農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
84 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 大村 仁
    2016 年 84 巻 1 号 p. 3-6,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    「人材の確保・定着」は,農業農村工学分野に関わるすべての職種において,現在の最重要課題の一つである。特に技術者に偏重した組織構成と生産体制を持つコンサルタントにおいては,その重要性はきわめて高い。そこで,農業土木技術を次世代へ継承する責務を担う我々としては,①農業土木関連の各職種への就職者の増加,②確保された貴重な人材の定着,③農業土木学生の増加,を実現すべくコンサルタント業界の枠を越え,すべての農業土木関係者とおのおのの立場を越えて連携し,行動することが求められている。本報では,人材の確保・定着についてコンサルタントの現場で発生している課題や,関係組織と連携した取組み事例を紹介するとともに,広く関連職種団体における今後の取組み方針について私見を述べる。

  • 八木 嘉隆
    2016 年 84 巻 1 号 p. 7-10,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業を取り巻く社会情勢が激変する中,農業農村整備が担う役割が多様化し農業土木職員に求められる技術領域が拡大する傾向にあり,また,静岡県では,財政健全化計画に基づく大幅な人員削減や団塊世代の大量退職等によって,組織的な技術力低下が懸念されていた。このため,平成18年度に静岡県農業農村整備技術研修基本計画を策定した。その後,「品確法」に基づく発注者責任が厳格化されさらなる技術力向上が求められたため,静岡県の農山村づくりの指針の改定に合わせ,平成25年度に見直しを行い,研修の目標を「確かな技術と多面的・多角的な視点から美しく品格のある農山村の創造に貢献できる農業土木技術者の育成」とし,自己研鑽活動を研修の重要な要素として位置づけた。また,その成果を個人と組織が共有するとともに,対外的にこれを示すことを可能とする研修体系を構築するため,農業農村工学会の技術者継続教育(CPD)制度を活用している。

  • 鈴木 豊志
    2016 年 84 巻 1 号 p. 11-14,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業農村整備事業の実施に当たっては,昨今の社会情勢や農業情勢の変化に伴い,国等の技術系職員や民間の技術者等に要請される技術的内容も変化しており,こうした要請に対する課題を的確に捉え,対処し得る人材を育成・確保することが急務となっている。また,農業農村整備に関する各種計画等においても,施策を遂行する上で講ずべき事項として人材の育成・確保の重要性が示されている。本報では,昨今策定された各種計画における人材育成・確保の記載内容について概観した上で,国において実施している農業農村整備技術研修における人材育成の概要について紹介するとともに,今後の研修制度の在り方について考察する。

  • 島 尚士
    2016 年 84 巻 1 号 p. 15-18,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    今日の農業農村整備を取り巻く環境の変化に応え,効果的・効率的に事業を進めていくためには,事業領域の拡大や必要とされる技術の高度化に対応できる技術者の育成が求められている。農村工学研究所では,農村工学関係の業務に従事している国や都道府県等の技術職員を対象とした農村工学技術研修を実施している。本報では,本研修の体系や実施状況などの概要と研修手法や新たな開発技術の反映などの今後の取組方向について述べる。

  • 近森 秀高
    2016 年 84 巻 1 号 p. 19-22,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    岡山大学の環境管理工学科を事例として,学部学生を対象にした農業農村工学に関わるキャリア教育の現状について,関連する授業科目を基礎的キャリア教育,専門的キャリア教育およびインターンシップに分類し,その授業内容と実施状況を紹介した。インターンシップについては,受講学生の職業意識の問題と受入機関の拡大の可能性について述べた。また,キャリア教育を支える実践的教育として,現代GPに採択された「晴れの国より巣立つ水環境スペシャリスト」による授業科目を取り上げ,理論に関する教育と現場観測・調査,学外講師との議論などを組み合わせた教育プログラムと,タイ国カセサート大学との国際教育プログラムを紹介した。

  • 久保 成隆
    2016 年 84 巻 1 号 p. 23-26,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    1990年代の大学院重点化政策により,大学院博士課程の定員と入学者数は急増したが,近年,入学希望者が減少し,修了者の就職率も低い状態にとどまっている。この傾向は,特に,農業農村工学分野において顕著で,これが長期間継続すれば,将来,大問題となるのは必定である。そこでまず,博士課程入学者の年次変化を,全国規模,農学分野,東京大学,東京大学農業農村工学分野,を対象に検討を行った。次いで,このような事態を招来した原因を,経済負担の増加と就職条件の悪化に求め,それらの中身の分析を行った。また,事態の打開に向けての東京大学の取組みと,東京大学大学院農学生命科学研究科の取組みを紹介し,最後に私見を述べてまとめとした。

  • 橋本 布美子, 横山 正人, 稲垣 仁根
    2016 年 84 巻 1 号 p. 27-30,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    大学教育においては,産学連携のスキームを活用して中核的な人材を養成するための教育システムの整備が必要とされている。特に,最先端あるいは実践的な技術・知見を習得する社会人に向け,継続的な教育の充実を図ることが求められる。ここでは農業土木技術者のニーズに基づいて専門的知識を付与し,課題と到達目標を定め,体系的に理論と演習を積み重ねる「学び直しプログラム」と農業農村工学会の技術者継続教育機構が認証するCPD(Continuing Professional Development)制度を結び付けて実施した,技術者教育講座の実施例を報告する。

  • 森井 俊広
    2016 年 84 巻 1 号 p. 31-34,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    人材育成と技術研鑽への取組みが強く求められている。技術者の技術研鑽を組織的に進め,斯界の技術の質の向上と継承に結び付けていくことを目指した「農業農村工学北陸コンソーシアム」を立ち上げ,第1回目の企画活動として,建設中の市野新田ダムにおける現地研修とそれに続く技術講義で構成される技術研修会を運営した。民官学から58名(うち9名は学生会員)の参加のもと,午前に,北陸農政局市野新田ダムにおける現地研修,午後は,室内会場に移り,フィルダムの建設に関わる技術課題,動的解析技術の現状と課題,ならびにフィルダムの締固めと品質管理についての技術講義を実施した。

  • 稲葉 一成, 綿貫 榮, 沖田 悟, 細貝 知広, 羽深 利昭, 鈴木 哲也, 島本 由麻, 森井 俊広
    2016 年 84 巻 1 号 p. 41-44,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    新潟県糸魚川地域の地すべり防止施設,なかでも鋼製集水井においては,施工後30年以上経過したものが多く,鋼材の腐食による機能低下が懸念されている。鋼製集水井本体における機能診断手法(調査方法,健全度判断基準など)の確立を目的に,老朽化が懸念される集水井を対象に2011年から詳細調査を実施してきた。その結果,ビデオカメラ,鋼材板厚,メッキ塗膜厚,鋼材抽出,塩分飛来量の各調査は,鋼材の腐食状況を把握するうえで有効な点検手法であることがわかった。また,ビデオカメラで取得した画像は,加工・データ化することで,客観的な資料として目視調査結果の定量分析に用いることが可能であり,これにより診断精度の向上も期待できるものと考える。

  • 坂田 寧代, 池端 勇理
    2016 年 84 巻 1 号 p. 45-48,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    2004年新潟県中越地震で被災し世帯数が半減した小千谷市東山地区では,集会所などの生活環境施設を集落ごとに再建・維持する一方,集落が担う機能の一部を全集落にまたがる組織へ集約した。前者では,新潟県中越大震災復興基金の事業が適用された。後者は,中越地震前から存在した東山地区振興協議会を中越地震後に再編し,復興基金事業の申請を行うほか,陳情などを集落に代わって行うというものである。本報では,2014年4~12月の調査に基づき,これらを進める中での小規模集落の財政推移を例として挙げ,生活環境施設の再建・維持に関する事業と集落連携のあり方を検討する。

  • 河田 直美, 柴野 一則, 遠藤 修, 椿 雅俊
    2016 年 84 巻 1 号 p. 49-52,a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    放射性物質が蓄積したため池について,その水利用や施設管理に支障となる危惧があることから,営農再開・農業復興の観点から実態の把握と対策が望まれている。筆者らは,セメント系固化材によって表層固化させた底泥から放射性セシウムの溶出を公共用水の排水基準以下にする工法について福島県内のため池において実証試験を行った。実証では,事前にため池の底泥を用いて室内試験を実施し,配合量を決定した。また,施工後の品質を確認するため,固化させた底泥を現地から採取し,放射性セシウムの溶出量が排水基準値以下であることを確認し,本工法の有効性が確認された。

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