産学連携学
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8 巻, 2 号
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特集 イノベーションと産学官連携:「現場」の論点
  • 松尾 純廣, 出川 通, 安部 博文
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_1-2_23
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    本稿の課題は,「大学発ベンチャー」を対象として産学官連携によるイノベーションのプロセスと方法について明らかにすることである.主な分析方法は,次の3つである.第1に,イノベーション・マネジメントによる大学研究成果のイノベーション・プロセス分析.第2に,MOTによるベンチャー企業の「死の谷」分析.第3に,インキュベーション・マネジメントによる「大学発ベンチャー」のケーススタディ.その結果,第1に,イノベーション・プロセスにおける「大学発ベンチャー」の位置付け,第2に,「大学発ベンチャー」のイノベーション・マネジメント手法に関する一定の知見(「魔の川」のマネジメント,「死の谷」のマネジメント)を得た.
  • 渡部 俊也
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_24-2_30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    現場の経験に基づく産学連携のマネジメントについての評価を行い,運用面での問題を論じた.企業等の経験に基づくマネジャーの産学連携マネジメントの考え方は,しばしば確証バイアスによって歪められている可能性がある.このことによるリスクを低減するためには,そのモデルがどのような経験によって導き出されたのか,その適用範囲と限界を確認することが必要である.また実際に導入したマネジメントが本来の効果を上げているかどうか,データ等を取得してモニターを行うことが重要で,これらの活動が「現場発」の産学連携マネジメントの価値を向上させることにつながる.
  • 山本 貴史
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_31-2_40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    日本における産学連携は,残念ながら期待通りの評価を受けていない.これは,移転ビジネスは日本においては新しいビジネスである点と,産学連携の成果が出るまでには,相当の時間を要することが理解されていなかった点が大きな要因である.米国における産学連携の成功要因は,マーケティングモデルの確立であった.我が国はそれに学ぶべきである.また,マーケティングモデルを確立するための人材登用や,それを阻害する仕組みの改善等着手すべき課題は多い.本稿では,産学連携の実務に従事する視点から改善策を提言する.
  • 堀井 朝運
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_41-2_49
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    企業経営のイノベーションを行い,商品・サービスの市場化を図るには,顧客視点で見て,市場にある商品・サービスに比べて,差別化された優位性があることが必要条件である.商品・サービスが顧客ニーズを超える高顧客価値を創出することが求められる.そのために,マーケティングと新商品の技術評価を徹底して行い結果を新規事業開発に反映させる.さらに,商品・サービスを良品廉価にするために,コスト,品質(機能),スピード(タイミング)の実現が必要である.これらを最も効率的に実施するには,人材育成が必要不可欠である.私の経験ではこの実現は,産学官連携の活用が最も効果があった.
  • 星野 達也
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_50-2_58
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    研究開発の行き詰まりに苦悩する製造業者の間で,大きな期待感とともに受け入れられつつあるオープンイノベーション.はたして日本の製造業を救う「救世主」となり得るのか.日本国内においてオープンイノベーション活動を支援する株式会社ナインシグマ・ジャパンが,日本の製造業が目指すべき研究開発のあり方について提言する.
  • 松尾 新吾
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_59-2_65
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    九州地域が一体となった産業経済の発展を目指す九州経済連合会では,様々な活動の中で産学官連携を実践している.本稿ではその主な取組みについて紹介し,産学官連携のあり方について考える.
  • 主として高等教育行政の観点から
    池田 貴城
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_66-2_75
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    我が国の産学官連携は1995年の科学技術基本法の制定を嚆矢として本格的に始まった.その後15年余りの間に各大学等における取組も進展し,順調に成果を上げつつあるが,その一方でいまだ課題も少なくない.今後は,我が国に合った形でイノベーション・エコシステムを構築しつつ,産学官連携のあり方を考えていく必要がある.そのため,国としては,評価や情報発信のあり方等も工夫しながら施策を進めていくことが重要である.また,大学等は機能別分化を進めながら,産学官連携活動を教育・研究と並ぶ社会貢献の一つとして位置付け,文系や教育面での連携も含めた取組を進めていくことが望まれる.
論文
  • 山口 佳和, 山崎 晃, 越山 健彦
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_76-2_85
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ナノ構造物分野(国際特許分類(IPC)のB82B1/00)における特許出願の内容や出願後の経過について,3つの出願人タイプ(大学,公的研究機関,民間企業)別に見た場合の差異を明らかにすることである.特許電子図書館(IPDL)を検索して,特許出願のデータを収集し分析した.その結果,公開特許公報ページ数,テーマコード数で有意な差異があることが分かった.テーマコードの分布では,7技術分野(光学・画像,医薬品・医療機材,プラスチック成型・処理,無機材料,有機材料,金属材料,半導体)で大きな差異があり,民間企業の方が大きい技術分野と大学,公的研究機関の方が大きい技術分野があることが分かった.出願後の経過では,審査請求既判断に対する審査請求実施の割合,審査請求実施に対する審査終了の割合で有意な差異があることが分かった.
研究ノート
  • シュタインバイスのケーススタディーから
    笹山 淑弘, 原山 優子
    2012 年 8 巻 2 号 p. 2_86-2_98
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    知識の源である大学と企業からなる産学ネットワークによるイノベーションへの寄与が注目されてきたが,そのプロセスについての考察はまだ十分とは言えない.本稿は,産学間の相互作用を効果的に惹起するための仲介機能に着目する.そこで,技術移転を業務とするシュタインバイスを対象としてケーススタディーを行った.
    ケーススタディーから,仲介機能を担うコーディネータが産学それぞれのアクターと「対話」を進めることで,課題を明確化し解決していく「学習の場」が形成されることを示した.そして,この「学習の場」における産学の相互作用がソーシャル・キャピタルとして機能し,産学間のギャップ超克に寄与することを示唆した.
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