果樹園の土壤保全に関する研究の一部として, 果樹冠がいかねる程度遮断保留して, 土壤保全上効果を示すものであるかについで, 1953年5~11月にかけ行つたりんご樹冠による降雨遮断調査の結果を要約すると次の如くなる。
(1) りんご葉の附着性において, 葉面積と最大葉面保留量および落下水滴大きさの関係は, それぞれy=a+bxなる回帰直線式で示され, 非常に有意な一次的相関をなすもので, 葉面積の広くなる程, 最大葉面保留量は大となり, 落下水滴大きさは (半径約2.1~2.5mmの範囲内において) 小となつた。
(2) りんご品種間においてその葉面附着性に差があり, 印度は国光より平均葉面積・平均最大葉面保留量・平均単位葉面積当保留量等大となつた。
(3) りんご樹冠内外の雨滴構成において, 天然雨滴より樹冠内落下水滴の方が細滴頻度低く, 大滴頻度高くなり, その平均雨 (水) 滴直径は樹冠内落下水滴が天然雨滴の約1.5~2.0倍となつた。
(4) りんご樹冠による降雨遮断作用は, もちろん降雨量・降雨期間・降雨強度・樹冠群葉密度・風速・気温・濕度等各因子の影響により異なるが, 降雨量と地面落下水量および有効降雨遮断量 (樹幹流下量を含む) の間には, それぞれ非常に有意な一次的相関があり, y=a+bxなる回帰直線式で示され, 降雨量大なる程地面落下水量並びに有効降雨遮断量も大となる。
(5) 着葉期間における, りんご樹冠による降雨遮断作用には季節的発育相による月別変化がみられ, 月別平均有効降雨遮断率 (樹幹流下率を含む) は5月展葉期から8月をmodeとし, 11月落葉期に至る7ケ月間において大体正常分布曲線型の変化をなし, この間約40~70%の右効降雨遮断率を示した。これは主として樹冠群葉の展葉・生長・落葉、あるいは袋掛・果実増大・収穫等の因子による樹冠密度の増減によつたものと考察される。
(6) 降雨量と有効降雨遮断率 (樹幹流下率を含む) の間には非常に有意な二次的相関があり, その理論値は, y=a+br+cx
2なる曲線回帰式で示され, 逆J字型分布の抛物線をなす。すなわち比較的弱雨の頻度高い場合においては降雨量の増大にしたがつて, りんご樹冠による着葉期間の有効降雨遮断率は二次的関係で漸減するものといえる。なお全平均有効降雨遮断率は56.3%である。
(7) 降雨量階級別有効降雨遮断率 (樹幹流下率を含む) も同じ様に大体逆J字型の抛物線的変化を示し, 階級別降雨量の増加にしたがつて有効降雨遮断率が漸減する夢この際約10~80%の平均有効降雨遮断率を示す。(8) りんご樹冠による降雨保留能には季簿的発育櫛による変化があるが, その平均降雨保留能は大体0.8mm以上となるものと推察できる。
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