産学連携学
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14 巻, 2 号
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特集 科学技術振興機構が展開する研究開発プロジェクト―A-STEP事業に焦点を当てた研究開発事例―
  • 伊藤 哲也
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_1-2_6
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    研究成果最適展開支援プログラムA-STEPはそれまでのJSTにおける産学連携・技術移転のファンディングプログラムを整理統合する形で平成21年に発足した.複数のプログラムが並立することによる研究開発支援の不連続性,非効率さを解消することを目的に,①ワンストップ,②シームレス,③最適化の3つを理念にプログラム設計されたものである.本稿ではA-STEPのプログラム設計理念とそれをどのように実装したかを述べ,これまでのおよそ9年間にわたる制度変遷についてプログラムを取り巻く環境の変化とともに振り返る.

  • 坪内 宏和
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_7-2_11
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    東北大学と古河電気工業(株)は強磁場超電導磁石に適用できる強化型Nb3Sn線とその導体開発を行っている.今般,科学技術新興機構のA-STEP事業による研究開発支援を受け,ニオブロッド法による銅ニオブ強化型Nb3Sn線および撚線導体を開発した.開発された強化型Nb3Sn線はリアクト&ワインド法による超電導磁石の製造を可能とし,事前曲げ歪みによってその特性が向上する.強化型Nb3Sn線を用いた撚線導体は東北大学が設置した25 T無冷媒超電導磁石に採用され,無冷媒磁石として世界最高の24.6 Tの磁場を達成した.

  • 嶋中 博之
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_12-2_20
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    大日精化工業は,国立大学法人京都大学化学研究所と産学連携を進めており,その中で,2011年11月から2015年3月まで,科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム A-STEPを実施した.このA-STEPでは,同研究所の後藤淳准教授(現,南洋理工大准教授)が発明したリビングラジカル重合法である有機触媒型制御重合を,当社の材料開発の中核技術として確立し,世界市場で優位性と競争力のある色材製品を開発することを目的とし,研究を進めた.本稿では,A-STEPにいたった経緯,有機触媒型制御重合の概要,成果等についてまとめる.

論文
  • 金井 昌宏
    原稿種別: 論文
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_21-2_30
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,大学等の研究成果を,産学連携を通じて円滑に事業化を図る観点から,大学等の単独保有特許の有用性を検討することである.「産学連携活動を通じて,大学等の研究成果の事業化を成功に導くためには,当該分野で基本的技術に関わる特許権を大学等が単独保有していることが望ましい」との仮説に基づき,公開データを用いて検証を行った.

    その結果,「技術移転収入の多い大学等では単独特許出願の割合・件数が多い」との単純な傾向は認められなかった.一方,文部科学省が2007年に刊行した産学連携事例集では,掲載事例の過半数で,単独特許の可能性がある特許権の存在が確認された.

    戦略的に単独特許を活用した共同研究等の展開により,産学連携活動で高い実績を上げている機関の事例が報告されており,適切な単独特許の確保は,大学等の研究成果の事業化に重要な役割を果たす可能性がある.

  • ―理工系学部生の調査結果より―
    阿濱 志保里
    原稿種別: 論文
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_31-2_40
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    高等教育における効果的な知的財産教育の実施には,学習者の知識や関心を把握し,それを反映したカリキュラムを作成することが重要である.そこで本研究では,学習者の学びのニーズを考慮した学習モデル提案を行うことを目標とし,理工系学部の学生を対象に学習者の知的財産に対する学習意識の解明を試みた.学習者の状況を把握するために,学習者の自由記述をもとに学習者の知的財産に対する関心や意識などについて質的調査及び分析を行った.分析では,得られたデータをもとに,知的財産に対する学習者の興味及び関心に関する記述について,データマイニング(テキストマイニング)による分析を行なった.分析には共起ネットワーク分析を用いた.その結果,知的財産の学習内容について,著作権のような文化的な内容と特許権のような産業的な知的財産に関する学習を整理して行う必要性を示唆することができた.

  • 小出 輝, 中根 知大, 松本 賢英, 渡邉 政嘉
    原稿種別: 論文
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_41-2_48
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    本研究は,経済産業省が実施する委託研究開発プロジェクトに日本版バイ・ドール制度を適用する効果を検証することを目的とする.そのために,同制度の適用下で取得された特許権の活用割合と,同制度の非適用下で取得された特許権,すなわち国有特許権の活用割合を比較した.そして,同制度の適用下で取得された特許権の活用割合は国有特許権の活用割合より高くなるとの結果を得た.以上から,経済産業省が実施する委託研究開発プロジェクトにおいて,同制度は当初の制度設計通りの機能を果たしていることを明らかにした.

研究ノート
  • 内島 典子, 北村 寿宏, 藤原 貴典, 川崎 一正, 竹下 哲史
    原稿種別: 研究ノート
    2018 年 14 巻 2 号 p. 2_49-2_62
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/07/04
    ジャーナル フリー

    北見工業大学における共同研究の実施状況を明らかにするために,2004~2013年度の共同研究の契約情報を整理・分析し,共同研究の相手先の地理的分布とその変化を調査した.その結果,以下のことが明らかとなった.

    ①共同研究の相手先の割合は,大企業の割合は約27%,中小企業の割合は約35%,企業以外の割合は約37%であり,企業以外の割合が最も高くなっている.

    ②大企業を相手先とする共同研究は,関東地方,北海道(その他),東海地方,東北地方,近畿地方の順に多く,これらの5地域以外との企業とは共同研究が行われていない.また,関東地方に位置する大企業との共同研究を増加させている傾向がみられる.

    ③中小企業を相手先とする共同研究は,北海道(オホーツク地域),北海道(その他),関東地方,近畿地方,東海地方が多く,これらの5地域で全体の約98%を占めている.北海道(オホーツク地域)および北海道(その他)に位置する中小企業との共同研究を減少させている傾向がみられる.

    ④企業以外の機関を相手先とする共同研究は,北見工業大学が位置する北海道(オホーツク地域)内の機関との共同研究が多く,約80%と大きな割合を占めている.

    地域イノベーションの創出の促進を考えると,大学と大学所在地県(北海道)との共同研究が減少傾向にあることは見逃せない問題である.今後,他地域の状況も明らかにして比較を行い,地域における共同研究の強化・拡大に向けた課題を検討していく必要がある.

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