(1) 発電用貯水池9箇所の夏期水温垂直分布について筆者が主として昭和25年以来観測したもの, およびその他の各方面で観測された結果を取纏めて考察を加えた。
(2) 発電用貯水池内の夏期の水温は水深によつて相当変化はあるが, 潅漑用貯水池や天然湖沼の場合ほど著しくはない。
(3) 水温傾度のやや大ぎい層が表面の近くと, 取水口の下方との2ケ所にできる場合が多い。しかし, その水温傾度は普通に水温躍層と名付けられる程度のものは割合少い。
(4) 流域面積あるいは流入水量の割に貯水容積が小さいもの, すなわち水が池内に停滞する日数が少いものでは, その多いものに較べて一般に上下層の水温差が少い傾向がある。
(5) 貯水池から取出し発電に利用した後に放流する水の温度は, 一般にその時池に流入している水の温度よりも低い。但し8月の下旬から9月にかけて池水位が著しく低下した場合には (あるいは低下後再び水位が上昇した場合) 流入水より高温な水を放流することもある。
(6) 7月終りまたは8月初め以降の潅漑用水の温度が低いと稻の収量に著しく悪影響があるといわれている。その頃貯水池の水位は一般に高いから下層水を放流すると, 稻作上支障を来たす惧れがあるから, 取水口の数を増加して上層の水から取出すような装置を施すべきである。
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