農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
87 巻, 9 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 石井 敦
    2019 年 87 巻 9 号 p. 717-720,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    日本の稲作農業を安定的に継続し,平野部に広がる広大な水田を荒廃地化させないためには,採算のとれる大規模担い手経営体による低コスト稲作が必要である。本報では,国際市場価格に対応できる真の低コスト稲作実現のための必要条件と実施方策について考察し,残された課題を示した。真の低コスト稲作のためには,担い手経営体の総経営面積拡大とともに経営体専従者1人当たりの経営規模を60~80ha/人以上に拡大する必要があること,経営規模・水田区画規模・農作業機械規模は同時一体的でなければ拡大が困難であること,総経営規模拡大のための既存の担い手経営体の合併統合や,専従者が過剰な場合の対応が課題としてあることなどを論じた。

  • 矢挽 尚貴, 白川 正昭, 細野 達夫
    2019 年 87 巻 9 号 p. 721-724,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    新潟県上越市三和区では,1994年以降,区内のほぼ全域の農地が圃場整備事業の対象となり,事業を契機として農地集積が高度に進展した。このうち2地区を対象に,農地集積と集落組織の状況を調査した。その結果,今後さらに耕作者の減少が進行すると予想される。耕作地の団地化のために農地の利用権調整を行った集落では,地区外からの入作者がなく,住民と農業の密接な関係を保っており,集落組織の活動の維持が可能であると考えられる。一方,入作者が4割ほどの面積シェアを占めている地区では,地域住民の農業離れが進行しており,用水管理体制を維持できなくなる可能性が高い。このため,担い手を支援する集落組織の体制を再編・再構築することが急務であると考えられる。

  • 坂田 賢
    2019 年 87 巻 9 号 p. 725-728,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    担い手への農地集積・集約化が政策目標であることを背景として,中間農業地域において集約化が進んだ経営体の稲作実態の把握を試みた。方法は簡易型GNSS記録装置を耕作者の移動車両に装着し,畦畔管理,水管理などの管理作業を分析した。その結果,農業農村整備事業の実施によって十分に集約化が進むと,管理のための移動時間が削減できると考えられる。すなわち,水管理のように移動時間の割合が比較的大きい作業の省力化が期待できる。一方,畦畔管理のように圃場周辺に留まって行う作業は区画整備による作業軽減が期待できるが,集約化が進展した場合でも大幅な労力削減は期待できず,ほかの方法と合わせて検討する必要があると考えられる。

  • 大和田 辰明, 北村 浩二
    2019 年 87 巻 9 号 p. 729-732,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    東日本大震災からの復旧復興が進む福島県南相馬市においては震災前と比べて人口が大きく減少しており,水田農業地区では一部担い手への農地集積が進んでいる。今後,高齢農業者のリタイアが予想され条件不利農地では遊休化も心配される中,水管理作業の効率化や農地の有効活用のためにICTの活用が期待されている。本報では,福島県南相馬市の大規模農業生産法人の水稲作付圃場にICT自動給水栓を試験的に導入し,水管理作業の節減効果などを検証するとともに,土地改良事業によってICT自動給水栓を導入する際の施設計画・運用・維持管理にかかる課題や考え方について整理を行った。

  • 瑞慶村 知佳, 友正 達美, 長利 洋
    2019 年 87 巻 9 号 p. 733-736,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農地利用集積が進み,一つの経営体で100haを超える農地を耕作する場合,整備水準や地理的要因などで元来の圃場排水性が異なるなど,さまざまな排水条件の圃場が混在すると考えられる。このような中,農地利用集積を進め,さらには野菜などの高収益作物を導入するには,個々の圃場の排水性を定量的に評価する方法が必要である。そこで,本報では,まずオーダーメイド型整備による整備水準の複雑化について暗渠整備の事例を紹介する。その上で,転換畑における圃場排水性の新たな評価手法を提案し,将来の農地利用集積を円滑に進めるための,定量的な圃場排水性評価の活用方法について述べる。

  • 土居 邦弘
    2019 年 87 巻 9 号 p. 737-740,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農研機構ではAIとデータ連携基盤技術により生産性の向上,無駄の排除,トータルコストの縮減,高付加価値化を進めスマート農業の実現を目指している。農村工学研究部門では水管理,水利施設の防災・減災,農地整備の分野においてAIやICTを中心とした工学的技術革新をもってこれに貢献すべく研究を進めており,それぞれの分野における技術開発の現状や計画,さらに近い将来開発される技術の見通しを示し,それにより担い手に農地が集積した近未来において農業・農村がどのように変貌するのかを展望する。

  • 白谷 栄作
    2019 年 87 巻 9 号 p. 741-744,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農業のSociety 5.0では,AI,IoT等の先端技術とビッグデータの活用によって農業・農村の問題が解消され,大規模,高生産性の農業による高所得農家と安全・安心な食料が少ないフードロスで国内外に届けられる社会が想定される。現在,国その他研究機関はICT,AI等の先端技術を活用した農業技術の開発や実証事業を進めており,多様な事業者がデータを共有・活用できる環境も整いつつある。耕起・整地,田植え,水管理,農薬散布等のロボット化や直播による水稲栽培の省力化,生育予測や病害虫の診断と発生予察技術の高精度化とともに農業データ連携基盤(WAGRI)をプラットフォームとしたビッグデータの活用が始まっている。これらの技術を支える水利施設,社会制度等のインフラ整備が重要となる。

  • 松原 英治, 大平 正三, 佐古 眞三東, 松原 弘明
    2019 年 87 巻 9 号 p. 747-750,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農林水産省はIoT,AIなどの利用によるスマート農業を推進しており,灌漑水管理分野ではテレメトリ(TM)機材の低コスト化,スマート化が進み,灌漑農業が盛んな東南アジアへのわが国のTM技術の導入が推進されている。海外農業開発コンサルタンツ協会は2017年度より,タイ・チョンブリ県の貯水池とその流域に水位・雨量TM技術を導入し,タイ側の要望を受け汎用性が高く安価で安全なTMデータ受信・表示システム(ADCA System)を開発した。本システムにより,TM管理費はタイ側管理費の80~90%削減を実現した。本システムは国内にも適用できるので,低価格のTM機材開発と合わせ,従来のTM機材導入費の大幅な削減に貢献できる。

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