産学連携学
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4 巻, 2 号
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特集 イノベーションシステムを支える中小企業の産学連携(その1)
  • 船田 学, 後藤 芳一, 高木 一彦, 古内 里佳, 本村 尚樹, 竹内 利明, 垣田 行雄, 京極 政宏
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_1-2_7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    中小企業では,産学官連携は一部の分野を除いて,必ずしも十分に行われていない.本稿では,中小企業分野における産学官連携について,課題を整理するとともに,対応策を提言する.具体的には,第1に,現状は,中小企業の産学官連携がよく行われている分野は,比較的高い技術を持つ企業(主体)の,研究開発(内容)に限られることを指摘する.第2に,その背景として,中小企業をめぐる連携には,組織間(例:中小企業と大学)を接続するための,高いレベルの機能を要するにも関わらず,現在,一般的に行われている産学官連携は,連携の機能としては,必ずしも十分に高いものではないことを指摘する.第3に,課題が残されている一因として,産学官の定義に注目するとともに,それを再考し,新たな定義を提案する.第4に,2007年8月に実施した中小企業産学官連携の成功事例調査の概要及び調査結果について整理する.第5に,中小企業をめぐる産学官連携の今後のあり方を提言する.
  • 川崎 一正
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_8-2_17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    産学連携はイノベーション創出の重要な要素として認識される中,従来より,大企業を中心として行われてきた.一方,中小企業の産学連携には課題が多く,一部の研究開発型の中小企業を除いては,産学連携に自ら一歩を踏み出せない企業が多くを占めている.しかし,地方においては中小企業の割合が高く,その連携を強く広くすることが,中小企業の支援,地域の経済活性化にとって重要な課題である.本稿では,企業のほとんどを中小企業が占める地域の一つである新潟地域を事例として取り上げ,新潟地域の特徴,新潟大学の産学連携に対する取り組みを示すとともに,様々な形態がある産学連携のうち,産学共同研究,共同研究に至るスキーム,成功事例について分析し,考察する.中小企業がほとんどを占める地域が多く存在することより,本稿の結果は,他の多くの地域に適用できるものと考えられる.
  • 北村 寿宏
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_18-2_24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    共同研究を主体とする産学連携が活発化しているが,中小企業と大学との産学連携は十分に進んでいるとは言えない状況にある.そこで,本論文では,共同研究件数の推移とその内容から共同研究の実状を分析し,中小企業と大学との共同研究を促進するための課題とその解決の方向性について検討した.その結果,中小企業と大学との共同研究は,これまで,企業のニーズやアイデアに基づく製品の開発ステージで実施される「ニーズ実現型共同研究」が主体であり,この共同研究を促進することが第一ステップであることが明らかとなった.そのためには,開発ステージで共同研究が実施できるよう,企業側と大学側の人材育成が必要であり,MOT教育が有効と考えられる,さらに,官(行政)が中心となった新事業化促進の支援を行う仕組み作りと支援を行う人材の育成も必要であると考えられる.
論文
  • 黒田 正範, 矢部 彰, 榎本 祐嗣
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_25-2_33
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    1995年に議員立法による『科学技術基本法』が制定された結果,経済産業省(旧通商産業省)において地域コンソーシアム研究開発制度が設立された.この制度はわが国における各地域のイノベーションを促進し,地域の産業クラスター政策と関連させて地域産業の自律的発展を支援する制度である.本稿は,バブル経済の崩壊後の経済情勢との関連で誕生した地域コンソーシアム研究開発制度の法律制定の経緯を調査し,特に中国地域における産業技術を支援してきた地域コンソーシアム研究開発制度の意義について考察した.その結果,山陽地方と山陰地方の両地方において地域コンソーシアム制度による研究開発の成功事例が見出され,地域コンソーシアム研究開発制度が中国地域全体として意味あるものであることが明らかになった.さらに,この制度を活用した成功事例について,その要因について分析し,成功事例をもたらすためには企業側がその分野における研究開発動向を正確に把握しており,しかもプロジェクト終了後も粘り強く製品化を図る強い意思を持っていること,また,プロジェクトの推進者には強力なリーダーシップが求められることを明らかにした.
  • 丹野 和夫, 熊谷 直昭
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_34-2_43
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    現用されているリチウム二次電池は1991年,それまでの長い間の産学関係者による研究開発が稔って実用化されたので,当時の専門学会である電気化学協会における20年間に亙る研究発表状況等から開発の経緯を調査,検討し,本開発の特質を考察した.(1)電源として使用されるポータブル電子機器が次々と新しく生れ,開発の推進力であるニーズが極めて長期間に亙り持続した,(2)学理的に新規で,「学」に相応しい,異質の非常に多くの課題を提供し続け,多くの「学」の参入を促した,(3)各種電池を開発・実用化してきた電池企業(グループ)の開発力,技術力が,基礎的に未解決な課題を克服し,発想の転換を含む実用電池に仕上げた,(4)リチウム一次電池の場合にみられた「個別的な産学連携」よりは,オープン・コミュニティである学会,特に電池技術委員会における活発な情報交換が,情報を共有して,関係者間の協調と競争を促し,企業の製品化に貢献した,これらのことが本開発の特質といえる.これらの認識と応用は今後の産学連携による新産業創出にも有用である.
  • 吉村 英俊
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_44-2_53
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,地域イノベーションを促進するため,北部九州地域の拠点都市を対象にイノベーション構造について検討した.
    まず,地域イノベーションを直接的要素と間接的要素に分けて,主成分分析により,構成要素を分類し,さらに重回帰分析により,地域イノベーションに影響を与える要因を明らかにした.分析の結果,構成要素は「都市の規模」「工業の集積」「公的セクターのやる気」「都市機能・都市の魅力・都市の多様性」「インフラ」「安全・安心・居住」の6つに分類され,とくに「都市機能・都市の魅力・都市の多様性」と「工業の集積」が重要であることが分かった.
    次に分析結果をもとに,クラスター分析により求めた3つの都市グループに対して,地域イノベーションの構造を考察し,都市政策のあり方について示唆した.
  • 山口 佳和
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_54-2_65
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,科学技術白書を分析し,分析結果に基づいて,産学連携関連施策がどのように変遷してきたかを考察した.その結果,産学連携が活発化する転換点は1995年の科学技術基本法制定と1996年の第1期科学技術基本計画策定であることが科学技術白書の記述から確認できること,科学技術白書発行開始の当初から産学連携の重要性は認識され産学連携関連施策も早い段階から科学技術政策として実施されてきたこと,産学連携は様々な科学技術施策の中に組み込まれ現在もその重要性は変わっていないことが分かった.今後の課題としては,これまでの産学連携関連施策に対する評価,施策を実施した成果を分析し,成功と不成功の要因,期待される産学連携関連施策のあり方について研究することが必要である.
  • 山口 佳和
    2008 年 4 巻 2 号 p. 2_66-2_73
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,研究機関における産学連携活動は論文生産性にプラスの効果があるはずとの仮説に基づいて,産総研の研究ユニットの論文生産と論文生産に影響を与える可能性がある産学連携活動との相関分析を行った.その結果,共同研究実施件数(0.2≦│R│<0.4の弱い相関),技術研修受入人数(0.4≦│R│<0.7の中程度の相関)との間には相関があること,外来(客員)研究員受入人数,連携大学院による大学院生受入人数との間にほとんど相関がないことが分かった.限定的ではあるが,仮説は検証された.さらに,全体とは異なる傾向を示す分野があることから,個々の分野に全体の傾向を当てはめることには注意を要することが分かった.今後は,論文の内容や共著者の分析に基づいて,産学連携活動の質的な効果の研究を行うことが課題である.
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