産学連携学
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3 巻, 2 号
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特集 国際競争力を高める産学連携活動の国際化
  • 小石 真弓
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_1-2_7
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    大学における産学官連携活動は全体として着実に進展してきているが,海外企業からの受託・共同研究は極めて少ない状況にある.海外特許の取得や海外企業からの受託・共同研究の受け入れは,我が国の産業の国際競争力の強化,あるいは大学における研究の活性化等からみて重要である.今後各大学においては,国際的な産学官連携活動を行うにあたり,ポリシーを明確にした上で,(1)国際的に通用する知財人材の育成(2)国際法務機能の強化(3)海外への情報発信機能の強化(4)海外特許出願戦略の策定(5)地域の大学を支援する体制の構築,等の取組みを行うことが重要である.また,国としてはこれらの取組みを支援していくことが重要である.
  • ~研究成果の国際的な技術移転のプロデューサー機関として~
    竹下 敦也, 金子 恵美, 波羅 仁, 菊池 文彦
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_8-2_14
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    我が国における科学技術基本計画の中核的実施機関として科学技術振興機構(JST)は,イノベーションを生み出すために,技術シーズの創出を目指した基礎研究から企業化までの一貫した研究開発システムの推進や我が国の研究環境の国際化など科学技術振興基盤の整備を総合的に行っている.本稿では国際的な産学官連携活動に関係の深い,大学・TLO等の研究成果の海外出願を支援する「海外特許出願支援制度」と,国際的な研究交流を支援する「戦略的国際科学技術協力推進事業」を紹介する.
  • 岡路 正博
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_15-2_21
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    我が国の産業技術の振興を図るためには,政治,経済を含むすべての分野のグローバル化が一層進むなか,国内にとどまらず国際的な産学連携を進めなければならないことは当然である.そのために,大学・公的研究機関等における体制の強化と共に,研究助成機関もそれに即応する助成事業の充実・推進を図る必要がある.本稿では新エネルギー・産業技術総合開発機構が推進する国際的産学連携を支援するいくつかの助成事業について,それらの概要,位置づけ,実施状況等を紹介する.
  • 樋口 禎志
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_22-2_28
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    国際的な産学連携活動を推進するには,貨物の輸出又は技術の提供に関して定められている輸出規制への適切な対応が必要となる.専門分野としていかに優秀な研究成果の移転であろうとも違法行為は許されるものではない.特に,安全保障に係わる輸出規制に違反した場合は,世界の平和と安全の維持を妨げる行為となる.
    本稿では,産学連携において輸出管理の対象となると考えられるものの例示,輸出管理関係法令の概要と管理すべき基本的事項,独立行政法人産業技術総合研究所の輸出管理への取組みについて述べる.
論文
  • 北村 寿宏, 丹生 晃隆, 中村 守彦, 石飛 裕司, 出川 通
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_29-2_35
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    活発な産学連携活動が続いているが,企業と大学との連携により研究から事業化に至る割合は決して高いとは言えず,産学連携による新事業創出の増加が今後の大きな課題である.そこで,大学と中小企業との連携による事業化の促進を目的に,企業と大学とが連携して研究から事業化に至った事例の解析を行った.その結果,事業化に至る大きな要因として,研究,開発,事業化の各ステージを認識した上で各場面での適切なマネージメントが必要であり,特に,開発ステージでの相互の役割分担と共通認識が重要であることが明らかとなった.さらに,どのステージでも俯瞰的な視点でマネージメントすることが不可欠であることが重要である.
    参画するメンバーが,研究から事業化に至るまでの全体の流れを把握した上で,現時点での課題解決に向けた対処を俯瞰的な視点から行えるよう,全体の流れを概観できる「産学連携事業化ステージマップ」を提案した.今後,解析事例を増やし,マップへの加筆・修正を行うと共に,その有効性を確認する必要がある.
  • 山口 佳和
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_36-2_44
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    研究評価と産学連携が効果的に実施されていれば両者の間には相関関係があるはずとの仮説に基づいて,産総研の研究ユニット評価と代表的な産学連携活動の相関分析を行った.評価課題点と共同研究件数,特許外国出願件数との間には相関(0.2≦│R│<0.4の弱い相関,5%有意水準)があること,他の産学連携活動(技術相談件数,外部資金額,外部資金割合,技術研修受入人数,客員(外来)研究員受入人数,特許国内出願件数,ベンチャー創出数)との間にはほとんど相関がない(0.0≦│R│<0.2)か,負の相関があることが分かった.限定的ではあるが,研究ユニット評価と産学連携活動との間には相関関係があることが検証された.今後は,アウトカムを踏まえた研究評価と産学連携活動との相関分析を行い,研究評価と産学連携のあり方を検討することが課題である.
  • 山口 佳和
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_45-2_51
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    産学連携推進担当ユニットの評価と活動計画の具体性が相関関係にあるはずとの仮説に基づいて,産総研の研究関連・管理部門等評価とポリシーステートメントの記述具体性レベルの相関分析を行った.産学連携推進担当ユニットの評価点と活動計画の記述具体性レベルには強い相関(0.7≦│R│≦1.0,5%有意水準)があることが分かり,仮説は検証された.さらに,研究関連・管理部門等全体でも,評価点と記述具体性レベルには中程度の相関(0.4≦│R│<0.7,0.001%有意水準)があることが分かった.今後は,アウトカムや研究活動に貢献する産学連携推進担当ユニットの活動計画とそうした貢献の評価のあり方を検討することが課題である.
  • 坂元 耕三
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_52-2_61
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    本稿では産学共同研究に対する企業行動意志について,化学と機械産業を対象としたアンケート調査に基づく定量分析を行った.加えて,規模・業種・経験といった企業特性による影響について分析を行った.
    結果,1)学術的探求に対する目的や期待が大きいこと,2)事業化に直結しない成果でも高い評価が得られる可能性があること,3)成果取得までの時間に対する懸念が大きいことが判明した.加えて,4)小規模企業の目的・期待・問題意識は大規模企業と大きな違いがないこと,5)企業行動意志は規模や業種の相違以上に実施経験の有無による差による影響が大きいことが判明した.
    産学共同研究に対する前向きな企業行動意志が確認された.
研究ノート
  • ――宇都宮大学の事例を中心にして――
    黒田 英一
    2006 年 3 巻 2 号 p. 2_62-2_68
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    本稿では,筆者が行った企業家教育の授業を事例として取り上げ,なぜ企業家教育が余り企業家を生んでいないのか,大学院生の受講生を対象としたアンケート調査をもとに要因を整理することにした.主要な結果は次の通りである.
    1)職業観や仕事への考えを育てる教育がこれまで不十分であり,キャリア教育のなかに企業家になるというコースが含まれてこなかった.
    2)企業・産業や社会に対する関心が低く,地域の抱える課題について積極的に学び解決する機会が少なかったことである.
    3)地域社会と連携して企業家教育に取り組むべきにもかかわらず,地元企業の経営マインドが現状維持的で企業家精神に富んでいないことが,企業家教育に有利にはたらいていないことである.
    企業家教育は,企業家精神習得の教育と事業おこしのスキルを学ぶ教育とをわけることが必要であり,まずは挑戦し行動する企業家精神を学ぶ教育を地域社会と連携して長期的に育成していくことである.その結果ベンチャー企業をたちあげる主体が数多く生まれ,産業クラスターが形成されていくものと思われる.
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