農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 鈴木 哲也, 塩谷 智基
    2018 年 86 巻 4 号 p. 277-280,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年,社会基盤施設の維持管理分野における技術開発ではICTやIoT,AIなど,情報技術を活用した非破壊検査精度の向上が試みられている。本報では,効果的かつ効率的な送配水パイプラインの維持管理を目的に,筆者らが現在開発している無線AE計測システムによる送水パイプラインに発生させた圧力波の非破壊計測結果をICT技術の観点から考察する。その結果を踏まえて,パイプライン状態評価へのAE法の適用と情報通信技術活用の有用性を明らかにする。検討の結果,AE法とICTに代表される情報通信技術の融合により,水理現象などの状態評価精度の向上が可能であることが明らかになった。

  • 申 文浩, 久保田 富次郎, 宮津 進, 引木 信也, 李 相潤
    2018 年 86 巻 4 号 p. 281-284,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    震災後除染作業が進行し,これまでの避難指示が解除されるなど,住民の帰還も進められている。しかし,主に帰還困難区域に水源を持つ地域では,比較的高い濃度の放射性物質を含む農業用水が地区内水田に流入することが懸念されており,放射性物質の見える化が強く求められている。本報では,ICTを活用した情報共有システムを試験導入した土地改良区の取組みを紹介するとともに,土地改良区などが抱えているICTの活用に関する課題と対策について検討した。その結果,低コストのシステムを開発するとともに,管理主体が自らメンテナンス,更新,運営できるような環境づくりが必要であり,公的機関による技術的,財政的支援が重要な課題であることを示した。

  • 友正 達美
    2018 年 86 巻 4 号 p. 285-288,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    2011年の東日本大震災からの災害復旧過程における塩分浸入対策と塩分モニタリングの必要性について概要を述べるとともに,ICTを活用したECデータ送信システムの運用の方法,コストなどについて報告する。営農再開に伴う農業用水のECモニタリングは,災害復旧の業務と同時並行で行われ,かつ地域農業の再建にとってきわめて重要な業務であることから,土地改良区などの用水管理者に大きな労力的,精神的な負担となる。ICTの活用は,こうした負担を軽減するための,災害復旧過程における支援方法の一つとして大きな効果を持つものと考える。

  • 若杉 晃介, 鈴木 翔, 丸山 篤志
    2018 年 86 巻 4 号 p. 289-292,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年,水稲作における水管理労力削減を目的に,ICTを活用した給水バルブや落水口を遠隔または自動制御が可能な圃場水管理システムが開発された。本報ではこのシステムの特長と機能,およびさらなる有効活用に向けたAPI(Application Programming Interface)による連携技術について解説する。具体的にはメッシュ農業気象データと作物発育モデルとの連携を用いた最適水管理アプリの開発や,多圃場営農管理システムとの連携による効率的な営農管理,減水深や水管理スケジュールをもとにした水需要予測と広域水管理システムとの連携による適正な水資源の配分と省エネルギー化について報告し,ICTをフル活用することで営農面でのスマート農業の実現と高機能な水田地帯構築の可能性について検討する。

  • 山岡 賢, 吉永 育生, 嶺田 拓也, 木村 信一, 松本 勉, 島田 敏
    2018 年 86 巻 4 号 p. 293-296,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    山形県寒河江市の二ノ堰用水路では,近年水草が繁茂し,土地改良区ではその刈取りに苦慮している。著者らは,刈取り労力の軽減に向けて水草の可視化モニタリング技術および刈取り機の開発に着手した。可視化モニタリング技術は,市販のネットワークカメラを防水容器に入れ水中に沈めて,Wi-Fi接続したPC,スマートフォンでカメラを操作して水草を観察する。水草の刈取り機は,市販の刈払い機に水中で使用できる刃のアタッチメントを装着して水草の刈取り能力を現地試験で確認した。同刈払い機をフロートによって水上で自立させたので,今後ラジコン操作による刈取り作業の軽減を図る。将来的には,自動化,ロボット化を目指す。

  • 岩村 和平, 長網 宏尚, 末吉 康則
    2018 年 86 巻 4 号 p. 297-300,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農地集積が加速し,経営規模拡大による生産効率の向上が期待される一方,機械稼働率の引上げや水管理労力の節減によるコスト縮減,収量増加や品質向上により価格を引き上げる収入増への取組みなどの課題が生じている。これら営農の質の改善要求に答えるため,近年では,生産基盤整備や農業生産活動にICTやロボット技術を導入し,スマート農業(超省力・高品質生産を行う農業)の実現を目指す技術開発が進められている。本報では,農業機械をICT端末として利用し,取得情報を連携利用することで生産性の向上を図る技術や,ICTやクラウドを活用して水管理の省力化や水利施設管理費の節減を図る技術について報告する。

  • 早瀬 吉雄
    2018 年 86 巻 4 号 p. 303-306,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    利根川の利根大堰地点の全窒素は,1953年は低かったが,エネルギー源が石油に替わってから農業用水水質基準よりも高い。本報では,国,県で公開された河川水質,酸性雨のデータをもとに,利根川上流域における全窒素,窒素流出負荷量の経年変化を検討した結果,京浜工業地帯・首都圏で排出された窒素酸化物が夏の海からの湿潤な南風で運ばれ,前橋,安中,中之条の山地域で起きる地形性上昇気流による雷雨で降水沈着すること,近年,前橋,加須での年窒素沈着量の漸減に対応してダム流域の流出負荷量も漸減しているが,岩本,利根大堰の全窒素は変化していないこと,窒素沈着量の多い市町村の森林域では,年間の蓄積増量が大きいことなどを明らかにした。

  • 杉浦 未希子
    2018 年 86 巻 4 号 p. 307-310,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    国内外の河川水資源に関する研究および行政の分野では,中心課題が河川流域の開発から管理へと転換し,統合的流域管理が最重要課題となって久しい。その統合的流域管理における「流域」の本来的意義について,種々の英語術語と日本で用いられる文脈の検討から,分水嶺で定義された集水区域を原初形態としつつ,河川水資源供給圏と,その利用を通じて拡大する使用圏を合わせたものであることを明示した。その概念の本来的意義を前提とした上で,統合的流域管理の好例として,江戸から東京への都市の拡大を取り上げ,利根川関係流域の統合的流域管理が,どのような段階的展開の過程をたどったのか,を「流域」概念から分析した。

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