水稻の移植後, 牧穫期までの蒸散量を測定し, この期間に於ける主なる氣象要素と比較吟味を試みたものであつて, 之を要約せば
(1) 移植後收穫までの総蒸散量は一株當中稻竈治に於ては約28000~31000立方糎を示した。
(2) 蒸散量は時期により大なる變化があり, 移植後50~70日内外で最大に達する。尚移植期早いものは遅いものに比して最大蒸散時期に達する事も早い。
(3) 水稻の蒸散と氣象要素との相關係數を求めたが, 日照と最も大なる相關を示し, 蒸發計蒸發量, 濕度等とも相當の相關を示した。
(4) 過去35年間に於ける移植期間内降水量1蒸散量を求めてみると, 最大降水年の降水量は蒸散量の2倍に達し, 最小降水年は0.35となる。尚35年間平均は0.97で略同等になり。昭和18年は0.80で蒸散量より降水量の方が少い。
(5) 最大蒸散時期36日間に連績旱天を假定して蒸散量を計算すれば昭和18年度の實際蒸散量よりも36.7粍内外の蒸散量の増加となる。
(6) 竈治の根付のまゝ乾物量1gを生産するに約250gの水分を必要とする事を知つだ。以上ば昭和18年一ケ年間の中稻竈治を用いて行つた實驗結果であつて, 將來尚細部に關する實驗を績ける考えである。
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