農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
87 巻, 8 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 桑原 耕一
    2019 年 87 巻 8 号 p. 637-640,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農村地域では,今後,急速な人口減少が予想され,住民が日常生活に必要なサービスを受けることが難しくなるなど,地域の維持や存続に大きな影響を与えると危惧されている。人口減少に伴うこれらの課題を解決するため,農村集落の日常生活に必要な機能を基幹的集落に集約して住民の利便性を高める「小さな拠点」の整備が提唱されている。農村集落の機能集約の考え方を農村計画の視点から明らかにするため,先行して集落機能を集約している5地区を選定し,2014~2015年に現地調査と地方自治体からの聞き取り調査を行った。この事例調査を通じて,集落機能を集約する範囲の設定,集約する機能や集約手法について,共通する考え方の抽出を試みた。

  • 九鬼 康彰, 彦田 恵里, 武山 絵美, 中島 正裕
    2019 年 87 巻 8 号 p. 641-644,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    台湾の農村再生政策の特長を解明し,わが国の農村再生に対する示唆を得るための基礎研究として,本報では台湾の縣市単位(わが国の都道府県に相当)の統計資料を用いて1990年以降の社会構造や生活基盤整備などの動態を把握するとともに,縣市別の農村再生計画の進捗の傾向を分析した。生活基盤整備では道路や上下水道などの指標を調べたところ,都市部に比べ農村部の相対的な後れが看取された。また,わが国との比較ではICT環境以外で整備が後れていることがわかった。一方,計画の認定は都市化が進む北部以外で進んでいるが,全体に偏りなく取り組まれている縣市と特定の基礎自治体に集中して取り組まれている縣市がみられた。以上の点から,台湾の農村再生は生活基盤整備の後れを課題とする点にわが国との違いがあることが示唆された。

  • 武田 勇, 坂田 寧代
    2019 年 87 巻 8 号 p. 645-648,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報は,中山間地域において利用頻度が低下した公共施設の利用を図る方策の一つとして,地域住民と地域外住民が集まって話をする交流の場づくりに関する実践を報告する。著者らは,2018年度,魚沼市入広瀬地区の大白川集落において,地域交流団体の発足とそれによる低利用公共施設の利用を区長に持ちかけたが,集落住民全体の理解を得にくいと判断し,最終的にはこの低利用公共施設で定期的にお茶会を行っている集落住民の組織に働きかけて集落住民と地域外住民が参加する住民懇談会を開催した。実践を通じ,集落住民の意思を尊重して臨機応変に進めることの重要性を学ぶことができた。

  • 原田 茂樹, 小川 浩, 松田 圭二, 岩堀 惠祐
    2019 年 87 巻 8 号 p. 649-652,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農村地域のQ.O.L.向上と環境保全のため生活排水対策が不可欠である。処理方策としては,下水道以外に農業集落排水施設,単独処理浄化槽,合併処理浄化槽の少なくとも3つが挙がる。人口減少・高齢化時代の農村地域における処理方策の選択は,「地域の特性」と「処理方式(集合処理と個別処理)の特性」を併せた検討によるべきである。本報では,農業集落排水施設と浄化槽の特徴を整理した後,宮城県丸森町の8つの地区を実例として地域特性と処理方式の関係を整理した。さらに,単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換や,汚泥の資源化循環利用について,工学的アプローチに基づく著者らの既報のレビューを紹介し課題をまとめた。

  • 和泉 晴日, 谷口 智之, 凌 祥之
    2019 年 87 巻 8 号 p. 653-656,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,災害断水時における農業水利施設の生活用水供給能を評価した。水田データの併用により小中規模農業水利施設を考慮する新たな評価方法(水田手法)を提案し,水路データのみを使用する先行研究の手法(水路手法)による結果と比較した。水田手法で推定された受益可能人数は約5,914万人(水路手法の2.1倍)となり,特に地形が急峻で大規模な水田地域が少ない西日本で推定結果の差が顕著であった。また,解析に用いる人口メッシュデータの解像度によっても,受益可能人数の推定結果は大きく変化することを示した。最後に,生活環境施設や農業水利施設の老朽化が進む農村地域では,農業水利施設を地域の公共財と位置づけ,他の用途にも積極的に活用することが重要であることを述べた。

  • 鈴木 哲也, 大高 範寛, 藤本 雄充, 島本 由麻, 浅野 勇
    2019 年 87 巻 8 号 p. 659-662,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    鋼矢板水路の腐食問題は,農業水利施設の維持管理問題が顕在化した近年,重要な技術課題として議論されている。そこで本報ではUAVを援用し,可視画像と赤外線画像の取得による鋼矢板実態の非破壊・非接触計測を試みた結果を報告する。実証的検討の結果,赤外線画像の空間統計処理の有用性とともに,赤外線画像による鋼矢板腐食実態の定量評価の可能性が明らかになった。今後,UAV搭載の計測装置の改良を進めることにより画像解析精度の改善も可能であると推察された。

  • 大内 幸則
    2019 年 87 巻 8 号 p. 663-666,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    北海道は,広い土地や地形条件,気象などの自然条件から,再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域であり,水力発電についても明治後期より中小規模の発電から大規模なダム開発を含む発電までさまざまな形で行われてきた。政府は東日本大震災を踏まえ,2015年7月にわが国の長期エネルギーの需給見通しを定め,水力発電を含め再生可能エネルギーの更なる導入を目指している。本報では,北海道の農村地域で農業水利施設の維持管理費などの軽減に向けて,今後普及が期待されている既存の農業水利施設を活用した小水力発電施設について3つの事例を紹介するとともに,今後の北海道における農業水利施設を活用した小水力発電の導入に向けた課題と対応の方向性について報告する。

  • 吉岡 真澄
    2019 年 87 巻 8 号 p. 667-670,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    土地改良事業が行う埋蔵文化財発掘調査について,現行の効果算定手法の改善を目的として,新たな経済効果の評価方法を検討した。事業により発見された文化財が博物館に展示された事例(島根県荒神谷遺跡)を用い,人がその文化財を観覧するための支出(旅費と観覧料)をもとに効果額を算出した。旅費と観覧料は,過大評価を避けるため発掘調査の効果に該当する金額のみを算定する方法を検討し,アンケート調査を実施して旅行目的や展示室に対する評価から金額の切り分けを行い,試算した結果を報告する。

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