農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 浅野 勇, 川邉 翔平, 金森 拓也, 高橋 良次
    2020 年 88 巻 6 号 p. 459-462,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業水利施設のストックマネジメントの中でも補修・補強に関する問題と課題は多く,実際の実務に携わる技術者がこれらの内容を網羅的に理解することは難しい。本報では,開水路を中心に補修に関する基本理念と現場の技術者に把握してほしい現状の問題および課題,そして今後必要な技術開発の方向をまとめて示す。

  • 中井 雅, 高島 攻治, 有働 卓, 浅野 勇, 森井 俊廣
    2020 年 88 巻 6 号 p. 463-466,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    「農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【鋼矢板水路腐食対策(補修)編】(案)」(2019年9月制定)に基づき,自立式鋼矢板を対象に,腐食が生じた場合の構造性能の評価方法を提示した。鋼矢板に生じる曲げ応力度ならびに矢板頭部の変位量を照査すべき構造性能として,その性能評価に当たって,腐食に伴う板厚減少ならびに鋼矢板に特有かつ往々にみられる開孔・断面欠損部の影響を考慮できるようになっている。補修工法として有機系被覆工法およびパネル被覆工法により被覆防食を施工した場合の構造性能の評価試算例を示すとともに,矢板壁部背面を含め地盤土に接する部位の腐食速度を合理的に設定することが重要であることを確認した。

  • 上條 達幸, 森 丈久
    2020 年 88 巻 6 号 p. 467-470,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    コンクリート開水路の補修工事では,「農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路補修編】(案)」の品質規格に適合する材料・工法が使用されている。しかし,これらの適合品を用いて標準的な施工を行ったにもかかわらず,初期欠陥の発生や所定の性能が得られない事例が見受けられる。また,最近では高耐候性や高耐久性と称する材料・工法の提案,さらにマニュアルに品質規格や期待される補修効果の期間が示されていない材料・工法での設計・施工事例も散見される。本報では,コンクリート開水路の主要な補修工法について,対策工法として検討する際の留意点を述べるとともに,工法選定における望ましい性能照査方法を提案する。

  • 川邉 翔平, 浅野 勇, 金森 拓也, 高橋 良次
    2020 年 88 巻 6 号 p. 471-474,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    膨大なストックを有するコンクリート開水路では,無機系表面被覆工法による補修が多く採用されている。実際の農業用水路に施工された無機系表面被覆工法には,その性能に大きな差が見られる場合がある。本報では,実際に施工された無機系表面被覆工法を対象として,筆者らの実施してきた現場での摩耗量モニタリング,原位置での付着強度試験の結果を示し,モニタリングの重要性を示す。

  • 長谷川 雄基, 谷村 成, 山本 昌宏, 高橋 慶吉, 佐藤 周之, 長束 勇
    2020 年 88 巻 6 号 p. 475-478,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,同一補修工法で施工された計73現場の無機系被覆工法・ひび割れ充填工法の追跡調査結果を整理し,施工やメンテナンスにおいて留意すべき課題をまとめた。追跡調査の結果から,無機系被覆工法では,全体的に被覆材のひび割れ,浮き,摩耗等の変状は少なく,良好な状態であるケースが多いことが確認された。一方,ひび割れ充填工法においては,補修後の時間経過に伴いシーリング材の劣化が頻発することが確認された。また,経年劣化により弾性が低下したシーリング材近接部では,被覆材のひび割れや浮き等の変状が生じるケースが多いことがわかった。

  • 西田 真弓, 石神 暁郎, 緒方 英彦
    2020 年 88 巻 6 号 p. 479-482,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    寒冷地のコンクリート開水路の凍害劣化は,耐久性を支配する重要な問題であるため,劣化要因である水分の侵入抑制を期待できる表面保護工法の適用が進められている。本報では,表面保護工法適用後の補修効果の検証を行うため,供用中のコンクリート開水路を対象に,既設および新設コンクリートに表面保護工法が施工された側壁からコアを採取し,凍結融解試験と含水率測定を実施した。この結果に基づき,表面保護工法適用に際して,①表面保護工法適用後のコンクリートの凍結融解試験の実施,②耐凍害性の要求性能への凍結融解試験後の遮水性および付着性の規定,③モニタリング調査における母材コンクリートの含水状態の把握,の3点を提案した。

  • 有田 博之, 郷古 雅春
    2020 年 88 巻 6 号 p. 485-489,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    大規模災害の復興において被災者の生活再建が最終目的となるが,長い期間が必要である。復興対策においては,農家の意向,現場の状況によって採るべき対策は有機的に組織化する必要がある。災害復興の研究分野では,阪神淡路大震災以降,組織的な研究対応が進められているが,農業農村整備分野でも土木的な技術側面とともに,段階的な農家・農村の状況に対応したソフト対策についての経験の蓄積が必要である。復旧現場,農家・農村が抱える意向・状況への課題等の基礎情報を得る手段としてアンケート調査は有効な手段の一つである。今後の取組みにおいては,組織的・継続的なアンケート調査を実施し,当該災害の復興に役立てるほか,経験の蓄積による将来の災害時への備えについて提案した。

  • 山下 正, 瀧川 拓哉
    2020 年 88 巻 6 号 p. 491-494,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    平成30年7月豪雨によって,広島県では23カ所のため池が決壊した。他方,ため池の決壊に影響を及ぼす要因と優先的に防災対策を行うべきため池を検討することは,今後の防災対策に役立つと考えられるが,これまで定量的な検討は十分に行われていない。そのため,ため池の現地調査により要因を推定した上で,決壊の確率を従属変数とするロジスティック回帰分析を行い,要因とため池の選定方法などを検討した。その結果,堤高が高いこと,直近50年間に改修を行っていないことは,ため池の決壊をもたらす主な要因であり,後者の方が前者より影響が大きいとの結果が得られた。また,分析で得られたロジスティック回帰式に個別ため池のデータを導入して算定される,ため池が決壊する確率の大きさも参考として,優先的に防災対策を行うため池を選定することも有効である。

  • 岩屋 照実, 松田 貢一, 森本 祥之
    2020 年 88 巻 6 号 p. 495-499,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    昭和33年,鹿児島県大隅半島の肝属川左岸に広がる保水性の乏しいシラス台地にわが国最初の国営畑地かんがい事業「笠野原地区」が開始されてから約60年,肝属川右岸に広がる「肝属中部地区」においても,畑地への新規農業用水確保のため一級河川肝属川水系に荒瀬ダムを築造するとともに,ダムから地区内へ導水する幹線水路および支線水路を整備することにより,安定的な農業用水が確保され,単収の増加,高収益作物への転換,品質の向上および省力化による農業の生産性向上と農業経営の安定が図られることとなった。本報では,22年の歳月をかけて整備が進められてきた本事業の中で,①荒瀬ダムの設計・施工上の変更点,②ダムおよび用水路の水管理システム,③ダムによる水位差を利用した小水力発電,④ファームポンド管理用道路施工中の特殊土壌対策等について報告する。

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