廃棄物資源循環学会論文誌
Online ISSN : 1883-5899
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29 巻
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展望論文
  • 多島 良, 平山 修久, 高田 光康, 宗 清生, 大迫 政浩
    2018 年 29 巻 p. 104-118
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー
    本研究では今後の事前準備と発災時の災害対応に貢献するため,災害廃棄物の災害対応マネジメントの観点から発生量推計の考え方を整理するとともに,推計方法の現状を体系的に明らかにし,実務と研究開発の両面から今後の展望を示した。このためにオンラインの文献検索システム (JDreamⅢ, CiNii) を用いて文献調査を実施し,災害対応マネジメントの観点から整理・分析した。結果として,23の異なる推計方法・原単位のレビューより,推計の結果に含まれる災害廃棄物の範囲,推計方法の普遍性,推計のために必要となるデータの種類と形式がさまざまであり,これらの点に留意して推計を行う必要があることを示した。これをふまえ,災害種類ごとに,災害フェーズに応じて異なる災害情報と被害情報を活用した要処理量の推計戦略と今後の研究開発の展望を示した。
論文
  • 角田 雄亮, 杉元 耕平, 伊藤 拓哉
    2018 年 29 巻 p. 1-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/13
    ジャーナル フリー
    羊毛の約 94 % がタンパク質であることに着目し,加水分解して利用価値の高いアミノ酸を製造する検討を行った。しかし,羊毛は化学繊維と混紡されていることが多く,分離工程が必要となる。また,従来法では高濃度の塩酸を使用するため環境負荷が高い。そこで,加圧熱水処理により羊毛のみを水溶性タンパク質に転換し,H形強酸性陽イオン交換樹脂 (以下,陽イオン交換樹脂) を用いて加水分解を行う2段階反応を試みた。本報告では,羊毛の過分解を抑制した加圧熱水処理実験と陽イオン交換樹脂を用いた加水分解実験を行い,2段階加水分解装置の概念設計について検討した。その結果,加圧熱水処理により得られた水溶性成分を随時排出し,酸点密度の高い陽イオン交換樹脂を高密度で充填して加水分解することが有効であることが示唆された。
  • 福間 義人, 藤川 博之, 松田 吉司, 渡瀬 雅也, 松藤 敏彦
    2018 年 29 巻 p. 8-19
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/14
    ジャーナル フリー
    焼却炉出口に設置した連続式レーザー排ガス分析計を用いて,排ガス中のO2, H2O, CO2濃度を測定した。測定結果から廃棄物中のC, Hの酸化反応量とH2Oの蒸発量を計算し,廃棄物の燃焼に伴う発生熱量を求め,廃棄物の低位発熱量を計算した。発生熱量は,焼却炉回りの熱収支による推定とよく一致し,推定精度の高さを示した。また環整95号にもとづくサンプリングおよび縮分による低位発熱量の分析結果と比較したところ,従来の低位発熱量推定には大きな誤差があることを明らかにした。さらに排ガス成分測定による発生熱量はボイラー蒸発量を先行して予測できることから燃焼制御に適用したところ,燃焼が安定し,ボイラー蒸発量の変動を小さくすることで発電量の増加等の効果が確認できた。
  • ――「平成の大合併」の影響 ――
    都筑 研哉, 横尾 英史, 鈴木 綾
    2018 年 29 巻 p. 20-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/23
    ジャーナル フリー
    電子付録
    国内のごみの有料化政策の評価はこれまでも多くなされてきたが,実証分析を行う既存研究では,市町村合併による自治体サンプルの消失に伴う選択バイアスを回避するため,「平成の大合併」以前のデータによる研究しか存在しなかった。そこで本研究では,「平成の大合併」以降まで期間を拡張した自治体パネルデータを構築し,市町村合併による影響を制御した上で政策の効果を分析した。具体的には,合併以前のデータを合併後の市町村状況に合わせ,加法し,仮想データを作成し,全国790市の16年間のパネルデータを構築した。分析の結果,合併による影響を制御した上でも,単純従量制と超過従量制の両政策にはごみ排出量の抑制効果があり,その効果は長期的に持続することがわかった。また,市町村合併自体が生活系ごみ排出量を増加させていたことがわかり,さらに,合併による影響を考慮しないと有料化政策の抑制効果を過小に評価してしまうことがわかった。
  • 竹田 航哉, 村田 英彰, 下村 育生, 高田 康寛, 亀井 裕次, 松藤 敏彦
    2018 年 29 巻 p. 31-43
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー
    廃棄物発電ボイラの過熱器管腐食対策として,ボイラ内に抑制材を供給し,過熱器管に付着させて腐食を抑制する技術がある。こうした添加剤を用いる技術は,薬剤費や灰処理量が増えるため,供給量を極力抑えることが重要となる。
    本研究では,高い抑制能を有する抑制材を選定することを目的として,複数の候補材を実験室での試験により比較評価した。また,実機適用時を想定して,抑制材の混合割合の影響や腐食に関与するガス成分とどのような反応挙動を示すか調べた。
    その結果,候補材の中で天然ゼオライトの抑制効果が高いことを明らかにした。抑制効果は,付着灰中における天然ゼオライトの混合割合 5~25 wt% の間で発現する。
    また,ゼオライトはガス状の腐食性成分および酸性ガスを捕捉することがわかった。前者は実機適用時においてさらなる抑制効果を示す可能性を示唆し,後者は酸性ガス処理薬剤の代替として適用できる可能性を示している。
  • ――計量書誌学分析による諸外国の研究動向との比較――
    杉村 佳寿, 村上 進亮
    2018 年 29 巻 p. 44-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/28
    ジャーナル フリー
    電子付録
    静脈物流は企業戦略にとっても社会システムにとっても重要な要素となる。本稿では日本および海外における静脈物流の先行研究をレビューし,日本の静脈物流研究が量的にも質的にも不足していることを検証した。その上で,日本において静脈物流が十分な研究対象とならなかった理由について,歴史的経緯による実務面のニーズの少なさ,廃棄物・リサイクル法体系に起因したシーズ的研究の難しさ等であるとの考察を行った。さらに,諸外国におけるReverse logistics (RL) に関する先行研究の分析を踏まえ,日本の静脈物流システム・研究への示唆として,輸送機能にとどまらず,マネジメント概念としての定義を浸透させその対象範囲を広げること,わが国の地理的特性を踏まえた国際静脈物流システムの設計等を提案し,今後の効率的な日本における静脈物流研究を進めるため前提とすべき重要な先行RL文献をネットワーク分析により抽出した。
  • 石村 雄一, 竹内 憲司
    2018 年 29 巻 p. 59-71
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本における民間の産業廃棄物最終処分場の立地に焦点をあて,その長期的な傾向を把握するための実態調査と,調査結果から構築した都道府県レベルのパネルデータに基づく計量経済分析をおこなった。実態調査の結果,1997年と1998年にかけておこなわれた廃棄物処理法の改正以降に,新規立地される最終処分場の数が大きく減少したことが明らかになった。また計量経済分析の結果から,産業廃棄物税を導入している自治体や,域外産業廃棄物の搬入規制を実施している自治体ほど,最終処分場の新規立地件数が少ないことが明らかになった。
  • 金子 栄廣, 伊藤 浩二郎
    2018 年 29 巻 p. 72-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー
    電子付録
    生物系廃棄物の多くは水分を多く含むが乾燥させれば燃料として利用できる程度の発熱量をもち,効率よく乾燥させれば燃料化できる可能性がある。一方,生物系廃棄物の資源化方法の一つとして好気微生物反応を利用したコンポスト化がある。この反応では反応熱による材料の昇温と好気条件を維持するために行われる通気によって乾燥が進む。これをうまく活用すれば効率よい乾燥を行えると考えられる。しかし,この反応はさまざまな環境・操作因子が関連する複雑な反応なため,最適な運転管理条件を見いだすのが容易ではない。実験だけでなくシミュレーションを活用できれば最適運転条件の検討に役立つ。本研究では,静置通気型反応器を用いた場合の生物系廃棄物乾燥のシミュレーションプログラムを作成した。また,乾燥実験結果を行い,実験結果とシミュレーション結果を比較してシミュレーションの妥当性について考察した。
  • 白石 裕司, 中田谷 直広, 棧敷 和弥, 古林 通孝, 中塚 記章, 林 潤, 赤松 史光
    2018 年 29 巻 p. 80-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    ジャーナル フリー
    ストーカ式ごみ焼却炉における火格子上でのごみの燃焼過程や運動を表現可能な数値解析モデルを構築し,小型ストーカ炉を用いた試験を基に開発したモデルの妥当性を検証した。ごみ層は分散相モデルを用いて,ごみ粒子の集合体として表現した。また,分離型詳細化学反応モデルを用いてNOX濃度の計算を行った。構築したモデルは,ごみ層の形状や炉内の温度分布,ガス流れを定性的に表現でき,炉出口のCO濃度やNOX濃度を実用的な範囲で表現できた。また,分離型詳細化学反応モデルでは,NH3からNOへ至るまでの窒素を含有する中間生成物と主要な酸化剤を加えた,少なくとも8化学種を汚染化学種として選択する必要があり,還元経路で主要となる5化学種を加えることで,さらに予測精度が向上することがわかった。構築した数値解析モデルはごみ層を含めた炉内の燃焼とNOXの生成・消費を把握するための有効なツールとなることが示された。
  • ――南海トラフ巨大地震を事例として――
    蔡 佩宜, 佐伯 孝, 大西 暁生, 田畑 智博
    2018 年 29 巻 p. 92-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,全国の一般廃棄物処理施設 (焼却施設,粗大ごみ処理施設) の稼働実態を考慮して,可燃性の災害廃棄物の処理余力を推計した。まず,地理情報システムを用いて,処理施設の立地場所をもとに,南海トラフ巨大地震により想定される地震,津波,液状化による各処理施設の被害評価を行い,災害による被害率を設定した。次に,全国の地方公共団体へのアンケート調査を行い,処理施設の稼働実態を踏まえた処理余力を試算した。結果として,全国の焼却施設の約8割が,20%以上の余力を有していることがわかった。これを踏まえて全国の焼却施設における災害廃棄物処理可能量を推計した結果,年間で約15,912千ton となった。続いて,南海トラフ巨大地震の発生を想定し,処理余力や処理施設の被災を考慮した上で可燃性の災害廃棄物の処理所要年数を推計した結果,全国の自治体が協力すれば約2.38年と試算された。
  • 小松 俊哉, 笹渕 晃洋, 姫野 修司
    2018 年 29 巻 p. 119-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー
    乳牛ふん尿とエネルギー作物残渣の混合嫌気性消化の適用可能性を検討するため,回分式実験と連続式消化実験を実施した。回分実験の結果,乳牛ふん尿,デントコーン,稲わらを混合して投入した系列は,投入VSあたりのメタンガス発生量が各々の個別の結果からの推定値よりも約 8 % 高く,エネルギー作物混合によるメタン発酵の効率化が認められた。
     次に,乳牛ふん尿単独系とデントコーン混合系,稲わら混合系 (VS 10%,VS 混合比 1:0.5) の連続式消化実験を実施した。消化日数30日 (単独系基準) の条件において全系列で良好な消化が行われ,単独系と比較してデントコーン系では61%,稲わら系では45%,メタン発生量が増加した。消化日数22.5日 (単独系基準) においても安定したメタン発酵が行われ,単独系よりも57~72% メタン発生量が増加し,乳牛ふん尿のメタン発酵の共基質としてエネルギー作物の有用性を明らかにした。
  • 宮脇 健太郎, 鈴木 泰博, 本山 光志
    2018 年 29 巻 p. 127-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル フリー
    電子付録
    発電所から発生する液体状の低レベル放射性廃棄物は,ドラム缶内でアスファルト等を用いて固化し,埋設処分施設に処分されている。この放射性廃棄物には,放射性核種以外に一般的な環境影響を与える物質であるほう素B等が含まれている。アスファルト固化体からの放射性核種の溶出特性については知見も多いが,ほう素についての検討事例はない。本報告では,アスファルト模擬固化体を用いて,1,000日間の浸漬試験 (IAEA試験法準拠) を行い,ほう素等の物質および放射性核種の溶出特性を確認した。また,固化体の表面および断面の経時的な観察 (SEM他) を行った。溶出特性と断面観察の結果から,固化体内部の物質の溶出は,浸漬水が固化体に拡散浸透する過程が律速となり,溶出は拡散モデルで評価できると推定された。その拡散係数は,浸漬水の種類,元素 (溶解度の低い物質は除く) によらず,1×10-15m2/s程度となった。
  • 山脇 敦, 土居 洋一, 川嵜 幹生, 大嶺 聖
    2018 年 29 巻 p. 139-151
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/23
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物安定型最終処分場等のプラスチック等が混入した廃棄物地盤は,土砂や焼却灰による地盤と比較して,地盤を構成する廃棄物のサイズが大きいことなどから,透水性は極めて高い。しかし,安定型最終処分場での試掘,採取試料による浸透経過確認実験や大型カラム実験の結果,水の一部は廃棄物層中のプラスチック等の凹部等に長時間貯留され,その水は極めてゆっくりと流下することが確認された。このような水の流出応答は,大型カラム実験と実現場を対象とした解析により,廃棄物層中の貯留現象を考慮した貯留関数で表すことができた。また,プラスチック等が混入した廃棄物地盤での沈下計測結果等から,雨水が沈下の一因となり,その要因として,プラスチック等の凹部に貯留する水が関係することが推察された。
  • ――先行研究のサーベイを通して――
    野々村 真希
    2018 年 29 巻 p. 152-163
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/21
    ジャーナル フリー
    家庭の食品ロスが大きな問題となっている。この家庭の食品ロスは消費者行動の変化により削減される可能性が大きい。では,家庭で消費者は食品に対してさまざまな行動をとる中で,ロス削減のためには特にどのような行動が変わる必要があるだろうか。この問いに答えるために,本稿は近年多数公表されている家庭の食品ロス研究の成果をその調査方法も考慮して体系的に整理し,どのような行動がロス発生に大きくかかわっているのかを検討した。その結果,消費者のさまざまな行動のうち,食材の下処理で可食部まで除去する,在庫を積極的に消費しようとしないなどの行動がロス発生に大きくかかわっていることが示されていることを確認した。表示期限で判断して食品を廃棄するケースが多いことも明らかにされていた。今後は,これらの行動はどうすれば変化するのかを探ることが必要である。
  • 篠 靖夫
    2018 年 29 巻 p. 164-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/04
    ジャーナル フリー
    可燃ごみの焼却処理において生成される燃焼ガスの量,組成,熱力学的物性等は,都市ごみ焼却処理施設の設計や維持管理水準の向上に向けたシステム解析に必須の情報である。しかし,対象ごみの不均一性やそれに起因する計測上の揺らぎのために,これらの代表値を精確に確定することは困難とされてきた。本研究は,2016年度の東京都区部清掃工場におけるごみ質と施設運転に関するデータを熱収支成績の観点から整合させることにより,単位燃焼ガス量,平均定圧比熱,燃焼ガスの比保有熱量,組成関数等を算出して,標準化した燃焼ガスモデルの基本量を確定した。その結果,現実の燃焼ガスについてより詳細な知見を得るとともに今後の解析モデル化のための枠組みを提供した。
  • 飯野 翔太, 高橋 克行, 庄司 貴, 鹿島 勇治, 小山 陽介, 山本 貴士, 大迫 政浩
    2018 年 29 巻 p. 175-183
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー
    排ガス中の放射性セシウム濃度の測定は,環境省が定めた公定法で実施されている。公定法の放射性セシウム分析はろ紙とインピンジャ内の捕集液に対して行うが,排ガス中の放射性セシウムがろ紙により十分に捕集されるとの知見は得られているものの,微小粒子に対するろ紙の捕集性能については詳細なデータ提供がなされていない。そこで本研究では,実際の焼却炉排ガスにおいて粒子個数濃度の観点から公定法の評価を行った。その結果,バグフィルタ入口の微小粒子 (粒径0.3μm未満の粒子) の個数濃度は106個cm−3Nに対して,インピンジャ出口では102個cm−3Nであり,公定法において微小粒子は 99.99 % 程度捕集できることを明らかにした。さらにインピンジャ出口で検出された粒子を捕集して放射性セシウムの分析をしたところ,検出下限値未満であり,公定法は排ガス中の放射性セシウムの試料採取方法として適切であることが検証された。
  • 土手 裕, 関戸 知雄
    2018 年 29 巻 p. 184-190
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/16
    ジャーナル フリー
    豚ふん堆肥炭化物を用いてNH4-Nを除去した養豚廃水1次処理水の生物処理に対する炭化物の阻害を明らかにするために,炭化物によるNH4-N除去実験および回分式生物処理実験を行った。NH4-N除去実験において,炭化物添加率が増加するとNH4-N除去率およびC/N比が増加し,添加率 20 % で除去率 40 %,C/N比1.5が得られた。C/N比の増加は,NH4-Nの除去に加えて炭化物からのTOC溶出の影響を受けた。回分式生物処理実験において,TOC除去に対しては炭化物添加による阻害がみられなかった。しかし,硝化に対して弱い阻害が炭化物添加率 15 %以上でみられた。その原因として廃水中のClが考えられた。また,硝酸や亜硝酸の蓄積はみられず,脱窒は十分生じていた。
  • 山口 直久, 河井 紘輔, 大迫 政浩, 松藤 敏彦
    2018 年 29 巻 p. 191-205
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/16
    ジャーナル フリー
    焼却残渣の溶融メタル中に,銅・鉛等のベースメタル以外に,金・銀等の貴金属類が含まれている。このことを利用し,焼却残渣を集約して溶融処理を行い,非鉄製錬施設において山元還元する技術がある。本研究は,この集約型還元溶融に注目し,従来のセメント原料代替やエージングによる路盤材利用と資源性,LCCO2 を比較した。
     まず既存文献および実稼働施設のプロセスデータをもとに,マテリアルフロー解析を行った。次に回収金属が天然金属鉱石をどれだけ代替するか (資源代替性) を,焼却残渣埋立処分をベースシナリオとして評価を行った。その結果,集約型還元溶融における焼却残渣 1 ton は,銅・鉛・亜鉛精鉱を数 kg~十数 kg 程度,金・銀鉱石を 1 ton 程度それぞれ代替すると推計された。一方,LCCO2 算定では温室効果ガス (GHG) 排出量が増加するものの,将来的な電力構成の変更,立地場所の最適化により,埋立処分よりも削減される可能性があることが示された。
  • ――主に力学的安定性の観点から――
    宮原 哲也, 八村 智明, 大野 博之, 小坂 英輝, 大久保 拓郎, 山内 一志, 山中 稔
    2018 年 29 巻 p. 206-218
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/24
    ジャーナル フリー
    既設の一般廃棄物最終処分場において,不適正な状況を改善するための適正化事業が行われた。この最終処分場は,旧崩壊地形の中に設置されたものであり,最終処分場周辺の地すべりや埋立地内の廃棄物層の力学的安定性が問題の一つとなった。この最終処分場において,こうした力学的安定性の観点からの調査として,地下水調査,地盤変位調査,物理探査等を実施した。
     その結果,廃棄物層の推定には地質工学的手法 (資料調査,地形調査,地質調査,総合評価) が重要であることが示された。さらに,周辺の旧崩壊地形は,現状安定であっても古い廃棄物を除去した場合不安定化すること,廃棄物層には応急対策実施後も高い含水状態の部分があり,大規模地震等が生じたとき不安定化する可能性があることなどが明らかとなった。恒久対策としては,押え盛土的役割をもっている古い廃棄物を残し,廃棄物層内の保有水等の除去を行うことが有効であることの結論を得た。
  • 小林 信介, 早津 祥秀, 加藤 勇治, 板谷 義紀
    2018 年 29 巻 p. 219-226
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/24
    ジャーナル フリー
    セラミックフィルターを用いた旋回式クロスフローによる実切削排液の油水分離を行った。フィルターには,旋回ロッドを挿入した目開き 1.2 および 2.5 μm の中空セラミックフィルターを用いた。実験では,水,鉱物油,界面活性剤および切削微粒子等が混合している実切削排液からの水の分離を試み,エマルジョン循環流量やフィルター目開き等の分離条件や切削排液の種類が分離速度や分離率に与える影響について評価を行った。その結果,旋回式クロスフローにより切削排液からの水の分離が可能であり,分離条件やエマルジョン種にかかわらず,分離された水中の油分割合は 1 %以下であった。また,処理時間に対する分離率は処理時間にかかわらず高い値で一定値を維持可能であった。ろ液の FT-IR 分析よりエマルジョン中の鉱物油は,ほぼ完全に除去可能であることも明らかとなった。その一方で,脂肪酸等の水溶性物質のフィルターによる分離は困難であった。
  • 姫野 修司, 小松 俊哉, 笹渕 晃洋, 伊藤 圭汰, 北田 誠, 高橋 倫広
    2018 年 29 巻 p. 227-239
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー
    日本では一般可燃ごみの多くは焼却処理されているが,焼却処理に伴う化石燃料の消費量削減やちゅう芥類のバイオマスとしての利活用の必要性から,一般可燃ごみ中のちゅう芥類のエネルギー利用技術が求められている。本研究では,廃棄物の機械的・生物的処理 (Mechanical-Biological Treatment: MBT) として機械選別とメタン発酵システムの技術開発を行い,実ごみによる機械選別試験とメタン発酵試験を実施した。
     その結果,粒度選別,破砕選別を行うことで,一般可燃ごみから高精度にちゅう芥類を発酵適物として回収可能であることを確認し,回収した発酵適物は中温メタン発酵処理を行うことで発酵適物 1 tonあたり150 Nm3 程度のバイオガスが安定的に回収可能であることを明らかにした。また,ちゅう芥類回収後の燃焼適物の低位発熱量は回収前と比較して 1.7 倍向上することを示した。
  • 和田 丈晴, 栗原 勇, 瀨戸 遼也, 片桐 律子, 今井 茂夫, 和田 充弘, 石井 聡子
    2018 年 29 巻 p. 240-249
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/30
    ジャーナル フリー
    廃棄物削減と資源の有効活用の観点から,使用済み紙おむつに含まれるパルプのリサイクルが一部検討されているが,紙おむつに再利用するためには,まだ多くの技術的課題が残されている。著者らは,大人用の使用済みの紙おむつからパルプ繊維を回収し,オゾン処理工程で殺菌および消毒を同時に行うことにより,使用済み紙おむつから衛生的で安全な上質パルプをリサイクルする技術の開発に取り組んでいる。本研究では使用済み紙おむつのリサイクルによって得られたパルプの安全性を評価するため,化学的リスクに着目し,残留タンパク分析,元素分析,残留有機化学物質の分析および塩素化合物の分析からなるフロースキームを構築し,実際にオゾン処理によって得られたリサイクルパルプに適用した。また,リサイクルパルプが衛生材料の公的な規格に適合することを確認した。
  • 土手 裕, 関戸 知雄
    2018 年 29 巻 p. 250-256
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    養豚廃水1次処理水中に高濃度で含まれる窒素(N),リン(P),カリウム(K) をMAP(MgNH4PO4) およびMPP(MgKPO4) として同時回収する場合の 1 次処理水水質の回収後の残存濃度予測への影響と回収物組成を明らかにすることを目的として,6 種類の 1 次処理水を用いて回収実験を行った。その結果,回収後の残存濃度を既報で用いた方法で予測でき,予測精度は実測濃度に対して 1/2 ~ 2 倍の範囲であった。残存 P 濃度の実測値が排水基準 (16 mg/L 以下) を満足した条件での N の回収率は 96 % 以上であったが,K の回収率は最大で 67 % であった。P,K,N,Mgの全含有量の平均はそれぞれ,19, 19, 3.4, 1.4 % であった。また,これら肥効成分の 80 % 以上がク溶性であった。回収物中の P のうち 39 % が MAP,6 % が MPP,約 55 % がその他の化合物として含まれていた。
  • 内田 美穂
    2018 年 29 巻 p. 257-265
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
    電子付録
    廃棄物埋立処分場において嫌気性条件下で硫酸塩還元菌 (SRB) の活動により硫化水素 (H2S) の発生が報告されている。H2S の硫黄源となっている硫酸イオン (SO42-) を除去するために,陰イオン交換機能をもつ層状複水酸化物ハイドロタルサイトの層間に,あらかじめ塩化物イオン (Cl-) をインターカレートしたハイドロタルサイト (HT-Cl) を SRB 生育条件下で添加し H2S の発生抑制効果を検討した。SRB 培養液中に含まれる SO42- 全量を交換するために必要な理論イオン交換容量の HT-Cl を添加した場合, H2S の発生が顕著になるまでの誘導時間は,HT-Cl を添加しない場合と比較して長くなったが,総 H2S 発生量に変化はなかった。培養液中に含まれる SO42- 量に対して理論イオン交換容量の 3 倍量の HT-Cl を添加した場合,単位時間あたりの最大 H2S 発生量が減少し,高濃度の H2S 発生を抑制する効果がみられた。
  • ――フィリピン共和国イロイロ市カラフナン最終処分施設を事例として――
    田村 響, 堀田 昌英, 横尾 英史
    2018 年 29 巻 p. 266-278
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本研究は,社会的ネットワークがウェイスト・ピッカーの 「有価物収集活動の成果を表す指標 (日収・収集量・収集物単価)」 に与える影響を明らかにする。ウェイスト・ピッカー 279 人から収集したデータを統計学的に分析した結果,他者との繋がりの程度が強い人ほど,単価が低い収集物を収集する傾向にあること,また結びつきの強い集合群間の一部で 「有価物収集活動の成果を表す指標」 に差異が生じていることが明らかとなった。前者の結果は,他者との繋がりの程度の強い人が協調を重んじ,高単価な有価物の収集に積極的に関与していないためと推察される。また,後者の結果は,類似した属性的特徴をもつ人が密な関係を結び,その類似した属性的特徴をもつ人の 「有価物収集活動の成果を表す指標」 が類似していることによると解釈できる。さらに, 「密な関係を結んだことにより有価物収集活動の成果を表す指標が向上した」 という創発特性の可能性も示唆された。
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