パンデミックにより新しい働き方が求められるようになり,都内企業のテレワーク実施率が半数を超えるなど大きな変化が生じた。東京都区部人口は2020年7月以降継続的に転出超過であり,多くが隣接地域に吸収されている。都区部の勤務者を対象としたWebアンケート結果によれば,緊急事態宣言後,出勤のみの勤務形態は約半数とテレワークによる勤務が普及した。回答者の14%が何らかの形で郊外での生活を希望し,地域の環境整備や農業支援への参加意向では半数弱が参加を考えている。このような流れを受け,都市近郊農村では,居住地として選択してもらうための条件整備や地域資源管理への参画を実現する方策を準備する必要がある。
新型コロナウイルス感染症の土地改良区への影響を把握するため,福島県と宮城県に対して緊急アンケートを実施した。新型コロナウイルス感染症により,土地改良区は人との接触が必要な業務(総代会,国・県・市町村との会議,研修会および地域住民との交流会)を中止していた。土地改良区の約7割はこうした活動の変化を負の影響と捉えていた。With/Post・コロナ時代では,ワクチンが行きわたるまで感染予防を徹底した上で作業に従事することが望まれる。また,土地改良区の運営や業務に有効なテレワークのシステムの導入,また今後,顕在化する可能性がある未収賦課金の増加や業務の外部委託などに対しては,適切な公的支援が不可欠である。
山間農業地域の対象地は,人口減少と農業の担い手不足が課題となり移住促進に取り組む。地方暮らしへの関心が高まるWith/Post・コロナを背景に,多様な担い手と地域農業をつなぐ取組みが求められる。2020年に都市交流を目的にオンライン開催された地域の農業講座は申込者が前年の2倍を超え,その1割を占める移住希望者は,農業への多様な関わり方に関心を持つ傾向があった。地域の農地調査と,移住者が実践する農業から,対象地における農地活用のあり方を検討した結果,所有問題を解決した住宅と農地の整備を進め,地域農家に学ぶ実践圃場の設定や,多様な担い手と営農組織が連携する農地の活用が有効であると結論づけられた。
コロナ禍により,アフリカではWFP推計で2億6,500万人が食糧危機にさらされ,小規模共同体農家(小農)への影響が懸念される。主たる要因は,私たち日本人が日常口にするコーヒー等換金作物主体農業を小農が営み,メイズ等穀物栽培が蔑ろにされて家庭の食糧安全保障が確保されていないためである。私たちの日常生活と小農の農業が直結しているのがグローバル化時代である。そこで,コロナ禍でも家庭の食糧安全保障を確保しSHEP導入により収益向上に資しているニャコンバ地区を,来るTICADVIII(2022年,チュニジア)で発信・提示していくことが,コロナ禍における小農の農業のあり方の参考になると考える。
平成28年熊本地震では,震源から約10km付近に位置する国営完了地区の一部幹線水路において,空気弁14カ所の案内が破損した。本報では,その原因が,地震動により遊動弁体が短時間に動かされることで発生した衝撃的な圧力であるとの仮説を,端部を閉塞した塩化ビニル管(口径100mm,長さ10m)に空気弁(口径75mm)を設置した模型管路を作成し,振動実験により検証した。その結果,負圧により遊動弁体が降下し,直後に正圧に戻った際に遊動弁体は上昇して,空気弁内に水撃圧が発生することを確認した。この時,案内の内側と外側に圧力差が瞬間的に生じることで,案内に大きな負荷がかかり,破損したと推察される。
富山県内における農業用水路への転落死亡事故は,近年,年間20件程度で推移し,なかでも65歳以上の高齢者が約8割を占めている。このような状況を踏まえ富山県では,令和元年に転落事故防止対策を「富山県農業用水路安全対策ガイドライン」として策定するに当たり,労働災害の防止等で広く用いられているヒヤリハット活動を活用し,県内約2,000人を対象に軽度の転落事故や無傷害のヒヤリ,ハッとした事例等についてアンケートを通じて把握・分析を行った。転落に至る行動やきっかけなどの原因,高齢者の転落事故に対する意識を踏まえ,地域における安全啓発・安全点検,高齢者に対するリスクコミュニケーションに活用できることを指摘した。