農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 浅田 洋平
    2018 年 86 巻 2 号 p. 97-100,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,農業用管水路の漏水検知に関する研究として,卒業論文と修士論文の内容について紹介する。卒業論文では,近年開発が進んでいる管内漏水探査ロボットが漏水現象を解明し,その特性を踏まえたものではないという現状を踏まえて,漏水部周辺での流体構造の変化特性をPIVという可視化技術を用いて解明した。修士論文では,既知である分岐管内の圧力波の伝播特性を応用し,水撃作用による管内の圧力波形を観測することで,漏水位置を推定する方法を解明し,その方法の有効性について漏水を模擬した実験管水路を用いて検証を行った。最後に,卒業論文および修士論文の結果を踏まえて,今後の漏水検知の展望と自身の研究活動のプランについて述べる。

  • 今田 舜介, 谷口 智之, 凌 祥之
    2018 年 86 巻 2 号 p. 101-104,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    福岡県朝倉市を流れる黄金川は,環境省レッドリスト絶滅危惧I類スイゼンジノリの唯一の自生地であるが,近年,流量(湧水量)が減少したことにより,その生産量が減少している。本研究では,文献調査などにより黄金川流量の歴史的変遷を整理することで,流量減少の原因を探った。さらに,今後の保全対策の一案として,上流農地からの排水を黄金川へ導水することの可否について検討した。その結果,過去の圃場整備にともなう水路系統や土地利用の変化が,黄金川流量に影響したことが示唆された。また,上流農地からの排水と黄金川では水温に大きな差があり,排水を黄金川に直接導水した場合にはスイゼンジノリの生育に影響する可能性が高いことを示した。

  • 木納 勇佑, 福与 徳文
    2018 年 86 巻 2 号 p. 105-108,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    茨城県北部の中山間地域において,地域住民対象の悉皆調査と他出者対象のアンケート調査を実施し,他出子の地域社会組織へのコミットメントの実態を明らかにした。他出しながらも地域社会組織に所属し,地域の担い手として活動している他出子の多くは,Uターン意思を持っていた。また,20~30代の若いうちに家族と共にすでにUターンを行った人がいる世帯の特徴には,「地域社会とのつながりが強い世帯」であることが挙げられた。地域社会とのつながりがUターン意思に一定の作用を及ぼしていることがうかがえるが,他出子の多くは帰省をしても地域社会への関与はほとんど見られず,実家での活動にとどまっている。他出子の地域社会への関与を促すためには,他出子が帰省しやすい時期に地域行事を行うなどの対策を検討すべきである。

  • 中山 桃花, 坂田 寧代
    2018 年 86 巻 2 号 p. 109-112,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    中山間地域において高齢農家が農業を持続していく上で,伝統野菜の栽培は有効な活動であると考えられる。本報では,高齢農家が伝統野菜の栽培に取り組む意義と必要な人的支援を普及の面から明らかにすることを目的とし,長岡市山古志地区の「かぐらなんばん」の普及と柏崎市南鯖石地区の「土垂芋」の普及の事例を取り上げる。両地区において,地域の子どもへ伝統野菜の栽培指導が行われており,高齢者の生きがいにつながっていることがわかった。ほかにも外部への視察などの取組みに対して,山古志地区では山古志支所による支援,南鯖石地区では南鯖石コミュニティセンターによる支援がある。活動の運営や外部との調整などの高齢者にとって負担になりやすい面を,行政やコミュニティセンターが支援していくことが有効である。

  • 伊佐 朋子, 坂田 寧代
    2018 年 86 巻 2 号 p. 113-116,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    高齢化や後継者不足が課題となる中山間地域での農業の継続策のひとつとして,地域特有の作物の生産が挙げられる。本報では,中山間地域において高齢農家が生産を継続していく上で有効な農業生産面の支援を,金銭的支援と基盤整備の側面から明らかにすることを目的とし,柏崎市南鯖石地区の土垂芋の栽培の事例を取り上げる。中山間地域等直接支払制度の活用により,任意グループの継続やサトイモ栽培の機械化が可能になった。また,圃場整備により,集落営農が進められ,耕作放棄地の解消などにつながっている。現在,南鯖石地区では農地整備事業が行われ,高収益作物としてサトイモの導入が検討されているため,今後さらなるサトイモ栽培の振興につながることが期待される。

  • 島本 由麻, 鈴木 哲也
    2018 年 86 巻 2 号 p. 117-120,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年,農業水利施設のストックマネジメントにおいてコンクリート構造物を中心に非破壊検査が多用されている。筆者らは非破壊検査法の中でも弾性波を受動的に検出するAE(Acoustic Emission)法を利用した試験研究を進めている。特に筆頭著者は,博士論文に関連する試験研究においてAE法を適用している。そこで本報では,AE法に関する技術開発の歴史に着目し,その技術的特徴から農業農村工学分野におけるAE法の有用性と将来展望を考察した。検討の結果,農業水利施設の劣化・損傷の特徴を考慮した非破壊計測がAE法により可能であり,その有用性が示唆された。

  • 吉川 夏樹, 久野 叔彦, 山田 健太郎, 髙居 和弘
    2018 年 86 巻 2 号 p. 121-124,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    新潟平野では戦後の土地改良事業により排水不良が改善され,日本有数の穀倉地帯となった。しかし,その後の農地転用を含む都市化の進展により,現在は適切な排水負担形態を策定する必要が生じている。対応の一環として,産学官連携体制を構築し,新たな排水解析モデルによって,地目別の排水量を算定する「排水の見える化」を進めた。平成28年度は新潟平野の6地区における排水解析に取り組んだ。その結果,大学が開発した新技術が速やかに導入・実用化され,解析を実施したコンサルタント業者の技術力が向上し,官側は科学的根拠に基づいた協議資料を用いて説明を行うことができるなどの効果が得られた。本事例が産学官連携体制による業務の効率化の参考になることを期待し,取組みの経緯について報告する。

  • 近田 昌樹, 川本 欣也
    2018 年 86 巻 2 号 p. 125-128,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報は,ため池のパイピングの状況と緊急排水のタイミングやパイピング孔の現地調査方法の事例を紹介し,ため池の決壊防止に資するものである。パイピング孔の経時的な変化や,パイピング孔の追跡調査結果によると,パイピングの流路は浸潤線のとおりの流れではなく,堤体内で分岐することや上下左右に移動すること,また下流法面に生じた孔の標高が上流側より高い場合があることが分かった。現地調査では,調査費などで本格的な調査着手までに時間がかかることが多いことを踏まえ,簡易な調査方法と調査の注意点を述べ,ため池漏水調査として活用できるように提案した。

  • 浅田 進一, 森本 真司, 四井 博, 竹谷 和志
    2018 年 86 巻 2 号 p. 129-132,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    青蓮寺用水地区の基幹的幹線用水路は,事業完了後30年以上経過しており,老朽化の進行に伴う事故が増加傾向にある。今回,道路下埋設されていた予野サイホン(呼び径700)および松橋サイホン(呼び径800)の改修において,ALW形ダクタイル鋳鉄管を採用した。管路の一部では,厚肉で高剛性なAL1種を用い,現地発生土を再利用する,作業を簡素化するなどした簡略化施工を行い,管体の構造的な安全性や道路面への影響を確認した。その結果,発生ひずみの測定値から算出される応力はダクタイル鋳鉄管の許容値に比べ十分小さく,管体の安全性が確認できた。さらに,舗装面の沈下はきわめて小さく,通常施工部と変わらないことが確認できた。

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