産学連携学
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12 巻, 2 号
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特集 研究支援・産学連携実務者の現在と今後の展開
  • 澤田 芳郎
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_1-2_10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    日本で「研究支援」の語が使われるようになるのは1970~80年代だが,それが意味する現象や概念は多様である.よって分析するにも歴史を追うにも,あらためて対象を定めなければならない.文部科学省の現在のURA定義に照らせば,産学連携や知財管理を含めて歴史をカバーする必要がある.では,そのどこに「研究支援」が注目されなければならない契機があったのか.本稿ではほぼ30年にわたるわが国の研究支援史を社会史としてふりかえる.科学に貢献したい研究支援職に対し,大学は大学に貢献することを要求する.このギャップを常に認識することは,研究支援職としてのサバイバル・ストラテジーの重要な一部である.
  • 伊藤 正実
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_11-2_18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    平成26年度に文部科学省の科学技術人材育成コンソーシアムの構築事業に採択された多能工型研究支援人材育成養成拠点では研究支援人材を雇用するとともに,体系的な教育プログラムを平成27年度から実施しており,プロジェクトの企画立案から成果の創出まで一気通貫で関われる人材の育成を目指しており,平成28年度時点で,このコンソーシアム参画大学は14大学にまで至っている.また,この事業を通して,URAやコーディネータの普遍的な職業能力と業績の相関を明らかにするとともに,URAの職業能力を保証する“仕組みの構築”を目指している.
  • 髙橋 真木子
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_19-2_29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    日本における研究支援専門人材URAは文部科学省事業を契機に普及し現在800名近くがその職名で活動する.その業務範囲,必要とされるスキルを規定するのがURAスキル標準である.本稿では,まずスキル標準の概略を紹介した上で,これまであまり明確に説明されていなかったスキル作成の経緯,背景にある問題認識と設計思想を示す.次に2015年に行われた全国規模の調査結果をもとに,現在のURA組織が重視する業務,求める能力や実績,人材群,組織形態について,産学連携に関連する点を中心に考察する.大学の内外の環境が激変する中で,研究力強化に資する専門人材として発足したことから,産学連携専門人材と共通の経緯や課題が存在することが明らかになる.最後に,これらを通じ得られる示唆,今後の課題3点を示す.
  • 杉原 伸宏
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_30-2_36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    信州大学は産学官連携が非常に活発で,地域貢献度,企業との共同研究数や特許等の実施件数等は,近年は常に国内大学の上位を保っている.一方で,研究力の指標となる英語論文数,その内のTOP10%補正論文数や国際共著率も,近年は大きな増加を示している.これらの要因として,信州大学の産学官連携推進方策と研究力強化方策が絶妙に合致していることが大きく影響していると考えられる.本著では,地域貢献力(産学官連携力)の強化と,研究力の強化との両立を狙った信州大学の研究・産学官連携拠点の形成事例と共に,その基盤を支え,更なる向上を目指すための信州大学型の研究・産学官連携支援体制「学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO:サイロ)」等について紹介する.
  • 前波 晴彦
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_37-2_42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    本稿では産学連携・技術移転を支援する施策のうち特に支援機関や支援人材を制度内に明示的に包含する支援制度に注目した.こうした制度は支援人材が政策的に配置されていく過程で現れ,大学等の研究機関で実施される研究の実用化を支援する諸施策の一翼を担っている.本稿ではこうした制度を「支援機能活用型ファンド」と呼ぶ.「支援機能活用型ファンド」は過去20年余に渡って制度的な変遷を経てきたが,支援機関や支援人材を活用することで中小企業や若手研究者への支援に一定の役割を果たしてきた.
特集 オープンイノベーション
  • 山田 仁
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_43-2_47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,製品ライフサイクルの短期化等により,我が国企業は迅速にイノベーションを創出していくことが求められている.このため,自社のリソースにとらわれず,外部から技術シーズ等を取り入れるなどによってスピードを高め,革新的な製品・サービス開発を可能とする手段である「オープンイノベーション」の重要性が高まっている.他方で我が国企業には過去の「自前主義」による成功体験があること等から多くの課題が存在する.こうした課題を克服するためには(1)経営陣の明確な意思決定,(2)これを進めるための組織構築,(3)オペレーションの積み重ね等の企業の取組が必要である.筆者が属する経済産業省では,こうした取組を後押しするため,ベスト・プラクティスの収集・共有や,予算・税制などによる支援を実施している.
  • 浅見 正弘
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_48-2_54
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    企業の事業転換においては技術資産転換の断行が成否を握っている.自社の保有する技術資産の把握,新規事業の立上げに必要な資産で不足するものの明確化とそれらの速やかな獲得,が求められる.これを効率よく進めるには,社内の異部門も含め社外の大学・企業に至るまで広く見渡し,必要な技術資産の源泉として選定し,協業を通じて技術獲得を進めるオープンイノベーションのプロセスが有用である.こうした事業転換プロセスを富士フイルムを例に考察した.また,未成熟市場の拡大を図るため,オープン化を活用したインセンティブの設定で,多数のプレーヤーの参加を加速する戦略も併せて考察した.
  • 小松崎 常夫, 沙魚川 久史
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_55-2_59
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    サービスに関わる「人の力」を先端技術で最大限に増幅するサービス・イノベーションが,豊かな未来のための最重要課題である.これを実現するには,社会に対する想いを基礎とした多種多様な人や技術や知識の連携が重要となる.こうした外部企業・組織との融合や連携を進めるには,相手への関心やリスペクト,興味,理解といった“のりしろ”が必要で,また,両者が連携するための“のり”として,想いや志を共通にすることが必要になる.本稿は,連携に力点をおいて推進してきたセコムのサービス・イノベーションについて整理するものである.
  • ~顕在化してきた課題とその対策,効果的な活用方法~
    尾関 雄治
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_60-2_66
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    2015年12月1日(火)に産学連携学会と東京医科歯科大学が共同で平成27年度秋季シンポジウム「オープン・イノベーション ~企業文化変革への挑戦~」を開催した.本シンポジウムでは,近年,急速に認知が進むオープン・イノベーションについて,先駆的に取り組まれている企業の事例を紹介し,続いて,オープン・イノベーションの課題や,業種および製品のステージによって異なるオープン・イノベーションへの取り組み方を紹介,比較,議論した.
論文
  • 小野 浩幸
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_67-2_82
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    大学等の高等教育研究機関と金融機関が連携し,地域の企業を支援し,あらたな事業の創出等に取り組む事例が増加している.この産学官連携に金融機関を加えた産学官金連携は,日本独自の地域イノベーションシステムとして注目される.しかし,その実態については,取り組み事例が多く紹介されるだけで,定量的な分析が可能な程度には明らかにされていない.
    本稿は,産学連携学会学金連携システム研究会が2014年と2009年に実施した全国アンケート調査のデータ等をもとに,大学等と金融機関の連携関係の存在を社会的ネットワーク分析の手法を用いて分析した.
    その結果,1)ネットワーク形成の過程で地域性が大きく影響していること,2)いくつかの中心性を有した機関が出現し,スター型のネットワークが形成されていること,3)複数の機関と複数の機関が同時に結びつくウェブ型のネットワーク形成には至っていないことが明らかとなった.これらの特徴をもとに全国の連携を類型化した.
  • ――不読問題に焦点を当てて――
    文 健, 坂倉 孝雄, 清光 英成, 大月 一弘
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_83-2_90
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,近年の産学連携の重要性とそのコミュニケーションにおけるICT利用についての検討の必要性を認識し,産学連携の電子メール利用における不読問題を取り上げ,その要因および改善について検討を行った.
    具体的には,受信者にとって自分に該当しないメール(非該当メール)への反応を中心に,教員や企業などの受信者の非該当メールに対する認識と行動の相違に焦点を当て,非該当メールの受信・閲覧・業務への影響について調査を行った.調査結果から,企業などと比べて教員においては非該当メールの割合が特に高く,非該当メールが送り続けられる場合,教員は非該当の可能性のあるメールを読まない措置をとることがわかった.不読問題を引き起こす可能性のある要因を明らかにした.それらの要因の分析に基づき,次の3点の改善方法を提案した.a.教員が個人業務との関連性でメールの該当性を判別する傾向が強い点を意識すること,b.送信に際してなるべく内容が明確に伝わる件名を書くこと,c.教員との密接な関係を持つ組織・コミュニティーを経由して情報を配信すること,である.
  • 山口 佳和, 藤本 淳, 山崎 晃, 越山 健彦
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_91-2_103
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学特許と影響要因の関係を定量的に評価することである.大学特許に関するデータ,大学の指標や活動に関するデータを,収集し分析した.その結果,特許出願件数/教員数,特許保有件数/教員数,特許実施件数/教員数,特許実施収入/教員数を,5個,4個,2個,3個の説明変数で説明する,重回帰式(重決定係数はそれぞれ76.9%,74.9%,44.1%,48.2%)が導き出された.説明変数の多くは産学連携活動を表す変数が占めたが,一部に学生の状況,研究活動,大学のタイプを表す変数も選択された.大学特許を増加させるためには,産学連携活動の促進が必要であるが,併せて研究活動の強化と大学院の充実も期待される.
  • 山口 光男
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_104-2_114
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    大学における研究推進活動をリサーチ・アドミニストレーションと呼び,近年,国立大学を中心に導入の動きが見られる.組織面での課題として,多くの組織は官僚制を基本として構成されるが,官僚制はイノベーションを阻害する要因として,作業プロセスの標準化を求めるという特徴などを持っている.従って,官僚制を採用する事務組織の中にイノベーションを促進するための組織たるリサーチ・アドミニストレーション組織を単純に位置づけるのには無理がある.また,教員組織や事務組織ではない第三の組織とした場合でも,他の組織との協働の面で課題がある.本稿では,組織論を用いた理論的考察により,リサーチ・アドミニストレーションが有効に機能するための組織形態を明らかにすることを目的に研究を行った.その結果,アドホクラシーという組織形態の有効性が導き出された.
研究ノート
  • 櫻井 克己, 岩田 行剛
    2016 年 12 巻 2 号 p. 2_115-2_120
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
    大学による研究成果の特許保有が,企業が大学研究成果の実用化をする為の投資インセンティブに繋がるという考え方は正しいかについて,十分検討されずに来た.そこで,企業が大学と共同研究を進める際に大学特許出願の有無をどう認識しているかについて,企業産学連携関係者へアンケートを行った.その結果,企業は大学と共同研究を開始するに際して,共同研究対象について,大学の特許出願を必要としていないことが分かった.これは製薬系企業においても同様であった.又,共同研究成果の取扱いについて,特許は活用する側にある企業に帰属させるべきと考える人が多いこと,譲渡条件については共通認識が醸成されていないことが分かった.
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