農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
89 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 荘林 幹太郎, 木下 幸雄, 岡島 正明
    2021 年 89 巻 9 号 p. 647-651,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業水利施設ストックの減耗傾向と農業予算上の制約のもと,地域レベルでの維持管理投資・更新投資・新規投資の費用合計を徹底的に平準化する必要がある。そのためには,これらの投資をめぐる意思決定を技術的かつ長期的観点から行いうる主体の存在が不可欠である。しかし,そのような意思決定を行いうる広域の管理主体が農業水利施設に関しては存在していない実情を踏まえて,本報では広域管理主体の必要性と,その創設のための政策的課題,さらに課題への対応に関する選択肢を提示した。

  • 矢挽 尚貴, 長岡 範之, 佐々木 辰善, 松尾 秀人, 亀割 敏之, 山本 公彦
    2021 年 89 巻 9 号 p. 653-656,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業構造改革が全国に先駆けて進行している北海道では,農作業の省力化や土地改良施設の管理省力化のためのスマート農業やICT活用への関心が高まっている。旭川市の大雪土地改良区では,1990年代半ばからGISによる農地情報の整備を進め,土地改良区の業務の合理化を図るとともに,行政や農業関係機関と連携して農地情報の利活用を進めてきた。具体的には,農地集積計画の策定や人工衛星画像データを活用したコメのタンパクマップ作成,施設管理の合理化や低コスト化などを実現してきた。一方,情報の共有,共同利用のためには,行政機関における情報共有ルールの明確化や費用負担の合意形成など,解決すべき課題が存在している。

  • 八百川 朋世, 横山 林太郎, 金津谷 博一
    2021 年 89 巻 9 号 p. 657-660,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,受益地の80%近くが畑地化した地域における新たな水利用(水田,畑)計画策定において,土地改良区が果たしている役割を考察した。現在の水利権は水田用水としての利用を前提とした暫定水利権のため,河川管理者からは地域の実態に即した水利用の用途の明確化や,実際の水利用を担保する施設整備が求められている。新たな水利用計画の取りまとめにおいては,土地改良区を中心に,組合員や関係機関,地域住民を交えて一体感のある前向きな議論が展開されており,この背景には,土地改良区が持つ組合員との強い信頼関係や地域とのネットワークがある。土地改良区は,この立ち位置を活かし地域に貢献することが期待されている。

  • 小林 和夫, 水島 孝典, 岡本 英樹, 星野 健介, 鈴木 哲也
    2021 年 89 巻 9 号 p. 661-664,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,新潟県内の70土地改良区を対象にアンケートを実施し,農業用ポンプ設備の維持管理に関する実態調査を行った結果を報告する。なお,特定の3土地改良区について,さらに聞取り調査による詳細把握を試みた結果を報告する。その結果,全回答の約8割で大規模な点検整備を実施していた。そのほとんどは補助金の活用により実施していた。聞取り調査では,職員の設備に関する維持管理の技術力が,精度や効率に影響を与えることが明らかになった。これらから,さまざまな規模や実情を有する土地改良区が維持管理を効率的に行うには,組合員の負担を考慮しつつ,ICT等を活用した管理方法の構築や補助事業に関する議論が必要と考えられる。

  • 木下 幸雄
    2021 年 89 巻 9 号 p. 665-668,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    オーストラリアでは水政策改革の一環として,行政機関の一部門として運営されてきた灌漑用水供給事業を会社化し,効率的なサービス供給ができる組織に転換した。こうした灌漑事業体の会社化をめぐって,組織デザイン,ガバナンス構造,事業計画マネジメント,ベンチマーキングといった経営的特徴を明らかにする。そこから汎用的な枠組みを析出し,短・長期的な視座から日本の土地改良区の運営問題に対する示唆を論じる。具体的には,戦略的なマネジメントができる土地改良区への改革とともに,選好が異なる農業経営体が内包される組合員の,それぞれにとって合理的となるサービスの提供方法と費用負担原則を追求する抜本的な制度改革を考える。

  • 星川 圭介, 堀田 善之, 川島 秀樹, 竹沢 良治
    2021 年 89 巻 9 号 p. 671-674,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    富山県では平成21年度から30年度までの10年間で184件の農業用水路への転落死亡事故が発生している。こうした用水路転落事故の発生実態解明を進めるため,一般住民向け郵送アンケート調査と転落事故発生用水路の現場調査を実施した。この結果,農業関連作業中の転落に加え,居住地の周辺で歩行中や自転車走行中に足を滑らせたり体勢を崩したりしたことを契機に転落しているケースが多いことが明らかになった。また,流速が1.0m/sを超える水路では転落が死亡事故につながる危険性が高いことも示された。さらにこれらの結果を踏まえ,地形データ等に基づき優先的に対策を進める地域を絞り込むための検討を行った。

  • 山田 敏克, 溝口 恵美子, 小菅 達也
    2021 年 89 巻 9 号 p. 675-678,a2
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    湛水時の浸透量はフィルダムの安全管理において最も重要な観測項目の一つである。実測浸透量は,貯水池からの浸透量と貯水池以外(地山,降雨,融雪)に起因する浸透量から構成され,このうち,定量評価に必要な成分は前者の貯水池からの浸透量である。ただし,実測浸透量はこれらの成分の総計であるため,実測浸透量から貯水池以外に起因する浸透量を差し引き,貯水池からの浸透量を抽出する必要がある。本報では市野新田ダムにおける試験湛水前,もしくは試験湛水期間中の各種観測結果(実測浸透量,地下水位,降雨量,融雪量,気温)を分析し作成した貯水池からの浸透量評価モデルを用いた浸透量の定量的評価への試みについて記した。

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