これまで農村に建設・継承されてきた膨大な農業水利資産は, 農業農村の持続的な発展を支える基盤として大きな役割を果たすとともに, 国土保全や環境保全の面で公益的な機能を発揮してきました。今後とも, これらの水利施設の機能を持続的に発揮させるためには, 適時, 適切な整備・補修, 更新を行うことにより, 現況の施設の機能や安全性等を確保しながら, 効率的に運用をはかっていくことが重要となってきます。このためには, 施設の老朽化の程度とそれに対癒した更新の時期を的確に診断する技術的・経済的手法を確立するとともに, 維持・更新のための最適な設計・施工技術を体系的に整備していくことが必要とされています。しかし, このような課題に向けての取組みが本格化し始あたのは、食料・農業・農村基本計画策定を契機としたごく最近のことであり, 十分な経験が蓄積されていないことばもちろん, 行政, 技術, あるいは経済等の各面にわたって多くの解決すべき問題が指摘されていまず。
そこで, 学会誌編集委員会では, 現時点での進捗状況と課題を整理することを目的に, 水利施設の老朽化診断, 水利施設の維持・更新, あるいはこれら両者にまたがって現在進められているプロジェクトやすでに実施された事例, 技術開発の動向等を小特集として紹介することを企画しました。本小特集が, 今後の取組みに必要な情報交換の契機になれば幸いと考えます。
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