農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
84 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 能見 智人, 大江 慎哉
    2016 年 84 巻 3 号 p. 181-184,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    新たな食料・農業・農村基本計画においては,食料・農業・農村施策の改革を進め,若者たちが希望を持てる「強い農業」と「美しく活力ある農村」の創出を目指していくこととしている。また,TPP対策においても,総合的なTPP関連政策大綱が定められ,「攻めの農林水産業への転換(体質強化対策)」として力強く持続可能な農業構造の実現などを集中的に講ずることとしている。これらを実現するためには,生産効率を高めるための農地の大区画化や地下水位制御システムによる汎用化などを地域の実情に応じて実施することが重要であり,補助事業による農地整備を中心に,事業の概要,現状と課題,今後の展開について紹介する。

  • 冠 秀昭, 林 貴峰, 大谷 隆二
    2016 年 84 巻 3 号 p. 185-188,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    水稲作の抜本的なコスト低減のためには,従来の移植栽培に代わり,直播栽培を実施することが効果的である。プラウ耕グレーンドリル体系乾田直播栽培では,作業の高速化により従来の移植体系に比べ作業能率が大幅に向上するため,大区画圃場に対する適用性が高い。各種土壌条件に対する適用性は,播種前後の鎮圧により減水深を低減することが可能なため,作土層が強粘性,粘性となる土壌を中心に東北地方ではおよそ7割の水田で乾田直播栽培が可能になるとみられる。現在宮城県において,このような省力的営農技術の導入を見越した圃場整備手法である「新たな標準区画(2 ha)」による圃場整備が進められている。

  • 新良 力也
    2016 年 84 巻 3 号 p. 189-192,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    水田の地力が低下しているとの懸念がある中,転作利用頻度に応じて土壌有機物の減耗と関係する窒素肥沃度が低下していることを明らかにしてきた。また,土壌pHの低下や可給態ケイ酸量の減少が顕在化し,それは,資材投入量の減少を要因とする報告を紹介した。地力低下対策技術としては,有機物の減耗に対して堆肥や緑肥などの活用が有効であり,酸性改良やケイ酸補給のための土壌改良資材の施用が必要であるが,生産者に十分施用する労力と資金の余裕がない状況下では,限られたコストで地力をどの水準で維持すべきかの議論が必要である。一方,転作田の食料生産性を高く維持する観点からは,大豆の生産性向上もひとつの方向性だと考える。

  • 大家 理哉, 鷲尾 建紀, 藤本 寛
    2016 年 84 巻 3 号 p. 193-196,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    水田作では経営規模の拡大に伴い管理する圃場数が増える「多筆化」が進む傾向にある。個々の経営体が施肥コストを低減するためには,管理する圃場の地力や養分含量などの土壌化学性を評価し,施肥量を調節するといった肥培管理技術の導入が求められる。その中で,化学性のうち重点的に評価すべき項目は何か,管理する水田のうちでどの程度の筆数を評価すべきかについて,十分な知見がない。そこで,施肥量決定に際して経営体が管理する水田土壌の化学性が圃場間でどの程度変動するかを調査するため,3つの経営体を対象として行った調査内容について述べる。また,これまでの知見で得られた水田における施肥コスト低減技術についても紹介する。

  • 渕山 律子
    2016 年 84 巻 3 号 p. 197-200,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農林水産省ではスマート農業実現のためにさまざまな取組みがなされており,その中の一つに衛星や低空リモートセンシングの利用があげられている。以前よりリモートセンシング技術は農業分野での利用が期待されつつも,実用化は一部に限られていた。しかし,近年センシング技術やデータ解析技術の開発が進み,今後,利用場面が拡大していくものと考えられる。リモートセンシングにはリアルタイムの診断技術としての役割を果たす一方,農地の生産性を維持するためのモニタリングや基盤情報の整備を目的とした情報収集の役割などが期待されるが,本報では,後者に着目し,大規模水田輪作地帯における圃場レベルの解析事例を紹介する。

  • 若杉 晃介, 原口 暢朗, 船生 岳人, 川野 浩一, 広田 健一, 岸 恵純
    2016 年 84 巻 3 号 p. 201-204,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    近年,担い手への農地集積によって大規模・大区画圃場が多くなっているが,そのスケールメリットを生かす営農体系の確立には至っていない。そこで,高精度な3次元位置情報が得られるRTK-GPS測位を用いた大区画圃場における精密な圃場管理技術の効果について現地実証試験を行った。GPSレベラーは高低マップを確認しながら的確な運土が可能となるため,レーザー制御のレベラーに比べて,同等の均平精度を維持しながら約4割程度の作業時間を短縮することができた。また,GPSガイダンスによる除草剤散布試験ではガイダンスの有無によって重複散布面積が約13%減少し,適切な薬剤散布が可能となった。

  • 原口 暢朗, 若杉 晃介
    2016 年 84 巻 3 号 p. 205-208,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    暗渠管を利用した地下灌漑では,管内に供水された用水は上方に移動する必要があるため,下層土の透水性は地下灌漑の適用を判断する要因となる。そこで,地下水位制御システムFOEASが施工された地区の現地調査や地下灌漑時の漏水に係る簡易な試算をもとに地下灌漑を行うための下層土の透水条件を検討した。現地調査では地下水位や用水量,収量などから地下灌漑の可否と透水性と地下水位の関係を調べた。また,試算では地下灌漑時の降下浸透速度と用水供給速度の関係,および地下水位維持に必要となる用水量を算出した。その結果,安定した地下灌漑を実現する閾値の目安として,暗渠管埋設深の透水係数が1×10−5cm/s程度であることを提示した。

  • 鹿野 雄一, 山下 奉海
    2016 年 84 巻 3 号 p. 211-214,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報ではペットボトルトラップにより,田面の小~中型の水生生物多様性を定量的に評価・解析する。福岡県北部の6つの圃場においてトラップを10個ずつ設置し捕獲調査を行ったところ,4綱9科15種にわたり水生生物が捕獲された。また,同一圃場内にも水温,溶存酸素,水深などに局所的な変異が見られたが,解析の結果,水温の高い地点にヌマガエルのオタマジャクシ,水生昆虫,スクミリンゴガイが偏って分布する傾向が見られた。またオタマジャクシは水深の深い地点に,水生昆虫類は水深の浅い地点に偏って分布した。そのため調査に当たっては,一つの圃場に対し複数個設置することで局所的な偏りを平均化することが望まれる。

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