農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 芦田 敏文, 友松 貴志
    2018 年 86 巻 3 号 p. 187-190,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,市町村農業委員会が実施する利用状況調査(農地法)および荒廃農地調査(農村振興局長通知)における,GISを用いた農業生産基盤の可視化技術の活用について検討した。方法としては,既存のモバイルGISアプリケーションのなかから「iVIMS」を採用し,上記調査の現地踏査における活用を試行した。試行結果から,上記調査の現地踏査におけるiVIMSの活用の有用性と,その具体的な改善ニーズを明らかにし,当調査へのiVIMSの活用促進・普及のための課題を抽出した。最後に今後の課題として,踏査結果を農地筆レベルの農地利用計画策定に活用することの重要性を指摘し,そのための方策・手法の検討の必要性を言及した。

  • 丸山 祐輝
    2018 年 86 巻 3 号 p. 191-194,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    (独)水資源機構が管理する筑後川下流用水施設では,管理開始(平成10年)以降蓄積されたデータの一元的管理が課題となっていた。このため,蓄積されたデータを位置情報と関連づけて効率的に情報の整理を行うために,GISシステムを活用した施設管理データベースを構築した。導入に当たって課題となったのがベースマップやシステムの維持コストであったが,無償公開・更新されている国土地理院の地図や,オープンソースソフトウェアを活用することでコスト縮減を図った。また,このシステムと連携した携帯端末の導入は,職員の現場作業の効率化にも寄与した。

  • 山下 裕作, 池田 朋生, 栗田 英治, 伊藤 広宣, 友松 貴志
    2018 年 86 巻 3 号 p. 195-198,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    MMGはモバイル型地域博物館システム(Mobile Museum GIS)の略称である。農村地域における文化的地域資源の積極的利活用のため科研費(基盤A一般)により開発が進められている。その特性はモバイルデバイス(iPhone・iPad)で,360度画像・3Dモデル・ヴァーチャルツアーなど高い臨場感をもって文化資源を体感できることにある。そして,地域住民自身が文化を発見・登録・共有・展示することができるという特性をもつ。農村地域の伝承は多世代の生活者により代々培われてきた知恵の集積物,すなわちビッグデータである。MMGは新しい道具を有効に活用し,農村のビッグデータにアクセスし,活用することによって地方創生を行う「実践としての伝承」を再構成する。

  • 鷲尾 英雄, 岩田 幸良
    2018 年 86 巻 3 号 p. 199-202,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    「農業農村整備に関する技術開発計画」(農林水産省農村振興局,2017年)においてICTの導入による農業分野のさまざまな情報の効率的収集と提供が重点課題として挙げられている。本報では,屋外データの効率的な収集とデータベースを利用した収集データの利用評価に焦点をあて,手軽に設置してデータを収集できる「手に乗るWeb観測点」を開発,実際の柿圃場と大豆圃場の雨量・土壌水分および用水脇の雨量・水位観測に適用し,評価を行った。その結果,機器は信頼性があり,取り扱いやすく,効率的に自動的なデータ収集を行え,労力と費用を節減することを確認できた。

  • 坂田 賢, 関 正裕, 野坂 浩司, 建石 邦夫, 加藤 仁
    2018 年 86 巻 3 号 p. 203-206,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    稲作水管理を対象に情報通信技術を利用した省力化技術の開発が求められているが,簡便な測定法は確立されていない。本報では簡易型GNSS記録装置で得られたデータ(推定値)とビデオ撮影などによる記録(実測)との比較を行った。結果,推定値から給水栓操作を抽出する閾値として,停止とみなす速度を2~6 km/h,停止位置と給水栓の距離を13m未満とすると,実測と同程度の精度が得られた。この手法は情報通信技術を導入した給水機操作の測定でも誤差はわずかであった。また,作業所からの遠隔制御と移動車両の中から行ったリモコン操作の2通りの方法を比較し,前者では屋外作業が4割程度の時間で終了することなどを示した。

  • 藤原 洋一, 川口 渉, 長野 峻介, 田中 健二, 一恩 英二, 渡辺 一生
    2018 年 86 巻 3 号 p. 207-210,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    UAVとSfMによる高精度な3次元地形モデルの作成方法について検討した。飛行高度,写真と写真の重なりの条件を変化させて空撮を行い,SfMを用いて3次元地形モデルを作成して測量値と比較した。写真と写真の横の重なり(サイドラップ率)が60%の場合,3次元地形モデルがうまく生成されない場合があった。一方,サイドラップ率を80%まで上げるとすべての場合で地形モデルが生成された。低空で撮影した場合に最も高精度な地形モデルが得られると予想されたが,本研究では40mの高度から撮影した場合が最良となった。また,高度が高い方が飛行時間も短くなり,撮影枚数も少なくなる。よって,地形モデルを作成する場合,低空で高解像度の写真を狙うより,ある程度の高度で空撮を行う方が得策である

  • 川合 規史, 原田 亘
    2018 年 86 巻 3 号 p. 213-216,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農業農村整備事業の実施は,農業の生産性を向上させ,農産物の生産拡大や品質向上などの効果をもたらす。また,この事業による効果は,農業生産活動を起点として,農業生産に必要な資材・肥料などの原材料の供給のほか,6次産業化の取組みによる農産物の加工,商品開発の活発化などにより,農業生産の需要の増大として,地域内の関連産業へと波及的に拡散していく。この経済波及効果により,地域の関連産業の経済活動が活発化されるとともに,間接的に地域内の雇用確保にもつながっていく。本事業が果たしてきたこのような役割を経済的視点から評価するため,事業により支えられている農業生産寄与額を算出し,これをベースに地域の関連産業への経済波及効果を推計した。

  • 石神 暁郎, 蒔苗 英孝, 池下 貴之, 春田 恵太, 森 充広
    2018 年 86 巻 3 号 p. 217-221,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    頭首工は,農業水利システムの中核を成す拠点施設であるが,耐用年数を超過した施設が増加する中,その機能をいかに保全し管理していくのかが課題となっている。著者らは,北海道内に位置する2つの頭首工の撤去工事に際し,施設の供用中には実施することが難しい,堰体などの主に水中に曝されている部位を対象としたコア採取を行い,劣化状況の詳細調査を行った。その結果,積雪寒冷地に位置する頭首工を構成するコンクリート施設は,圧縮強度や相対動弾性係数といった力学的特性の低下を伴う著しい劣化環境下に置かれており,表面近傍における凍害劣化と,カルシウム成分の溶脱現象を伴う摩耗劣化が発生することが示された。

  • 酒井 俊典, 堀江 正征, 中瀬 勝博
    2018 年 86 巻 3 号 p. 223-226,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    ため池改修における締固め土の含水比管理におけるD値の影響について,5県からデータ提供を受け,過去にため池改修を行うために実施された189カ所の土質試験結果をもとに検討を行った。その結果,D90D95の最適含水比と湿潤側の許容湿潤側含水比の範囲は,D90において4%から15%程度であるのに対し,D95では2%から8%程度と,D95において含水比管理の範囲は乾燥側となるとともに範囲が狭くなることが明らかとなった。また,自然含水比に対して乾燥の必要性がないと考えられる材料は,D90において全体の80%以上の幅広い範囲の材料が対象となるのに対し,D95においては全体の50%以下に減少し,D90で使用に問題がない材料でもD95では乾燥の必要性などの問題が生じる可能性が考えられた。

  • 見屋井 一輝, 乃田 啓吾, 伊藤 健吾, 千家 正照
    2018 年 86 巻 3 号 p. 227-230,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年の再生可能エネルギーを推進する流れにおいて,小水力発電が注目されているが,包括的なデータの集積と導入傾向の分析は不十分である。そこで本報では,国内の小水力発電設備の設置状況を調査し,農業用水を活用した発電設備の運用実態を把握することを目的とし,データのとりまとめと発電方式の分析を行った。その結果,農業用水を利用した発電については,1983年以降,灌漑排水事業の中で土地改良施設を利用した発電が可能となり,水利使用手続きが簡素化されたことなどから導入事例が増加してきたことが明らかとなった。また,固定価格買取制度を中心とした法整備により出力の小さい設備でも採算性が取りやすくなったため,規模は小さくとも設置が簡易な水路工などの低落差地点の開発が進んでいることが示された。

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