農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 樽屋 啓之, 吉田 修一郎
    2018 年 86 巻 1 号 p. 3-6,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,圃場内外の水利システムをつなぐ共通の技術基盤とする上で有効な水理ユニットの従来概念の拡張と導入を通じて圃場内外水利システムの水管理を結ぶ方法を提案した。圃場外水利システムはダム,頭首工などの水源施設から水路システムに至る基幹的水利施設によって構成され,圃場内水利システムは圃場を中心とするいわゆるオンファームのシステムである。近年の農地の集積や担い手構造の変化,ICT導入による末端水利システムの自動化,地下水制御システムの導入,水田低圧パイプラインの導入などを契機として,両システムを分け隔てなく水利システム技術の共通基盤の上で議論することの重要性と水理ユニット概念の有効性を示した。

  • 越山 直子, 中村 和正, 大津 武士
    2018 年 86 巻 1 号 p. 7-10,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年,農業者の高齢化や農家戸数の減少が全国的に進行している。北海道も例外ではなく,作業効率の向上を目的として,地下水位制御が可能な大区画圃場の整備が進められている。こうした基盤整備を契機として,直播栽培面積の増加,田畑輪換の拡大など,営農形態が多様化しており,水需要の変化に対応した用水供給が必要になる。また,道内の水田地帯では,冷害防止を目的とした,寒冷地特有の圃場水管理が行われている。このような水管理は,水稲栽培において不可欠であり,今後もその水量を確保しなければならない。本報では,北海道における水田地帯の特徴,農業水利を取り巻く環境の変化および今後求められる農業水利の条件について述べる。

  • 木下 幸雄
    2018 年 86 巻 1 号 p. 11-14,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報は,農業用水利用技術と農業水利の本質との関わりについて,農業経営学の立場から再考を試みたものである。岩手県南地域で水田地帯の一角をなす胆沢平野土地改良区を事例として,ダム整備が実際にもたらした農業上の効果を定性的・定量的に整理し,用水の意義を論じながら将来的な効果増進の可能性を示した。ダム整備事業によってもたらされた豊富で安定した農業用水を調達できる技術を基盤として,直結的ですでに発現している短期的な農業上の事業効果が確認されたが,農業用水のイノベーション機能にも着眼すれば,ダイナミックで長期的な効果へと波及し,そこにダム整備事業の効果を増進させる方策を生み出す余地があると考える。

  • 早瀬 吉雄
    2018 年 86 巻 1 号 p. 15-20,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    福井県大野市の扇状地では,1965年以降,地下水位の低下とイトヨの生息する湧水が枯渇する地下水問題が起きた。本報では,土地改良事業の推進によって真名川用水の水利権が確保されているが,コメ余りなどによる水稲作付面積の減少が地下水涵養量の減少となって,地下水問題を起こすことを解明した。河川,湧水の水質分析と水生生物の観察から,扇状地を巡る窒素・リン濃度,その重量比が,水生生物の種にも関係することを示した。地下水涵養の取組みでは,①地下水帯の貯水量が増減しないように,工場生産に必要な揚水量を休耕田などで地下水涵養する案,②市民自らが必要とするコメと生活水の地下水涵養を農家の水田1.1 aに栽培委託する地産地消案を示した。

  • 瀧川 紀子, 森田 孝治, 宮島 真理子, 松尾 洋毅
    2018 年 86 巻 1 号 p. 21-24,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農業用水と排水は密接な関係にあるものの,農地で利用された後の残用水が末端農業水利施設の維持管理に与える影響を定量的に比較・評価した事例は少ない。そこで,本報は地区内の水収支がわかりやすい低平輪中地域であるS地区において,実績水文データから,降雨,用水取水や排水までの一連の水の流れを追跡し,市街地流出・農業用水が排水機場の排水量に占める割合を簡易に計算した。これにより,用水の低減が排水機場の排水量ひいては維持管理費の低減に寄与する可能性を示した。

  • 山口 康晴
    2018 年 86 巻 1 号 p. 27-30,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農業水利施設について,施設監視や機能保全対策などを講じつつあるところであるが,近年,突発事故の発生件数が増加しつつあり,施設管理者などは,施設に不具合が生ずるたびに対症療法的な事後対策に追われているのが実情である。このような事故事例などの情報を収集・分析し,今後の事故対策や保全対策,リスク管理対策などに活用していくことは有益である。本報では,「農業水利施設に係る突発的事故の発生状況調査」(水資源課)をもとに,国営農業水利施設(管水路を除く)の事故実態(平成5~26年度)を整理し,工種別,施設区分別に事故の内容・要因,復旧費などの傾向を整理した。また,事故事例を踏まえたリスク管理対策の視点・方向性について考察した。

  • 西脇 淳子, 徳本 家康, 坂井 勝, 加藤 千尋, 廣住 豊一, 渡辺 晋生, 塩澤 仁行, 溝口 勝
    2018 年 86 巻 1 号 p. 31-34,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    土壌物理研究部会では,若手部会員を中心に国立研究開発法人科学技術振興機構支援事業「復興農学による官民学連携協働ネットワークの構築と展開」を実施している。本報では,本プロジェクトの基盤となる復興農学におけるアウトリーチ活動の実践例として,2014年から2016年までの3年間実施した福島県内での稲刈り体験および現場見学会について紹介する。現場体験企画では,NPOや教育関係者とのネットワーク構築を行うことで,多くの方に福島県内の放射性物質による被害を受けた地域の現状を把握してもらうことができた。また,地元の方やボランティアの方との交流の席を設けることで,ともに考える場を提供することができ,被災地への理解を深めてもらうことができた。

  • 福本 昌人
    2018 年 86 巻 1 号 p. 35-38,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    立梅用水土地改良区では無料の地図ソフトGoogle Earth Pro(以下,「GE」という)を業務の効率化・高度化に活用している。その取組み(3点)を紹介し,GEの可視化ツールとしての有用性について言及した。1点目は,立梅用水(世界かんがい施設遺産などに登録)の視察対応に関するものである。構造物や関連施設などのプレゼンテーションにGEを活用している。2点目は,多面的機能支払交付金の広域活動組織の事務局業務に関するものである。GEを用いて作成した調査用プリントとタブレット端末を携行して交付対象農地の現況調査を行っている。3点目は,土地原簿管理に関するものである。GEを用いて受益農地の分布を可視化している。

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