今日, 国際的に水に対する関心が高まる中で, 最大の水使用者である農業の水利用とその水政策のあり方が問われている。本報では, 灌漑の水価格決定の理論的側面について考察し, フル・コスト回収原則による水価格の決定について論じる。
一方, OECD諸国において, フル・コスト回収原則を適用している国は少ない。多くの国は, 地理, 気象, 営農, あるいは社会的条件等を考慮して維持管理費用と固定費用の一部の回収を目標としている。フル・コスト回収原則の適用は,(1) 対象とする「水費用」の構成要素の明確化,(2) 灌漑の親水, 景観形成, 集落用水などの外部経済の評価,(3) 計測のための多額な費用問題などについての解決策が取られない限り困難である。
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