本研究では,実験室規模の燃焼炉を用いて,1,073Kの温度において燃焼物として用いたポリ塩化ビニル (PVC) 粉末試薬の添加速度ならびに供給O
2-N
2ガス組成の混合割合を広範囲に変化させて燃焼実験を行い,0.1vol%O
2から35vol%O
2に及ぶ幅広い排ガス中の残存O
2濃度とダイオキシン類生成濃度との関連性を調査した。
残存O
2濃度が3vol%付近で,排ガス中ダイオキシン類濃度は極大値を示し,O
2濃度増加とともにダイオキシン類濃度が急激に減少するが,約10vol%以上ではダイオキシン類濃度の減少は非常に緩やかになる。一方,残存O
2濃度が0.1vol%で,CO濃度が高い還元雰囲気においても,ダイオキシン類濃度は減少する。
完全燃焼条件下では,高温域での燃焼ガスの滞留時間が短い場合,高塩素化度のPCDFs濃度が高くなるフィンガーパターンを示す。一方,滞留時間が長い場合,低塩素化度のPCDFs濃度が高くなる逆のフィンガーパターンとなる。また,不完全燃焼条件下におけるPCDFs濃度分布は,塩素化度に依存しないフラットなフィンガーパターンになる傾向がある。高温域における燃焼ガスの長い滞留時間は,ダイオキシン類のTotal濃度を減少させるが,低塩素化度の同族体濃度が増加することによりTEQ濃度が減少しない,あるいは増加する場合もある。
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