廃棄物資源循環学会論文誌
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23 巻, 1 号
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論文
  • ――名古屋市とソウル市のアンケート調査の結果を用いて――
    文 多美, 白川 博章, 井村 秀文
    2012 年 23 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,焼却施設を運営する自治体のごみ処理政策に対する住民の受容意識に影響を与えている要因を明らかにすることである。調査対象地域は,焼却処理に比較的長い歴史を持つ名古屋市と,焼却処理が開始されて間がないソウル市とし,アンケート調査を通じて検討を行った。その結果,名古屋市とソウル市の両都市において,焼却施設を運営する自治体のごみ処理政策に対する住民の受容意識と,汚染物質の排出などの「直接的影響」に対する懸念との間には明確な関係は認められなかった。他方,名古屋市・ソウル市ともに「行政との信頼関係」は,焼却施設を運営する自治体のごみ処理政策に対する住民の受容意向において重要な影響要因であることがわかった。以上から,自治体のごみ処理政策に対する地域住民の受容意識を向上させるためには,焼却処理の安全性だけではなく,行政に対する住民の信頼を得ることが重要であると考えられる。
  • 武智 稔恵, 三浦 公志郎, 古川 真一, 北村 章
    2012 年 23 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
    現在日本では年間1,400万tonもの食品廃棄物が焼却または埋立処分されている。本研究では,野菜くず,乾燥調理くず,およびバナナ果皮を培地用素材としてブナシメジ栽培を行った。菌糸の生長はYMG培地に比較して野菜くず培地でやや劣り,バナナ果皮培地ではさらに悪かったが,どの培地も菌糸を生長させることができた。子実体はすべての培地で形成された。これらの結果より,菌糸生長培地用素材として野菜くずが,子実体形成培地用素材として野菜くず,乾燥調理くず,バナナ果皮が有用であり,食品廃棄物の再生利用に応用できる可能性が示された。特に野菜くずは菌糸生長から子実体形成において一貫して生長が良好で,最も有用な培地用素材であることがわかった。さらに,栽培途中の野菜くず培地を冷凍保存し,自然解凍後に栽培を再開しても子実体の形成が確認された。これは食品廃棄物を利用した家庭用ブナシメジ栽培キットの開発に応用できる可能性を示している。
  • 秋月 信, 大島 義人
    2012 年 23 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
    製鉄圧延工程で発生する含油スラッジからの酸化鉄回収法として,超臨界水を利用した手法の検討を行った。超臨界水酸化条件においては,処理により付着有機物が95%以上除去され,有機物はCO2まで完全に酸化分解することが可能となった。この時,酸化鉄は有機物の酸化分解を触媒していることが示唆された。酸素が存在しない条件では,有機物の一部が溶解除去された。鉄の酸化状態は処理によって変化し,有機物の完全酸化量論量以上の酸素を用いるとFe2O3へと酸化される一方,量論量未満の酸素を用いた場合は,有機物の部分酸化反応によって還元性物質が生じ,Fe2O3がFe3O4へと還元され得ることが明らかになった。これらの結果は,超臨界水中においては,スラッジの酸化鉄と有機物が相互作用することで,処理の効率や酸化鉄の回収形態が変化することを示しており,有機無機混合廃棄物からの新たな無機物回収手法として期待が持たれる。
  • 中村 竜太, 貴嶋 紗久, 清山 史朗, 徳楽 清孝
    2012 年 23 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,近年の廃棄物溶融炉の増加に伴い排出量が増大しつつある廃棄物溶融スラグ (以下スラグと略記) の新規活用法を検討した。はじめに,スラグの微生物増殖に与える影響を調査した。大腸菌に対しては,振盪培養条件下でのスラグの添加は増殖に有意な影響を与えなかったが,静置培養条件下においては約80%の増殖抑制効果が観察された。同様に,魚飼育水槽由来の水生微生物に対しても静置培養条件下で増殖が約80%が抑制された。以上の結果より,スラグは,水槽や花瓶のような,水が大きく撹拌されない静置条件下において,水防腐剤として活用できる可能性が期待された。次に,実際に熱帯魚飼育水および切り花生け水の防腐剤として活用できるか検討した。その結果,ネオンテトラ飼育水槽にスラグを投入することにより水槽内での藻の発生が3ヶ月以上抑制された。また,キク切り花の生け水に対しては1ヶ月以上の防腐効果が見られ,さらに1.7倍の花持ち延長効果が観察された。また,スラグの投入がネオンテトラの生存率や,今回調査した7品種の切り花の花持ちに悪影響を与えなかったことから,スラグが水槽や花瓶等の防腐剤として有効活用できることが示唆された。
  • 太田 直人, 城石 英伸, 庄司 良
    2012 年 23 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
    燃料電池には周辺環境に悪影響を与える重金属を用いた電極触媒が使用されている。本研究ではNi,Coを用いた燃料電池電極触媒のpHを変化させた溶出試験を行い,Ni,Coの溶出量を測定し,得られた溶出液の毒性を淡水性藻類 (Pseudokirchneriella subcapitata以下藻類) を用いて測定した。また,触媒に用いられるNi,Coの単体毒性試験を行い,溶出液中のNi,Coが藻類に与える毒性の強さ (TU) を算出した。
    毒性試験の結果,pH5.0において溶出した溶出液では毒性の発現が確認された。溶出液中にはメラミンとホルムアルデヒドも含まれ,特にホルムアルデヒドは毒性に寄与していると推定された。また,毒性物質間の相互作用を検討した結果,毒性物質間で競合が生じ,毒性の低減が確認された。燃料電池電極触媒の毒性が確認され,毒性物質間に相互作用が働くため,機器分析だけでなく,生物を用いた毒性試験による環境影響の評価が必要であることが示唆された。
研究ノート
  • 稲積 真哉, 木村 亮, 葛 拓造, 小林 賢勝
    2012 年 23 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
    海面廃棄物最終処分場の環境安全性を建設段階から将来にわたって維持・保障した上で跡地利用を促すためには,水溶性廃棄物を含む保有水等の浸出を防止するとともに,廃棄物を効果的に浄化するシステムを構築することが重要である。
    本研究は,H-H継手の内部空間に種々の技術を適用した集排水機能を有する鋼管矢板部材を提案し,その実現性ならびに継手箇所における集排水特性を空間活用実証試験により追究する。その結果として,集排水機能を有する鋼管矢板部材としてH-H継手の内部空間を活用した諸技術は導入可能であること,また,接着・塗布する膨潤性止水材の厚さを調整することでH-H継手のフランジ嵌合部における遮水性能 (集排水特性) をコントロールできることが明らかとなった。
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