農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 嶺田 拓也, 中井 克樹, 林 紀男, 丸井 英幹
    2020 年 88 巻 11 号 p. 887-891,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
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    特定外来生物に指定されている植物のうち,ナガエツルノゲイトウやオオバナミズキンバイは大群落を形成し利水・排水障害を引き起こし,農地に定着すると雑草害をもたらす侵略的水草である。これらの対策として,広大な水域に繁茂した群落には建設機械や作業船,小規模群落にはジェット水流を用いた除去が有効である。また,ため池法面などには,遮光シートによる群落の抑制,水田内の群落に対しては除草剤による化学的防除も一定の効果がある。侵略的水草がまん延する前に水路や農地への侵入を抑制するため,灌漑システムが経路となる場合,給水栓への侵入防止対策も効果的と考えられた。これらの各手法について,適用場面や課題を整理した。

  • 浅井 俊光, 藤川 智紀, 竹内 康, 中村 好男, 鈴木 伸一
    2020 年 88 巻 11 号 p. 893-897,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    オオカナダモ(Egeria densa Planch.)は南米原産の沈水植物で,近年,在来種への影響や農業用水路内での通水阻害などが問題視されている。筆者らは,2018年度より「オオカナダモ発生抑制対策検証事業」として,神奈川県県西地域県政総合センターより業務委託を受け,神奈川県小田原市の鬼柳堰において,人件費や労力を必要としないオオカナダモの駆除方法の開発を続けてきた。本報では一連の実証実験の中から,実際に農業用水路内に繁茂したオオカナダモに対して,遮光率が85~90%,95~98%の2つの遮光ネットを使用し,茎部引張強度の低下や葉色の変化,枯損,株の消失などの駆除効果が認められた結果について報告する。

  • 中嶋 佳貴, 藤井 清佳, 沖 陽子, 中田 和義
    2020 年 88 巻 11 号 p. 899-902,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    岡山県南部の早島町では,特定外来生物ブラジルチドメグサ(Hydrocotyle ranunculoides)が2007年に初めて確認された。2019年に分布状況を調査した結果,JR早島駅近くの農業用排水路で群落が最も多く確認された。防除方法について,機械的防除法の後,護岸の土表面に局所的に残存する茎切断片を生分解性資材の藁コモで被覆することで群落の再生を防ぎ,省力的かつ環境に優しい物理的防除法として活用できる可能性を確認した。また,群落下の魚類および甲殻類を採捕した結果,絶滅危惧II類のミナミメダカやゼゼラの生息が確認された一方で,特定外来生物のブルーギルや緊急対策外来種のアメリカザリガニの生息空間としても機能していることが確認された。

  • 宗岡 寿美, 木村 賢人, 辻 修
    2020 年 88 巻 11 号 p. 903-907,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    北海道の水路法面保全と外来草本植物を用いた法面緑化に関する課題を整理し,地域性種苗を含む5種類の草本植物の生育状況および根系を含む土供試体のせん断特性に関する実験結果をもとに法面保全効果を定量評価した。施工限界期を前倒して播種した生育1年目の根系を含む土供試体はクサヨシ・トールフェスク(TF)で粘着力cが顕著に増大し,クサヨシ・ハードフェスクではせん断抵抗角φが増大した。生育2年目には5種類で法面保全効果が高まった。周辺環境に調和した保全効果の高い今後の法面緑化を進める上で,外来草本植物の適正管理への留意点として,混播の必要性,TFの効果と代替種の検討,水路機能の確保および作物の生育阻害対応があげられた。

  • 早瀬 吉雄
    2020 年 88 巻 11 号 p. 909-913,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    鬼怒川・小貝川流域では,都市・工業団地の開発,耕作放棄など,地域社会環境の変化に伴って,流域の水環境も変化してきた。各種データの揃った2014年を対象に,全流域の窒素収支を検討した結果,大気の窒素負荷による流出量2,010tは,全窒素負荷流出量の35%を占め,農畜産業,商工業などの人間活動に伴う窒素負荷流出量3,662tは,65%である。水田255km2の負荷は,施肥の適正化により全体の5%であり,湛水稲作は環境負荷の少ない最適な食料生産の生態系である。

  • 鬼丸 竜治
    2020 年 88 巻 11 号 p. 915-918,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    大規模・小規模経営の組合員に二極分化した土地改良区で水利施設の更新事業を目指す場合,従来の一人一票では,人数の多い小規模組合員の意見が反映されやすい。ところが,彼らには更新事業を延期させようとするインセンティブが働く余地があると言われている。そこで,適時な更新事業に向けた意思決定方法を,先行研究の知見をもとに分析した。その結果,①大規模組合員の意見を適切に反映させるため,議決権数や選挙権数の決定方法を,面積要件を付加する方法に変更する,②その際,不平等感に起因する組合員の労力・費用負担意欲の低下を防ぐため,「農地面積を換算した議決(選挙)権数の総和」と「組合員数を換算した議決(選挙)権数の総和」を等しくすることを示した。

  • 川島 秀樹, 堀田 善之, 多田 和彦, 竹沢 良治
    2020 年 88 巻 11 号 p. 919-922,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    富山県は耕地面積に占める水田の割合が高く,古くから基盤整備を推進してきたことから,農業用水路が農村の隅々にまで張り巡らされており,農業生産に必要不可欠であるばかりでなく,地域住民にとっても身近な生活環境となっている。その一方で,農業用水路における転落死亡事故が多く発生していることから,有識者による「富山県農業用水路事故防止対策推進会議」を設置し,ソフト・ハード両面から事故防止対策について総合的な検討を進め,先般,「富山県農業用水路安全対策ガイドライン」を策定した。今後,ガイドラインに沿って,行政,関係団体や地域組織等が連携した安全対策を進めることとしており,その概要について報告する。

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