量を解析し,実測値と比較・検討した。そして,HYDRUS-1Dを使って計算した上向き補給水量について考察した。その結果,蒸散量の急増や大雨などの急激な水分の移動時や耕盤付近でなければ,土壌水分量の実測値とHYDRUS-1Dによる解析値は近似することが示された。また,対象としたユリ畑では, HYDRUS-1Dを使って計算した上向き補給水量は設計基準の適用に比べて低くなる傾向があった。

  • 中屋 俊満
    2015 年 83 巻 7 号 p. 571-574,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    愛知県濃尾平野北部に位置する木津用水は今から約370年前,尾張藩の直轄事業として開削された。木津用水の開削は尾張藩の財政を支え,その後何回かの災害を受けながらも復旧を行ってきた。明治時代には木曽川から名古屋を結ぶ舟運にも利用されながら現在まで用水路として水を配り続けてきた。しかしながら,都市化の進行により背後地などからの排水量の増大により機能に支障が出始めたことから,国営総合農地防災事業として改修を行うことになった。同用水の地下水涵養機能などに着目し,今後の用水供給の継続と土地改良区の役割などについて筆者の考えをまとめた。

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