農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 6 号
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  • 森 丈久, 西谷 啓太郎, 上條 達幸, 松田 展也
    2018 年 86 巻 6 号 p. 485-488,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    従来の目地充塡工法が抱える,低温下での強度発現性や長期間にわたる水没,紫外線,目地部の伸縮繰返しに対する耐久性などの課題を解決するため,新しい目地充塡用シーリング材の開発を行った。開発したシーリング材に対して,低温硬化性,温水浸漬による耐久性,施工直後における目地伸縮への追従性を検証した結果,従来使用されている1成分形ポリウレタン系シーリング材と比較して,①5℃低温下での硬化期間を大幅に短縮できる,②50℃の温水に6カ月間浸漬後も均質な外観を保持し,中モジュラス域と一定の引張強さを維持できる,③5℃1日の短時間養生で,気中・水中条件ともに接着力が発現し,目地の伸縮に追従できることを確認した。

  • 上條 達幸, 森 丈久, 松田 展也
    2018 年 86 巻 6 号 p. 489-492,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    コンクリート開水路のひび割れは,躯体に発生している変状の3割程度を占める主要なものであるが,内部鉄筋の腐食を誘発するなど,水路施設としての耐久性や安全性などの構造機能を損なう要因となり得るため,適切なひび割れ対策が求められている。そこで,現行のひび割れ対策の判断基準やひび割れ補修工法の選定における諸課題について提示するとともに,それらの課題に対応するため,多様なひび割れの発生状況や発生原因に対して適用可能な新たなひび割れ補修工法の選定フローとして,「ひび割れの発生状況別補修工法選定フロー(案)」および「ひび割れの発生原因別対策工法選定フロー(参考例)」を提案した。

  • 森 充広, 浅野 勇, 川邉 翔平, 川上 昭彦
    2018 年 86 巻 6 号 p. 493-496,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    遮水シートの長期耐久性を確認するため,1967年に設置され,供用50年を経過した実験用貯水池底面から合成ゴム系遮水シートのサンプリングを行い,引張強さ,破断時伸び,引裂強さの試験を行った。その結果,引張強さは長手方向8.0N/mm2,幅方向7.6N/mm2であり,初期値の約80%を保持していること,破断時伸びは長手方向412%,幅方向423%であり,初期値の76~79%を保持していること,引裂強さは長手方向31.5N/mm,幅方向28.4N/mmで,初期値の86~105%を保持していること,が明らかとなった。このことから,水中部に設置された遮水シートの劣化進行は非常に緩やかであることが示された。

  • 島本 由麻, 石神 暁郎, 鈴木 哲也
    2018 年 86 巻 6 号 p. 497-500,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,凍害損傷が内在化している竣工後53年が経過したコンクリート水利施設より採取したコア供試体を対象に,X線CTによる損傷実態の可視化と圧縮応力場におけるAEエネルギ強度の関係から,蓄積損傷とコンクリート物性との関連について考察した。検討の結果,コンクリート物性に加えて,AEエネルギ強度を用いることでより詳細な損傷度評価が可能になるものと推察された。その際,蓄積損傷の可視化と定量化には,X線CT計測が有用であり,それらから求められたひび割れ指標とコンクリート物性との密接な関連が示唆された。

  • 木村 守充, 鈴木 良郎, 小泉 和広, 永野 賢司, 藤田 淳
    2018 年 86 巻 6 号 p. 501-504,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年,管水路におけるプレストレストコンクリート管(以下,「PC管」という)のカバーコートの侵食による薄肉化やPC鋼線の発錆・破断など,PC管の外周部の劣化に起因した破損・破裂事故が発生している。しかし,PC管は通常埋設して用いることからほとんど把握できない状態となっており維持管理および保全計画策定の問題となっている。以上の背景から,長大なPC管の調査でライン状に走査し効率的に調査できる電磁波レーダ探査法に着目した。アンテナの周波数やPC管の構造に適合したアンテナの配置を改善することで,管内からカバーコートの状態を把握できる調査手法を開発した。本報では,電磁波レーダ探査法による模型試験および現地試験により適用性を検証し,得られたデータに基づいた劣化の簡易診断手法について検討を行った結果を報告する。

  • 稲葉 一成, 鈴木 哲也, 浅野 勇, 岡村 昭彦, 五十嵐 正之
    2018 年 86 巻 6 号 p. 505-508,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    新潟県内の鋼製集水井は施工後40年以上経過したものも含まれ,老朽化による損壊や機能低下が懸念されている。2013年には農林水産省により,抑制工を対象とした機能診断の「手引き」が作成された。本報では,新潟県糸魚川市丸山地区の鋼製集水井を対象に行ったこの「手引き」による点検事例をもとに,施設の老朽化実態と点検手法における課題について報告する。点検の結果,施工から40年以上経過した現在,丸山地区の一部の集水井ではひどい錆が見られるものの,井筒全体が崩壊するような状況にはなく,集水・排水機能も維持されていた。また,天蓋からの目視調査では井戸の深度や内部の明るさなどによっては,内部の状態を的確に把握できない場合があった。

  • 石神 暁郎, 西田 真弓, 蒔苗 英孝, 佐藤 智, 周藤 将司, 緒方 英彦
    2018 年 86 巻 6 号 p. 509-512,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    凍害劣化を生じたコンクリート施設では,層状ひび割れなどによりその健全性が著しく損なわれるため,それら劣化状態を踏まえた機能診断技術を構築する必要がある。著者らは,北海道内に位置する開水路延べ36路線の446測点において,コア採取を含む劣化状態の詳細調査を行った。本報では,凍害劣化の発生形態を整理し,内部変状の発生により生じる弾性係数の低下の実態を明らかにして,寒冷地の劣化特性に対応した機能診断手法の必要性を示した。また,超音波伝播速度と静弾性係数との関係を整理し,超音波法の有用性を確認した。さらに,リバウンドハンマ法の問題点について考察するとともに,機械インピーダンス法の有用性を示した。

  • 浅野 勇, 森 充広, 髙木 一幸, 羽田 陽一, 川上 昭彦, 川邉 翔平
    2018 年 86 巻 6 号 p. 513-516,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    全国では約12,000kmの農業用管水路(パイプライン)が整備されている。一方,管水路の破裂などの事故は平成5~25年の20年間で累計約6,700件が発生し,事故件数は増加傾向にある。管水路の漏水事故を減少させるためには,漏水を初期段階で発見し大規模な事故が生じる前に適切な対策を講じることが重要であるが,そのために必要な漏水位置探査技術はまだ確立されていない。本報では,戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において開発中の管水路の空気弁から投入・回収でき,管内を自由流下しながら音響データを収音し,そのデータから漏水位置を推定するカプセル型の漏水探査装置を用いた漏水探査技術について紹介する。

  • 兵頭 正浩, 藤本 光伸, 清水 邦宏, 石井 将幸, 緒方 英彦
    2018 年 86 巻 6 号 p. 519-522,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    大規模自然災害に対して農業水利施設の防災,減災を図る上で構造的耐力を回復または向上させる対策である補強の重要性は増しているが,現時点では耐久性を回復または向上させる補修の効果に担保していることもあり,直接的にその効果を評価する手法の開発には至っていない。そこで,本研究では鉄筋コンクリート開水路の構造安全性を定量的に評価するための手法について検討した。本報で提案する水路壁載荷法は,水路壁天端に載荷装置を設置し,内面および外面方向に載荷した荷重と水路壁の変形量を測定するものである。本手法により得られた測定値は,機能診断評価図,推定式による評価表,路線内の相対的評価表などを用いて診断する必要があることが考えられた。

  • 鬼丸 竜治
    2018 年 86 巻 6 号 p. 523-526,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    土地改良区の組合員は,一筆の農地について原則耕作者とされてきた。ところが,現在,借入田における組合員の主体は必ずしも耕作者ではなくなり,農業水利施設の維持管理などへの影響が懸念されている。そこで,本報では,農地貸借の変化に対応した組合員資格について分析した。その結果,①借入田,土地持ち非農家,短期借地契約の耕作者が増加したこと,②今の借入田の耕作者と所有者には,組合員として議決権および選挙権を適切に行使し,費用の負担義務を果たすための,意欲や能力が不足している場合があること,③したがって,農業水利施設の管理・更新事業を円滑に実施するためには,両者による補完が重要であることを示した。

  • 佐藤 勝正, 平良 和史, 小林 維円, アミー ムチェレ
    2018 年 86 巻 6 号 p. 527-530,a3
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    タンザニア国の小規模灌漑地区では,作付計画に基づく配水計画作りがほとんどされておらず,取水地点および各灌漑ブロックの分水地点にも量水施設がなく,灌漑水の量的管理がされていないのが現状である。このため2015年8月から開始した技術協力プロジェクト「県農業開発計画灌漑事業推進のための能力強化計画プロジェクトフェーズ2」では,5地区の実態調査をもとに水配分マニュアルを作成し,レムクナ灌漑地区におけるマニュアルの適用作業を通して水配分の改善を行った。その結果,灌漑ブロック単位での不公平な水配分が明らかとなった。また,水配分を改善するために2次,3次水路の補修工事が効果的であることが認められた。

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