廃棄物資源循環学会論文誌
Online ISSN : 1883-5899
Print ISSN : 1883-5856
ISSN-L : 1883-5856
20 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 高 在中, 清水 芳久, 池田 和弘, 金 錫九, 松井 三郎
    2009 年 20 巻 3 号 p. 151-160
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究は嫌気性硫酸塩還元条件における高分子リグニンの分解について調べたものである。硫酸塩還元条件で,セルロースを共存基質として与え連続運転を行い,高分子リグニンの変化を定性的,定量的に追跡した。特に,高分子リグニンの分解に伴う分解産物として水溶性低分子リグニンであるAPPL (Acid Precipitable Polymeric Lignin) や芳香族化合物に着目した。
    その結果,高分子リグニンは硫酸塩還元条件下で最大12%の減少 (分解速度としては3.49mg/L/day) がみられ,低分子リグニンの構造を持つAPPLは増加する傾向を示した。この時hydrocinnamic acidなどの芳香族リグニンモノマーも同時に検出された。本研究の結果から高分子リグニンは硫酸塩還元条件下で,共存基質としてセルロースを利用して分解が促進されること,また,その分解が低分子化によって起こることが明らかになった。
  • 時津 総一郎, 坂井 悦郎 , 大門 正機
    2009 年 20 巻 3 号 p. 161-170
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物の約20%を占める建設廃棄物は,最終処分量の削減を目的としてリサイクル技術の開発が進められている。筆者らのグループは,現在再資源化が義務付けられておらず,かつリサイクル方法が確立されていないALC (軽量発泡コンクリート:Autoclaved Lightweight Concrete) に対して大気中のCO2を有効に作用させ,ALC内部のトバモライトを炭酸カルシウムと非晶質CiO2とし,これを800℃で焼成し,さらに水熱処理を施すことでトバモライトが再生可能であることを見出し,ALCのリサイクルが可能であることを立証した。またLCA調査および本リサイクル方法の経済性について検討を行い,その結果,廃棄物の削減および環境負荷の低減と事業化の両立化が可能であることを見出した。
  • 大澤 正明, 相良 敏正, 島岡 隆行, 中山 裕文
    2009 年 20 巻 3 号 p. 171-179
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    ごみ焼却施設は,耐火物や鋼板など定期的な補修が必要になる設備・機器が多く,これらの定期補修費は,財政難に苦しむ市町村にとって負担になってきている。また,ごみ焼却施設はメーカの独自技術で構成されていることもあり,定期補修工事は施設を建設したメーカに発注されることが一般的であるが,その工事額の算定基準が明確でないと指摘されることも多い。本研究では,ごみ焼却施設における定期補修費の現状について実態調査を行い,さらに定期補修費の精査手法を提案し,いくつかの施設においてケーススタディを行った。その結果,施設によって定期補修費の額に大きな差異が生じていることが明らかになり,施設の維持管理にあたっては適正な精査手法を採用するべきであるとともに,施設の建設計画にあたっても,建設費のみではなく補修費等維持管理費の状況についても留意を払うことが必要であることが示唆された。
  • 服部 隼人, 守富 寛
    2009 年 20 巻 3 号 p. 180-188
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    固形化燃料であるRDFを燃料とする流動層燃焼廃棄物発電の長期運転では,RDF中に含まれるアルカリ成分が付着凝集した熱媒体粒子による,熱交換器部材の化学的あるいは物理的な腐食が懸念されている。本研究では熱交換器部材の腐食メカニズムを明らかにすることを目的として,熱交換器部材の試験片を流動層燃焼条件に24時間曝した後,試験片の重量変化,SEM/EDXによる表面観察,溶出試験,熱力学平衡計算によって腐食関与物質の特定を行った。結果として,熱交換器部材にSUS310Sを用いた場合,空気雰囲気,弱い粒子流動化状態で腐食が進行しやすいこと,腐食要因は炉底砂成分のカルシウムとSUS310S成分の鉄とクロムの化合物であるCa3Fe2Si3O12およびCaCr2O4であることを明らかにした。
  • 代 英杰, 小島 陽一郎, 松田 従三, 田中 俊逸
    2009 年 20 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    有機性廃棄物からなるシーディング剤の汚水浄化能を確認し,シーディング剤と下水活性汚泥との浄化処理効果を比較することを目的として,実験室規模の汚水処理実験を行った。化学的酸素要求量,pH,透視度,一般生菌数,浮遊物質,活性汚泥量などを測定項目として,汚水浄化効果を評価した。シーディング剤と下水活性汚泥の汚水処理能力はほぼ同一であったが,シーディング剤を添加することで汚泥発生量が少なくなった。シーディング剤は浄化槽の特性にあった微生物群を補給し,特に浄化槽稼動初期において汚水処理能力を向上し,浄化効率をあげることが明らかとなった。
  • 北村 寿宏, 石飛 裕司
    2009 年 20 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    廃木材の有効利用の一つとして,廃木材から製造した木炭の調湿材としての利用を目的に,廃木材を原料に適正な方法で製造した木炭が良好な調湿剤として利用できる吸放湿特性を有していることを明らかにしてきた。
    木炭を調湿材として住宅の床下や室内で使用する場合には,数~35℃程度の気温下で使用されると想定されるため,廃木材から製造した木炭の吸放湿特性に及ぼす気温の影響を調査した。10,23,30℃のそれぞれの温度で湿度をステップ状に変化させ,木炭の質量変化として得られる吸放湿特性をステップ応答と仮定し,そのゲイン定数から吸湿性能と放湿性能を,また,時定数から吸湿あるいは放湿の速度を相対的に評価した。その結果,木炭の吸湿性能,放湿性能とも,同一試料では気温の影響を顕著に受けないことが明らかになった。また,同一試料では気温が高くなるほどステップ応答の時定数が小さくなり,吸湿・放湿の速度が相対的に速くなる傾向が見られた。
  • 岩井 良博, 定塚 徹治, 小林 剛, 亀屋 隆志, 三宅 祐一, 小松 貴司, 高木 禎史, 三品 文雄
    2009 年 20 巻 3 号 p. 203-216
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    下水汚泥焼却灰を原料とした熔成リン酸質肥料の製造可能性を検討するため,全国14ヶ所の下水汚泥焼却灰26種類の成分について調査し,主要成分や有害成分濃度を明らかにした。下水汚泥焼却灰は,熔成リン酸質肥料原料として利用可能であること,有害成分の一部は肥料取締法公定規格で規定する数値より高いものもあること,肥料として利用する場合には有害成分の除去が必要である焼却灰が多いことを明らかとした。2種類の焼却灰を用いて電気炉 (マッフル炉) により試作した熔成リン酸質肥料は,MgOとCaOを添加して任意の成分比で還元溶融処理することで,P2O5およびMgOのク溶率を高めることができ,肥料として効率的に利用できる可能性を示した。また,この成分比は市販の熔成リン肥製造時の最適成分比とほぼ同じ比率であった。有害成分は,概ね溶融過程で含有量が減少し,基準値を下回るものがほとんどであることが明らかとなった。
feedback
Top