農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 遠藤 和子, 唐崎 卓也, 芦田 敏文
    2020 年 88 巻 3 号 p. 189-192,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    新規就農が活発化する中,就農を支援する取組みも多様化している。調査した事例での取組みを整理すると,支援内容は農業指導が中心ではあるが,就農時の農地取得や販路の確保において機能を発揮しており,生活基盤の確保,コミュニティへの受容など多岐にわたることが明らかとなった。支援を実施する主体については,自治体や農業公社等の公的な主体,JA,商業・観光等の他業種,農業者同士のネットワーク,地域協議会などバリエーションに富んでおり,かつ主体間の連携がみられた。なかでも,自治体や農業公社等の公的セクターとJAが連携することで,新規就農者の定住や就農後の販売先の確保までを含めた支援を行い,効果を上げていた。

  • 藤崎 浩幸, 齋藤 朱未
    2020 年 88 巻 3 号 p. 193-196,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    青森県弘前市周辺における就農に関して,2007年に実施した農業者子弟を中心とする就農意識調査では,過半数で子全員が就農しなくても仕方ないという意識を有し,自らの適性を考慮し就農を考えていた。また,同時に同地域において行った就農事情の聞取り調査からは,50,60歳代では家業を継ぐ就農であるのに対し,若手では職業として農業を選択している傾向がうかがえた。2018年に実施した農業への新規参入者聞取り調査からは,多様な契機で農業への関心が目覚め,各種の支援策を活用し,農地は主に借地で,機械設備等は購入して就農する傾向があった。今後は,農業者子弟以外の継業を促進するため農場バンクといったシステムやコーディネーターの充実が求められるものと考えられる。

  • 木下 幸雄
    2020 年 88 巻 3 号 p. 197-200,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業の労働力不足問題を外国人旅行者などの農村外からの人材の呼び込みによって解決することを目指し,全国規模の職業仲介システムを展開しているオーストラリアの事例を取りあげ,季節的農業労働力調整システムの仕組みと運用実態を報告する。オーストラリア政府は,農業者が安定した農業労働力を確保できるようさまざまな取組みを行ってきた。たとえば,地域ベースの収穫労働仲介事業,全国ベースの収穫労働情報提供事業,ハーベスト・トレイルの展開,ワーキング・ホリデー制度の規制緩和などである。日本農政も農業労働力の確保に本腰を入れる時期に来ており,現場動向を捉えつつ社会的な農業労働力ネットワーク・システムの整備を検討すべきである。

  • 甲斐 貴光
    2020 年 88 巻 3 号 p. 201-204,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    日本の農業は,今後も高齢農業者のリタイアが増加すると見込まれることから,荒廃農地や後継者のいない農家の農地において,担い手による有効活用を図るとともに,将来におけるわが国の農業を支える人材となる青年層の新規就農者を確保し,定着を促進させることが喫緊の課題となっている。本報では,長野県長野市のリンゴ園へ新規自営で就農し,リンゴ有機JAS認証を目指す販売農家と,伊那市のリンゴ園へ新規自営で就農し,リンゴ有機JAS認証を取得した販売農家への聞取り調査に,リンゴ園土壌の分析結果を併せて,新規就農者の現状と課題について紹介する。

  • 岩﨑 史, 鈴木 純
    2020 年 88 巻 3 号 p. 205-208,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農村において,新規就農者や移住者が新しい農地の担い手として期待される一方,農業開始時に直面する課題も多く,継続に困難を来している。本報では,地域の耕作放棄地の増加に問題意識を持った高校生が,10年間不作付けだった狭小農地の再生と利用に挑戦した実践をまとめ,山間農業地域の農地利用で新規就農者が直面する課題と,農地活用の可能性を検証した。また,山間農業地域の新規移住者や農業研修参加者には,「農ある暮らし」や小規模な農地への関心が高い傾向が見られた。中山間地域での新規就農促進には,小規模な農地の活用につながる計画や,構造的・人的支援が有効と考えられ,地域の協力をもとにさらなる受け入れ態勢の整備が求められる。

  • 山下 正
    2020 年 88 巻 3 号 p. 211-214,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業競争力強化には農薬や肥料のコスト削減が求められているが,このコスト削減には農薬や肥料の価格の引き下げだけではなく,その使用量の削減が必要と考えられる。しかし,農薬や肥料の使用量と基盤整備や法人経営体との関係についての分析はいまだ充分に行われていない。そのため,基盤整備率と農薬や肥料の使用量との関係および基盤整備率や法人経営体数の農薬や肥料の使用量に対する影響について分析した。その結果,基盤整備率が高い都道府県ほど農薬や肥料の使用量が少ない傾向が見られた。また,基盤整備率は法人経営体数よりも農薬使用量に与える影響が大きい傾向があることが明らかとなった。

  • 齋藤 晴美, 橋本 晃
    2020 年 88 巻 3 号 p. 215-220,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    東南アジア諸国の中でもとりわけ経済成長が著しいタイでは,農業や土地改良の分野でも大きく発展し続けており,農地に関する法律が備えられている東南アジア諸国の中でも,圃場整備事業実施手続きを定めた法律を有するのはタイのみである。本報は,タイの土地改良法制の歴史を振り返るとともに,2015年に新たに制定された農地整備法制度の経緯とその概要について報告する。

  • 栗橋 英德, 落合 博之, 髙松 利恵子, 長利 洋
    2020 年 88 巻 3 号 p. 221-224,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    生産効率を高めるための大区画水田では,面積が大きくなるにつれ速やかな湛水排除が難しくなるという課題がある。この対策として,土中の過剰水と地表残留水の排除を目的とされてきた暗渠を湛水排除に利用することを検討し,コンピュータシミュレーションを用いてその効果を確認した。解析した水田区画は30aを対照区とし,1ha,2ha,3ha,6haとした。その結果,暗渠を湛水排除に利用することで,排水速度の向上および排水終了時の残留水量の低減といった効果が期待できることを得た。これにより大区画水田において,速やかな湛水排除のため,暗渠を積極的に利用することを提案する。

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