農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 7 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 田井 真和, 堀内 正之
    2018 年 86 巻 7 号 p. 583-586,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本地区の農業水利施設は,淡河川・山田川疏水(淡山疏水)として明治・大正期に完成し,江戸中期の構想から約150年かけた悲願が実現した。現在では世界かんがい施設遺産として登録され,土地改良区では博物館を設置し,広く啓発活動を行っている。一方,国営東播用水農業水利事業(昭和45~平成4年度)では,3つのダムや導幹線水路等を建設し,淡山疏水を包括した壮大な水利ネットワークが構築された。本報では,施設の老朽化や営農形態の変化による用水不足など新たな課題に対応するため,平成25年度より着手された国営東播用水二期農業水利事業での更新整備にかかる淡山疏水の統廃合,農業用水再編など特徴的な実施内容とともに,一部廃用する淡山疏水の利活用方策の検討など地域の水利遺産を将来に継承するための取組状況について報告する。

  • 長塩 泰治, 高見澤 花
    2018 年 86 巻 7 号 p. 587-590,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,京都府における農村集落対策の取組みについて紹介した。京都府の農業・農村地域における,農業者数や過疎化・高齢化集落数の推移などから,京都府では,都市部に先立ち,本格的な人口減少や高齢化の局面に立つ,中山間地域などの農村の維持・再生につなげることを府政の重要課題と位置づけている。その解決のために,これまで京都府の農村集落対策として実施してきた,「命の里」事業や移住促進の取組みについて紹介し,さらに,平成29年度にその対策を発展させ,地域外からの協力・参画を得ながら,多機能で経済活動を担う持続可能で自立的な農村コミュニティの構築をめざすための施策を新たに位置づけたので,その概要を紹介する。

  • 日根 直哉, 日根 沙智子, 丹後 晋哉
    2018 年 86 巻 7 号 p. 591-594,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報の事例地区である豊能町牧地区では,平成24年に協議会を設立し,地区外からのボランティアなどとの協働により,遊休農地解消などの活動を行ってきた。活動は徐々に地区にも定着し,都市住民とのつながりも生まれ,地区ににぎわいをもたらしている。しかしながら,営農環境の整備や担い手の確保など,地域農業の継続への課題は残っていたため,平成28年以降は,今後の地区農業やその実現のための方策を盛り込んだ計画を策定し,次代に継承していくための新たな取組みを進めている。大阪府では,このような地域単位での農地利用の促進に向けた取組みを制度として,条例に位置付け,各地域の農空間を将来にわたって,保全・活用できるよう進めていく。

  • 田中 健二, 瀬川 学, 藤原 洋一, 瀧本 裕士, 一恩 英二
    2018 年 86 巻 7 号 p. 595-598,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    手取川上流域で発生した大規模な土砂崩壊により,手取川本流において高濃度濁水が発生した。こうした状況により下流扇状地では,濁水が農業用水,地下水,生態系に及ぼす影響が懸念されており,水田減水深調査,沈砂池の堆砂量調査,河川流量観測,生態系調査を実施し,濁水発生前後で結果を比較した。その結果,水田浸透量は手取川右岸の扇央部と扇端部で減少した地区がみられたが,手取川左岸では沈砂池の影響により,農地への土砂流入を抑制していることを確認した。扇状地の地下水涵養量は,水田および河川からの涵養量が減少したことが明らかとなり,実際の地下水低下量と整合した結果が得られた。また,トミヨの個体数は激減していることがわかり,その原因に地下水低下による水涸れが考えられた。

  • 島本 由麻, 鈴木 哲也
    2018 年 86 巻 7 号 p. 599-602,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,もみ殻灰を混和したセメント改良土において,AE法を導入した圧縮強度試験を実施し,AE発生頻度とAEエネルギ指標から多孔質材料を対象とした精緻な材質評価を試みた。検討の結果,AEパラメータであるβ値を用いることで力学指標では明らかにすることができない詳細な材質や破壊挙動を評価できることが示唆された。加えて,圧縮ひずみ0.2%までの累積AEエネルギと粒子結合力との間に負の相関が明らかになったことから,累積AEエネルギ指標が多孔質材料の粒子結合力を表す有効な指標であることが示唆された。これらのことから,各種応力場において発生する弾性波のエネルギ強度に着目することで,材料の微細構造やその結合力を考慮した精緻な材質評価が可能になるものと推察される。

  • 友部 遼, 藤澤 和謙, 村上 章
    2018 年 86 巻 7 号 p. 603-606,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    根混じり土の力学挙動を明らかにし,その予測シミュレータを開発することは,わが国における農業生産性の向上や斜面減災に貢献する。著者らは,根混じり土の変形問題を,根と土の摩擦接触問題であるととらえ,数値解析による現象の予測を目指している。これまでに,こうした局所スケールでのモデル化において不可欠な,根-土接触面のせん断強度特性をサクション制御下で計測する抜根試験機の開発を行った。結果として,根-土接触面においてサクションの変化によるせん断強度の変化を確認した。現在,本試験結果を,実問題である根混じり土の変形予測に適用するため,その予測シミュレータを開発している。

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