農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
89 巻, 8 号
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  • 川邉 翔平, 森 充広, 高橋 良次, 金森 拓也
    2021 年 89 巻 8 号 p. 557-560,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    国土強靭化のためには,被災後に速やかに従前の機能を回復する必要がある。「令和2年7月豪雨」では,各地で大きな被害が生じた。本報では,南九州地方の被災状況等調査を通じて得られた知見を共有する。水路トンネル坑口や開水路部では土砂堆積が見られ,内部が確認できない状況であった。また,ドローンが有効活用されていたが,山間部に位置する施設ではその効果が十分に発揮することは困難なこともある。水路トンネルでは,坑口の場所や覆工の有無などの情報が不十分であった。これらから,安全に迅速な復旧のために,狭隘・不可視領域の状況把握技術,UAVを補完する技術,確実な施設情報継承のための仕組みの必要性が確認できた。

  • 吉迫 宏, 眞木 陸, 正田 大輔, 小嶋 創, 竹村 武士
    2021 年 89 巻 8 号 p. 561-564,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    ため池の洪水調節効果を農用地の排水対策や河川の治水対策で活用するためには,効果の度合や特徴を定量的に把握する必要がある。そこで,降雨継続時間や降雨ピーク出現時刻に代表される降雨特性を総雨量や時間雨量で表される降雨強度とともに確率的に扱い,洪水調節効果の評価を行う手法を提案した。また,兵庫県高砂市A池において提案手法を試行した事例を紹介した。提案手法では,計算モデルを用いて流域からの流入量の区分最大値を求め,この時の一連降雨を用いて洪水吐等からの放流量の最大値を求める。評価は流域流入量の区分最大値の超過確率とこの区分最大値,ならびに洪水吐等からの放流量の最大値について散布図を作成して行う。

  • 持永 亮, 樋口 俊輔, 北川 巌, 皆川 裕樹
    2021 年 89 巻 8 号 p. 565-568,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    最近,豪雨災害が各地で発生し甚大な損害を与えている。農業分野における洪水緩和策には,水田への雨水貯留機能を活用した取組みとして,水尻に堰板を設けることで雨水貯留機能を高める田んぼダムの取組みがある。近年,さまざまな形状や仕様の,水位や排水量の調整可能な水位調整器による田んぼダムの取組みが推進されており,河川や排水路への排水量の抑制と下流域への洪水被害の軽減効果が期待されている。これまでの田んぼダムの効果評価の研究では,圃場スケールでの実測による効果評価の報告が少ない。本報では,福岡県宝満川の上流に位置する水田で実施した,田んぼダムの圃場スケールでの雨水貯留機能の発揮効果の観測事例を紹介する。

  • 正田 大輔, 吉迫 宏, 小嶋 創
    2021 年 89 巻 8 号 p. 569-572,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    豪雨時の土砂災害により,ため池の被災事例がある。本報では,土砂災害に対して堤体の被災リスクを推定するため,平成30年7月豪雨での土砂の流入による被災ため池と,比較対象とした平成26年8月豪雨での広島県内の被災ため池に対して,土石流の対策計画で算出される外力をため池諸元データに基づいて算出した。算出に当たっては,砂防事業等で用いられる計算式を用いて,流速や流体力等の値を求めた上で,既往の文献や現地踏査等で把握した現場の被災状況と比較し,得られた結果を踏まえて課題について考察した。

  • 相原 星哉, 吉田 武郎, 川本 陽介, 伊藤 久司, 上山 泰宏
    2021 年 89 巻 8 号 p. 573-576,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業用ダムにおいて新たに開始された洪水調節に係る取組みを,流域の治水安全度の向上に適切に位置づけるためには,期待される治水効果や下流への影響について明らかにする必要がある。本報では,諸元の異なる9基の農業用ダムを対象として,事前放流が実施された場合に発揮される洪水時のダム放流量のピークカット効果とその下流への波及効果について,分布型水循環モデルにより計算し,ダムの諸元や下流流域の特性,降雨条件に基づいて定量化した。ダム放流量のピークカット効果は,集水面積当たりの確保容量と降雨量により推定できること,その下流への波及効果は,下流各地点の上流面積とダム集水面積の比により推定できることを示した。

  • 岩垣 浩志, 谷口 智之, 持永 亮, 凌 祥之
    2021 年 89 巻 8 号 p. 577-580,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    近年,集中豪雨による被害への対策として,田んぼダムの取組みが注目されている。しかし,後方集中型豪雨であった平成30年7月豪雨において,越流型調整板を導入した水田からのピーク排水量が非導入水田よりも増大したという事例が報告されている。本報では,水田水収支モデルを用いて,越流型調整板と調整板下部に開口部を設けた流水型調整板の効果を比較検討した。その結果,越流型調整板は降雨初期の排水量を抑制する効果,流水型調整板はピーク排水量を抑制する効果があることが確認された。さらに,対象地域のすべての水田に流水型調整板を導入した場合,平成30年7月豪雨においても本川流量の抑制を期待できることが明らかになった。

  • 小泉 慶雄, 大野 菜穂子, 蔵本 修一, 宮津 進, 吉川 弘
    2021 年 89 巻 8 号 p. 581-584,a2
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    近年,大型台風や集中豪雨の発生頻度が増加傾向にあり,全国各地で激甚な被害をもたらす水害が毎年のように発生している。こうした中,水田を活用した洪水被害の緩和対策である田んぼダムの取組みが注目されている。新潟県の事例から農家負担の少ない落水量調整機能と田面水深管理機能の分離が可能な落水量調整装置の運用が鍵を握る。しかし,農地整備事業実施済みの場合,既設排水マスの田んぼダム用排水マスへの交換を伴う場合には多くの費用を要するため,田んぼダム普及の足枷となっている。そこで,多様な既設排水マスに簡便に設置できる機能分離が可能な落水量調整装置を新たに開発した。本報では,本装置の特徴と効果を報告する。

  • 石橋 正匡, 坂根 勇, 竹内 拓也, 田中 良和, 有吉 充
    2021 年 89 巻 8 号 p. 587-590,a2
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    平成28年(2016年)熊本地震の本震により,国営菊池台地地区のパイプラインにおいて14カ所で空気弁の案内が破損した。これらは,地震動による管内の負圧発生・圧力上昇(回復)に伴う遊動弁体の移動により空気弁内に水撃圧が発生したことが原因と考えられた。この仮説を検証した平成29年度の振動台実験では振動による空気弁内の水撃圧の発生を確認したが,より現実に近い条件で現象を再現するため,平成30年度に実験装置を改良して実験を行った。また,地震動による空気弁内の水撃圧の発生状況を数値的に再現するため,地震動(地震加速度)および空気弁の構造を考慮した数理モデルを作成し,実験結果を踏まえた非定常水理解析によってモデルを検証した。

  • 泉本 和義, 山田 敏克
    2021 年 89 巻 8 号 p. 591-594,a2
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    新潟県中越地方に位置し,3,590haを受益地とした柏崎周辺農業水利事業は,平成9年度に事業着手し,23年の歳月と総事業費499億円を以て,令和2年3月に事業完了した。本事業地区は,従来から中小河川やため池に用水源を依存しているため古くから水争いが絶えず,近年においても渇水頻度が高く,水源の新設が望まれている地区であった。そのため本事業により,地区内を流下する3河川それぞれに新設のダムを設けるとともに,既存の頭首工や幹線用水路を改修し,農業の近代化,営農の効率化を図るものである。事業完了に当たり,本報で事業の経過と地域農業の発展について記す。

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