農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 重岡 徹, 廣瀬 裕一, 吉迫 宏
    2020 年 88 巻 1 号 p. 3-6,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    近年多発する豪雨,地震などの自然災害は,農用地・農業用施設をはじめとして農村地域に深刻な被害を与えており,被災地域の農業生産や地域生活の停滞が懸念される。このことから農業農村振興施策においても早急に防災・減災対策に取り組む必要がある。本報では,2019年6月に制定された「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」を踏まえ,ため池の自主防災・減災力の向上を目指して,住民が平時からため池に関する防災・減災意識を持つためのため池保全管理活動を支援するICTを活用したツールとしてのスマートフォンを活用したため池点検管理システムについて報告する。

  • 藤原 洋一, 田中丸 治哉, 多田 明夫
    2020 年 88 巻 1 号 p. 7-10,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    Google Earth Engineは,大量の地球観測衛星データを可視化,分析できるクラウドベースのデータ解析プラットフォームである。本報では,スーダン・ガッシュデルタにおける洪水灌漑地区を対象として,年ごとの耕作状況を把握するためにGoogle Earth Engineを利用して土地利用解析を行った。土地利用分類のためのトレーニングエリアを用意すれば,衛星画像を一切ダウンロードすることなく,分類のための決定木を構築でき,年ごとの耕作エリアを把握することができた。計算時間に着目すると,1年間の解析であれば数秒,6年間の解析であっても十数秒で完了した。今後は,このようなクラウドベースの衛星データ解析プラットフォームが衛星データ解析の主流になると予想される。

  • 芦田 敏文, 友松 貴志, 庄 直樹
    2020 年 88 巻 1 号 p. 11-14,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    担い手への農地集積と地域の農地利用最適化のため,農地情報の見える化が推進され,そのツールとして地理情報システム(GIS)が用いられている。GISに実装する農地情報の収集は,市町村の農業委員会によって担われている。そこで2016年から,農業委員会が行う農地一筆調査の効率化に寄与するため,タブレット上で動作する既存のモバイルGISの現場適用を検討し,2018年に主に調査結果データの入力機能を強化したモバイルGISアプリ「iVIMSγ」を開発した。本報では,当アプリの特徴・機能を紹介するとともに,利用状況調査における普及に向けた一連の取組み過程と現段階の状況を踏まえ,今後の普及に向けた課題を考察した。

  • 新村 麻実, 鈴木 翔, 坂田 賢, 友正 達美
    2020 年 88 巻 1 号 p. 15-18,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    圃場水管理システムの実証試験における水管理ソフトウェアの使用実態について聞取り調査を行った。その結果,ソフトウェアを通じて意図した水管理がおおむね実現できたと利用者は感じており,ソフトウェアの有効性が示されたが,操作性や効率に対しては改善を望んでいた。利用者は水位設定の簡素化と見やすさの向上を求める一方,表示内容のニーズについては意見が分かれた。利用者により求める情報は異なり,細やかな水管理に適応させた機能の増設は,必ずしも利便性の向上につながるわけではないことが示された。さらに,利用者の使用状況は異なり,より高い操作性や効率のためには対象を絞ったソフトウェア開発が必要であることが明らかになった。

  • 廣住 豊一, 德本 家康, 坂井 勝, 西脇 淳子, 加藤 千尋, 渡辺 晋生, 塩澤 仁行, 溝口 勝
    2020 年 88 巻 1 号 p. 19-22,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    情報通信インフラの高速化により,動画やゲームなどの利用は日常的なものとなった。新学習指導要領でも情報通信を活用した学習活動について言及され,今後,デジタル教材開発が重要なものとなる。土壌物理研究部会では,3年にわたり科学技術振興機構支援事業「復興農学による官民学連携協働ネットワークの構築と展開」を実施し,将来世代に対する放射線教育活動を推進してきた。本事業では,子供向け放射線教育のためのデジタル教材について検討し,本事業で制作した放射線教育ポスターをもとに,タブレット端末で動作するデジタル絵本を開発した。本報では,本事業で開発した放射線教育のための子供向けデジタル絵本アプリケーションについて報告する。

  • 山岡 賢, 中村 真人, 折立 文子
    2020 年 88 巻 1 号 p. 23-26,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    メタン発酵の残渣である消化液は,窒素などの肥料成分を含有し,農地還元することが望まれる。しかし,消化液は,90%以上が水で嵩張り農地に輸送・散布する労力は化学肥料に比べて非常に大きい。消化液の農地還元を円滑に行うためには,メタン発酵施設の建設計画の段階から消化液を農地還元するための輸送・散布計画の検討が必要である。筆者らは,消化液を農地に輸送・散布するために必要な人員や車両の数,消化液の貯留槽の容量などを計画段階で算定するシミュレーションモデルを開発した。その後,同モデルは,利便性の向上に向けてソフトウェア会社に発注・改良されるとともに,機能や使用方法はマニュアル(全95ページ)にまとめられた。

  • 渡部 恵司, 細川 晴華, 中田 和義, 嶺田 拓也, 小出水 規行
    2020 年 88 巻 1 号 p. 27-30,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    近年では魚などの生息環境に配慮した農業水路が全国でつくられているが,水路が魚にとって棲みやすいかどうかを判断する方法は今までになく,環境配慮の取組み効果の確認や棲みかとして改善すべき箇所の抽出が難しいことが課題である。そこで筆者らは,水路における魚の棲みやすさを簡単な操作で解析・評価できる「魚の棲みやすさ評価プログラム」を開発した。プログラムを用いた評価では,現地で調べた魚の採捕および水路環境のデータから,水路の区間ごとの相対的な「魚の棲みやすさ」を5段階で指標化する。本報では,プログラムおよび現地調査の概要を紹介するとともに,2地区への適用事例を通してプログラムによる評価結果の妥当性を示した。

  • 倉田 進, 平井 亨弥
    2020 年 88 巻 1 号 p. 31-34,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    九頭竜川下流地区の水管理システムは,「重要施設」では,有線回線を用いた従来型の「オンプレミス型水管理システム」を導入し,「通常施設」では,ASP事業者が提供するソフトウェアによるクラウドサービス(SaaS)を活用した新たな「クラウド型水管理システム」を開発・導入した。本報では,本地区の水管理システムの概要とともに,「クラウド型水管理システム」の検討課題と現在の整備状況,再検証について述べる。今後の展望として,「クラウド型水管理システム」の技術的検証と更新整備,水利用の「見える化」を通じた農業水利システム全体の効率化・高度化に向けた検討,IoT,ビッグデータ,AIなどの最先端の情報通信技術(ICT)を活用した農業農村整備事業への展開を提案する。

  • 木村 延明, 吉永 育生, 関島 建志, 安瀬地 一作
    2020 年 88 巻 1 号 p. 35-38,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業の効率化のためにAIが注目を集める中,低平地の排水管理を行うためにデータ駆動型の人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルの導入が試みられている。ANNモデルの学習・予測は大量のデータが必要であるが,十分な観測データを有しない低平地の排水管理にも同モデルを導入するために,2つの方法を提案する。1つ目は,人工的に模擬観測データを生成したものを用いてANNモデルの学習・予測を行う方法である。2つ目に,画像処理で用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の転移学習を利用する方法である。これは,大量のデータを有する排水管理で学習したCNNを,少量のデータのみ有する排水管理に転用する方法である。

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