農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 徳永 哲也, 細川 吉晴, 首藤 美満, 熊谷 敏幸
    2020 年 88 巻 12 号 p. 991-994,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    中村 哲医師は,現地PMSを率いて2003年から7年をかけてアフガニスタン東部のクナール河に「斜め堰」と24.8kmのマルワリード用水路を建設した。これが不毛の地と化した農地やガンベリ沙漠へ「命の水」を届け,農地復旧と新開地の約3,000haに安定灌漑し約15万人の命を保障した。この堰のモデルは福岡県朝倉市の「山田堰」で,中村医師は暴れ川・筑後川の洪水に耐えてきた堰の歴史や構造・機能に学び,伝統的利水治水技術も適用し大灌漑事業を行った。「緑の大地計画」ではそのほかにも多くの堰を新設・改修し農地を復旧させ,ガンベリ沙漠の一角に農場を開拓し「自給自足の農村復興」を目指している。本報では現地訪問記録も併せ紹介する。

  • 進藤 惣治, 松原 英治, 奥田 幸夫, 泉 太郎
    2020 年 88 巻 12 号 p. 995-998,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    インドネシア国「南東スラウェシ州農業農村総合開発計画」は,農業農村工学分野として最初に取り組んだ「農民参加型」の技術協力である。日本から派遣された「専門家」と呼ばれる技術者が,現地の農民,カウンターパートである行政機関の職員とともに村の開発計画を策定し,農民の協力のもと農村インフラの整備を行い,完成した施設の維持管理や営農などを通じて農民の組織化を図り,もって持続的な発展に資することが期待された。本報では,海外村づくりプロジェクトの歩みと当時の時代背景,ODAを取り巻く状況などを振り返りながら,海外村づくりプロジェクトの教訓と今後の農業農村工学分野の技術協力において参考となる点などを整理する。

  • 北村 浩二
    2020 年 88 巻 12 号 p. 999-1002,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    わが国の農業農村工学分野の海外社会実装として,筆者のアジア開発銀行(ADB),エジプトでのJICA専門家,メコン河委員会(MRC)事務局での事例を報告する。社会実装する,わが国の優れた技術として,参加型水管理や灌漑管理移転の成功事例としての土地改良区と,農業水利施設の戦略的なストックマネジメントを取り上げる。ADBでのウズベキスタンのプロジェクトでは,ADB本部のあるフィリピンのマニラからの遠隔操作で困難が多かった。エジプトでは,相手国政府の水資源灌漑省内に常駐し,成果をあげることができた。MRC事務局では,事務局内でのデスクワークが主であったが,間接的な社会実装に貢献した。

  • 木村 健一郎, 天野 正博, 宇都木 玄, 泉 太郎
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1003-1006,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    ラオスの焼畑民は,焼畑を行っている土地と焼畑を実施した後の休閑地(二次林)を資源として活用し,焼畑での作物生産と二次林での林産物採集,狩猟を組み合わせた生業を営んできた。これまでの焼畑二次林を対象とした林産物の研究は,特定の林産物に限るものが多く,林産物利用の実態を網羅的に調査した研究はなかった。本報では,ラオスの焼畑二次林を対象に実施した林産物の採集・利用実態と経済価値の解明および焼畑二次林の樹木データベースの作成に関する研究の概要を述べるとともに,研究成果の普及・利活用状況などを確認するために行われた追跡調査の結果を紹介しながら,地域資源としての焼畑二次林の持続的な利用に向けた提案を行う。

  • 新保 義剛
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1007-1010,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    アフリカのサバンナでは,小農による天水に依存する畑作を改善するため,水利施設建設を伴わなくとも,限られた水利用と栽培技術やソフト技術とを複合させた集約的な営農が効果的である。本報では,ウォーターハーベスティングを含む節水型水利用,コンパニオンプランツの混栽技術を含む栄養改善や所得向上を目指す適切な営農手法,技術普及と持続性確立のための集団的運営体制の確立,さらに技術者や集落内構成員を対象とした合意形成手法の各技術と,これら技術を複合させた実践について述べる。実践の持続性確保と技術の確実な定着に向け,派遣専門家は側面的な支援にとどめ,現地技術者と農家との密接な意見交換による動機づけが重要である。

  • 岡 直子, 小出 淳司, 廣内 慎司
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1011-1014,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    ガーナ北部において,ため池の水を稲作への補給灌漑に利用する手法を開発することを目的とする実証研究を行い,その一環で,女性を構成員とするグループによる乾期の葉物野菜向け灌漑を試行した。その結果から,ため池の水を利用した葉物野菜灌漑は,収入向上および食生活改善に貢献する可能性があるが,課題として,①親子ため池システムの改良,②ため池の水配分についての知見の蓄積,③女性によるグループ活動の持続性確保に向けた取組みが必要であることを報告する。ため池の水を補給灌漑稲作や葉物野菜栽培に利用するための知見と経験はマニュアルに取りまとめガーナ国内に配布するとともに,研究地は先進地視察先として活用されている。

  • 北川 巌, 奥田 幸夫, 大森 圭祐, 大西 純也, 中川 進平
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1015-1018,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    営農排水改良技術カットシリーズは,畑作物の生産性を向上するための農家のトラクタ用の排水改良技術として活用されている。海外において本技術は,ウズベキスタン国とインド国の乾燥地における地下浸透促進法による除塩技術に利用された。現地のトラクタにより容易に浅層の補助暗渠を組み合わせた暗渠排水を施工でき,除塩技術として活用された。また,低平地の排水改良技術としても注目され,アフリカやアジアの農業生産の増強が必要な内戦復興国や発展途上国などの農業関係者から,導入・販売の要望が寄せられた。これらの経験から,圃場整備技術の海外展開の初期における,技術提供の方法,民間事業の課題について述べた。

  • 大橋 純, 島本 由麻, 鈴木 哲也
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1021-1024,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業水利施設に用いられているコンクリート材料の性能低下は,圧縮強度に代表される力学特性に着目した議論が行われることが多い。本報では,コンクリート・コアを対象に強度試験にAE計測を導入し,AE指標から材料特性を評価した事例を報告する。検討の結果,既存施設から採取したコンクリート・コアでは,力学特性のみでは蓄積した損傷を検出することは困難であるが,AEエネルギ指標を同時に計測・評価することで,その実態を検討することが可能であることが示唆された。同様の検討を,ひび割れに樹脂材を注入した樹脂‐コンクリート複合材について実施し,AE指標により強度指標を補完できる可能性が確認された。

  • 大内 英司, 三浦 義且
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1025-1028,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    中津山地区は,宮城県の北東部に位置し,一級河川北上川と旧北上川に囲まれた輪中地帯を受益地とした排水改良事業地区である。前歴が県営事業等のため受益面積が3,000haに満たないことから,国営事業により周辺地域を含めた新たな排水計画を構築し,地区外であった農地371haを排水の濃縮受益として位置付け,3,191haを一定地域として国営事業により実施した。また,後谷地排水機場の洪水排水ポンプは,事業計画では「縦軸形」であったが吐水槽内に堰を設けることで最低実揚程を大きくし,設備費が安価で維持管理が容易な「横軸形」に変更した。さらに,関東・東北豪雨水害を踏まえ,鶴家排水機場の水没防止対策を行った。

  • 元杉 昭男, 志村 和信, 草 大輔, 永嶋 善隆, 龍 尊子
    2020 年 88 巻 12 号 p. 1029-1033,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業農村工学会農業農村整備政策研究部会では,地方分権化を踏まえ都道府県の政策の高度化に向け,2014年度から毎年,都道府県が国の援助を受けずに自主的に実施する事業制度(県単事業)の実態を調査している。調査では都道府県間の情報交換を緊密化するため約250の事業制度の概要を明らかにするとともに,目的,ハード・ソフト事業の区分,事業形態(直轄,補助など),補助率等,事業主体,事業種区分(灌漑,圃場整備など),国の事業制度との関連,事業制度の創設年度などを数値化して収集している。本報ではそれらのデータをもとに事業の現状を明らかにし,都道府県による農村振興に資する。

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