農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
87 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 友正 達美
    2019 年 87 巻 6 号 p. 453-456,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,東京電力福島第一原子力発電所の事故後に除染廃棄物の仮置場として使用された農地の原状回復に関して,環境省福島地方環境事務所が行っている検討に基づき,水田の原状回復に特徴的な沈下対策,地下排水機能の回復,石礫対策について紹介する。また,これに関連したレジリエンス向上への課題について考察する。

  • 谷口 智之, 今田 舜介, 村井 隆人, 凌 祥之
    2019 年 87 巻 6 号 p. 457-460,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    水田の洪水防止機能は多面的機能の一つとして評価されている。今後は,想定内の豪雨を安全に排水するだけでなく,想定を超える豪雨への対応がレジリエンスの観点から重要になる。本報では,福岡県朝倉市の水田地域内の用排水路において,九州北部豪雨と平成30年7月豪雨の際に観測された水位連続記録をもとに,水田地域内で発生した雨水貯留と溢水の状況を分析した。その結果,豪雨時には水路内の排水が水田に流入することで雨水貯留機能が発揮されていること,また,後方集中型の豪雨では降雨ピーク前に水田空き容量がなくなるため,ピーク時の雨水貯留機能が発揮されにくいことが示された。これらの結果をもとに,水田地域内での今後の豪雨対策について検討した。

  • 木村 延明, 桐 博英, 関島 建志, 安瀬地 一作
    2019 年 87 巻 6 号 p. 461-464,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    低平地排水機場を取り巻く自然・インフラ環境が変化する中,災害に対する強固なレジリエンスを目指して,豪雨時の最適な排水管理を支援するために,排水機場遊水池の水位・流量予測を行うデータ駆動型の多層パーセプトロン(MLP)モデルを開発した。さらに,最新型の長短期記憶(LSTM)モデルも開発した。対象地域では両モデルの学習データが不十分なために,物理モデルなどを用いて,雨量,水位,流量の模擬観測データを生成した。機械学習後のLSTMモデルの水位と流量の2時間後の予測結果は,模擬観測データとの平均平方二乗誤差(RMSE)で評価され,最大変化量に対するRMSEは,それぞれ約5%と約11%であった。また,MLPモデルとの比較は,2時間後までの予測結果で10%以上の精度向上を示した。

  • 清水 克之, 山本 忠男, 久米 崇
    2019 年 87 巻 6 号 p. 465-468,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    ソ連時代の1960~80年代に中央アジアでは大規模な農地・水資源開発が行われた。特に,アラル海に流入するアムダリア川,シルダリア川下流域やイリ川下流域では,水稲−畑作物の輪作が行われ河川から大量に取水された。カザフスタンの大規模灌漑地区はソ連崩壊・カザフスタン独立後に耕作面積が大きく減少したが,その後回復している。本報では,社会体制の変化という想定外のショックに対する灌漑農業のレジリエンスについて当時の農地・水資源開発のコンセプトに基づいて議論する。また現在,両河川の上流国の水需要増加や国内での農業以外の水需要の増加に伴い,農業への水供給量が削減されつつある。そのショックに対するレジリエンス強化について議論する。

  • 松井 俊英
    2019 年 87 巻 6 号 p. 471-474,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年農業従事者が急速に減少・高齢化する中,農林水産省では農地中間管理機構を活用し,担い手が利用する農地面積を,現状の5割から8割に引き上げることを目標にしている。このような中,地域農業の重要な担い手となりつつあり急速に増加している農業法人がどのような営農を展開しようとしているか,また農業基盤整備に対してどのような要望をしているかについて調査することとした。今般,農業法人を会員とする唯一の全国団体である(公社)日本農業法人協会の協力を得てアンケート調査を行ったので報告する。

  • 松井 明
    2019 年 87 巻 6 号 p. 475-478,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農村地域における農地・農村保全のためには,共同化を推進することが重要である。農業委員,農地利用最適化推進委員および行政が連携して,農家および非農家を含む地域住民に対して共同化の必要性および一般社団法人の設立を呼びかけることを提案した。集落営農組織の形態としては,株式会社,農事組合法人(営利型)および一般社団法人(非営利型)が存在する。特に一般社団法人の設立が,多面的機能支払交付金の受け皿になるとともに,担い手への農地集積も進めることができ,効果的・効率的であることを示した。

  • 福島 良樹, 原科 幸爾
    2019 年 87 巻 6 号 p. 479-482,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    ハクビシンは農作物被害を引き起こす東南アジアなどに分布する外来種であり,ねぐらとして農具を保管する資材庫を好む。このことから,本研究では本種を効果的に捕獲できる資材庫の特徴と捕獲時期の解明を目的とした。岩手県盛岡市猪去地区を調査地として,13台の罠を使用して2016年6月から1年間捕獲を実施した。この結果,捕獲実績がある罠は,捕獲実績がない罠よりも有意に針葉樹林に近く,住宅地から遠いことが判明した。また,敷地内でネコやイヌを飼育している資材庫では捕獲されにくいことがわかった。捕獲を実施する場合は,これらの要素に着目することが重要である。また,捕獲時期は春先が最も効果的であることもわかった。このため,年度で区切られない被害対策計画の策定が重要であると言える。

  • 村田 稔尚
    2019 年 87 巻 6 号 p. 483-488,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    ブラジルは1970年代から急速に農業生産を伸ばし,今日では世界農産物市場において輸出額で米国に次ぐ第2位で9%のシェアをもつ農業大国となった。この躍進を大きくけん引したのが,1970年代半ばから進められた同国中西部に広がるセラードと呼ばれる広大な未開サバンナ地域での農業開発である。たとえば,同国の大豆の生産は,1990年代から2017年にかけ8倍強の10,800万tに増大したが,そのうち60%がセラード地域産で占められた。日本は,このセラード農業開発を促進するためのパイロット事業(PRODECER)に官民挙げて協力し多大な成果をあげた。本報はこの協力事業を現時点で総括し国際的な標準とされる経済協力開発機構(OECD)の評価基準に照らし評価するものである。

feedback
Top